Cymande - Second Time Round (1973)
Cymande『Second Time Round』
1973年にUSのJanus RecordsからリリースされたCymandeのセカンド・アルバム。ロンドンで結成されたこのバンドは、ガイアナ、ジャマイカ、セントビンセント出身のメンバーを中心にした多国籍グループで、ファンク、ソウル、レゲエ、アフリカ系リズムを混ぜた独自のスタイルを「Nyah-Rock」と呼んだ。『Second Time Round』は、その持ち味が前作以上にまとまった形で出ている作品で、アメリカのブラック・ミュージック・シーンで高く受け止められた一枚である。
バンドの輪郭と、この作品の位置づけ
Cymandeは1971年にロンドンで結成され、活動初期から本国イギリス以上にアメリカでの評価が目立ったグループだ。『Second Time Round』は、その流れの中で出た2作目にあたり、バンドの個性がかなりはっきり見えるアルバムになっている。プロデュースはJohn Schroeder、録音はロンドンのDe Lane Lea Studios。演奏の芯は、Steve Scipioのベースを中心にした重いグルーヴと、パーカッション、ホーンの組み立てにある。
この時期のイギリスのファンク/ソウル勢と並べると、Cymandeは単純な米国型ファンクの模倣に寄らず、カリブ海のリズム感やアフロ系の反復を前面に出している点がはっきりしている。WarやThe Metersのような泥臭いファンクと比べても、もう少し旋律と空気の流れが独特で、同時代のレア・グルーヴの中でも区別しやすい存在感がある。
収録曲の手触り
収録曲の中では「Fug」「Anthracite」のようなインストゥルメンタルがまず印象に残る。ベースが前に出て、ドラムとパーカッションが細かく噛み合い、ホーンが短いフレーズで輪郭を作る構成。派手に展開するというより、同じリフを保ちながら少しずつ熱を上げていく作りで、演奏の粘りがそのまま曲の力になっている。
一方で「Genevieve」「Crawshay」「For Baby Ooh」などでは、メロウな歌とホーンの絡みが前に出る。ここではファンクの硬さだけでなく、ソウル寄りの柔らかさも感じられる。曲ごとの温度差はあるが、アルバム全体としては一本の流れが切れにくく、打楽器の細かな動きが全編をつないでいる。
ヒップホップ以降の受け継がれ方
Cymandeの名前が後年まで残った大きな理由のひとつが、ヒップホップ世代による再発見である。Kool Herc、DJ Jazzy Jay、Grandmaster Flashら初期ヒップホップの重要人物が彼らの音を支持し、80年代以降はサンプリングやループの素材としても扱われた。ブレイクの切り出しやすさだけでなく、曲全体に漂う反復の強さが、後のプロデューサーに使いやすかったのだろう。
この文脈では、『Second Time Round』もレア・グルーヴ盤として語られることが多い。De La Soul、Wu-Tang Clan、Fugeesといったアーティスト群にまで影響が及んでいる点を見ると、単なる70年代ファンクの一枚ではなく、ヒップホップの素材庫としても重要な位置を持つ作品として扱われてきたことがわかる。
US盤としての特徴
今回のUS盤はJanus RecordsのJLS 3054。1973年のオリジナル盤で、ラベルには「SIDE」や「STEREO」の表記がない仕様になっている。盤面の細部としては「-B-25」の25の数字がかなり薄いというメモもある。こうしたUSオリジナルは、後年の再発盤とは細かな表記やマスターの扱いが異なることがあるが、この盤は1973年当時の初出としての位置づけがはっきりしている。
まとめ
『Second Time Round』は、Cymandeの多国籍な背景と、ファンク/ソウル/カリブ系リズムの混交がよく見えるアルバム。演奏の芯は太く、歌ものとインストの切り替えも自然で、アルバム全体の流れに無理がない。1970年代前半のブラック・ミュージックの広がりを、ロンドン発のバンドが別の角度から押し出した作品として見ると、位置づけがつかみやすい一枚である。
トラックリスト
- A1 Anthracite 5:32
- A2 Willies' Headache 4:50
- A3 Genevieve 4:00
- A4 Trevorgus 3:25
- A5 To You 3:31
- B1 For Baby Ooh 2:17
- B2 Fug 4:25
- B3 Crawshay 4:21
- B4 Bird 4:25
- B5 Them And Us 5:25