Diana Ross - Diana Ross (1976)
Diana Ross 1976

Diana Ross - Diana Ross (1976)

Funk / Soul Soul

Diana Ross / Diana Ross(1976年作品、1987年US盤)

ダイアナ・ロスが1976年にモータウンから発表したセルフタイトル作。ソロとしての6作目にあたり、70年代中盤のロスの立ち位置をはっきり示す一枚だ。シュープリームス時代の大スターという顔に加えて、ソロでは映画音楽、バラード、ディスコ、ソウルを横断する表現者としての存在感を強めていくが、このアルバムはその流れをそのまま封じ込めた内容になっている。1987年のUS盤はオリジナルから10年以上後の再発で、作品そのものは1976年の空気を色濃く残している。

70年代中盤のダイアナ・ロスを象徴する内容

このアルバムの核は、全米1位ヒットを2曲も抱えている点にある。ひとつは映画『Mahogany』の主題歌として知られる「Theme from Mahogany (Do You Know Where You’re Going To)」。もうひとつは、ディスコ路線を決定づけた「Love Hangover」だ。前者は抑えた歌い口で感情をじわじわ積み上げるバラード、後者は長い導入からビートが立ち上がる展開が印象的で、同じアルバムに並んでいること自体が面白い。

聴き進めると、ロスの声が曲ごとにかなり違う役割を担っているのがわかる。やわらかく包むような歌い方もあれば、リズムを押し出すような歌い方もある。1枚の中で方向性が揃いきっているわけではないが、そのぶんスター歌手のアルバムとしての振れ幅が出ている。バラード中心の面と、ダンス寄りの面が同居する構成で、70年代中盤のモータウンが求めていたポップ性もはっきり見える。

制作面の中心にあるマイケル・マッサー

制作ではマイケル・マッサーの存在が大きい。彼はこの時期のロスのサウンドを形づくった重要人物で、洗練されたコード感と、歌を前に出すアレンジが印象に残る。とくに「Theme from Mahogany (Do You Know Where You’re Going To)」は、映画音楽らしい広がりを持ちながら、ロスの声を軸にした設計になっている。「Love Hangover」は深夜のセッションで録られたという逸話でも知られ、曲が持つ緩急のある展開に、その場の空気が反映されている。

この時代のモータウンは、60年代のソウル・レーベルという顔だけでなく、ディスコ以後のポップ市場に強く結びついた存在でもあった。本作はその流れの中で、ロスという看板を使ってソウル、ポップ、ダンス音楽を接続した作品として置ける。シュープリームスの延長線というより、70年代のソロ・アイコンとしてのダイアナ・ロスを前面に出したアルバムだ。

再発盤としてのUS盤1987年プレス

この1987年US盤は、1976年オリジナルの再登場にあたる。レーベルはMotown、カタログは2833ML。1980年代後半のモータウン再発盤らしく、オリジナル発売時の時代感そのものを持ちつつ、当時の市場で改めて流通した一枚だ。音楽内容は1976年の作品そのものなので、聴こえてくるのはあくまで70年代モータウンの質感になる。

オリジナル盤と比べた細かな違いは、ここでは盤の仕様に関わる部分が中心で、作品の骨格は変わらない。だからこそ、再発盤でもアルバムの役割は明快だ。ダイアナ・ロスが映画主題歌の成功とディスコへの接近を同時に進めていた時期の記録として、そのまま受け取れる。

同時代の文脈で見ると

1976年は、ソウルやR&Bの歌手たちがディスコへ本格的に歩み寄っていく時期でもある。ロスの場合は、単に流行に乗ったというより、もともとのポップ感覚と強い歌手性を使って新しいダンス・サウンドに適応していった印象が強い。後のディスコ期の女性シンガーたち、たとえばシェールやドナ・サマーのような存在と並べて語られることもあるが、ロスは映画主題歌の成功と結びついた点で少し違う位置にいる。

「Theme from Mahogany (Do You Know Where You’re Going To)」の大ヒットは、ロスがスクリーンと音楽の両方で存在感を持つ人物だったことを改めて示したし、「Love Hangover」はその後のディスコ時代に向けた足場になった。バラードとダンス・ナンバーの両輪で売れたことが、このアルバムの強さを支えている。

まとめ

『Diana Ross』は、70年代中盤のダイアナ・ロスを一枚で捉えやすいアルバムだ。映画音楽的なバラードと、フロアを意識したディスコ・チューンが同居し、ソロ歌手としての幅をそのまま見せている。ヒット曲の存在が目立つ作品ではあるが、アルバム全体としてもモータウンの70年代らしい洗練がきちんと通っている。1987年US盤は、その1976年の記録をあらためて手元に置くための再発盤として位置づけられる。

トラックリスト

  1. A1 Theme From Mahogany (Do You Know Where You're Going To) 3:23
  2. A2 I Thought It Took A Little Time 3:33
  3. A3 Love Hangover 7:48
  4. A4 Kiss Me Now 2:42
  5. B1 You're Good My Child 3:35
  6. B2 One Love In My Lifetime 3:40
  7. B3 Ain't Nothin' But A Maybe 3:27
  8. B4 After You 4:13
  9. B5 Smile 2:55

動画プレイリスト

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