Cheryl Lynn - Cheryl Lynn (1978)
Cheryl Lynn / Cheryl Lynn(1978, Columbia JC 35486)
シェリル・リンのデビュー・アルバム『Cheryl Lynn』は、1978年にColumbiaから登場した作品で、彼女の名を一気に広めた一枚だ。のちに「Got to Be Real」が代表曲として定着するが、そのヒットだけで片づけるには収録内容がかなり充実している。ソウルとディスコを軸にしながら、R&Bの歌唱力を前面に出した作りで、70年代後半のアメリカン・ブラック・ミュージックの空気をそのまま閉じ込めたようなアルバムになっている。
デビュー作としての位置づけ
シェリル・リンは1957年ロサンゼルス生まれ。テレビ番組「The Gong Show」への出演で注目を集め、Columbiaと契約した経緯が知られている。このデビュー作は、そのキャリアの出発点として重要な意味を持つ。後年はJimmy Jam & Terry Lewis、Luther Vandross、Teddy Rileyらと仕事を重ねていくが、最初期の時点で既に歌の芯が強く、声の押し出しがはっきりしている。
制作面ではDavid PaichとMarty Paichがプロデュースを担当し、Toto周辺のミュージシャンとのつながりも濃い。Ray Parker Jr.、James Gadson、Bernard Purdie、Chuck Rainey、Richard Teeといった面々が参加しており、演奏の重心がしっかりしている。ファンク寄りのリズム、ディスコの推進力、ソウルの歌心が、過不足なく整理された印象だ。
「Got to Be Real」の存在
このアルバムを語るうえで外せないのが「Got to Be Real」。1978年8月にシングルとして出たこの曲は、Billboard Hot 100で12位、R&Bチャートで1位を記録した。Cheryl Lynn、David Paich、David Fosterの共作で、アルバムの中でも最も認知度が高い。冒頭のベースラインからして足取りが速く、コーラスの掛け合いも強い。シェリル・リンの声は、力任せではなく、リズムの上にきれいに乗るタイプで、この曲ではその持ち味がはっきり出ている。
この曲のヒットにより、アルバム全体も広く聴かれることになった。続くシングル「Star Love」「You Saved My Day」も含めて、収録曲の並びはシングル中心の構成に寄りすぎず、アルバムとしてのまとまりがある。1曲目だけが突出しているわけではなく、通して聴くと70年代末のディスコ/ソウル作品らしい均質さがある。
収録曲と音の印象
全9曲の中には「All My Lovin'」「Come In From the Rain」「Daybreak (Storybook Children)」などが入っている。カバー曲とオリジナル曲が混ざる構成で、選曲のバランスもよい。派手なディスコ・チューンだけで押し切るのではなく、歌を聴かせる場面をきちんと置いている点が、このアルバムの骨格になっている。
実際に聴くと、音像はかなりタイトだ。リズム隊が前に出て、ベースとドラムが曲の推進力を作り、その上にホーンやコーラス、鍵盤が重なる。ミックスはSunset Soundで行われており、華やかさの中にも輪郭のある鳴り方をしている。ダンスフロア向けの勢いを持ちながら、歌が埋もれない作り。ここは当時のディスコ作品の中でも印象が残る部分だ。
70年代末の文脈の中で
1978年は、ディスコが大きく広がった時期でもある。シェリル・リンのデビュー作は、その中で単なる流行追随ではなく、R&Bシンガーとしての基礎体力を示した作品として残っている。Toto周辺のプレイヤーが関わったこともあり、バンド感のある演奏が前面に出ていて、同時代の華やかなディスコ作品の中でも、演奏の締まりが印象に残る。
アルバムはBillboard 200で最高23位、R&Bアルバム・チャートで5位を記録し、1979年2月にはRIAAからゴールド認定を受けた。デビュー作としては十分に大きな成果で、シェリル・リンが以後のR&B/ソウル・シーンで長く名前を保つ土台になった。
1978年盤としての魅力
このUSオリジナル盤はColumbia JC 35486。JCの品番は、1970年代後半のColumbiaにおける価格コードを示すもので、当時の発売形態をそのまま感じられる。付属のプリント・インナー・スリーヴも含め、1978年のLPとしてのまとまりがある。のちの再発盤と比べると、オリジナル盤は当時の制作環境とパッケージの空気をそのまま持っている点が大きい。
『Cheryl Lynn』は、ヒット曲の力と、歌手としての基礎を同時に示したデビュー作だ。70年代末のソウル/ディスコの接点に置くと、その輪郭が見えやすい。シェリル・リンの後のキャリアを知っていると、ここで既に声の強さとリズム感がかなり完成していることがわかる。
トラックリスト
- A1 Got To Be Real 5:10
- A2 All My Lovin' 4:50
- A3 Star Love 7:23
- A4 Come In From The Rain 3:32
- B1 You Saved My Day 4:25
- B2 Give My Love To You 3:34
- B3 Nothing You Say 3:58
- B4 You're The One 4:09
- B5 Daybreak (Storybook Children) 3:43