Dr. John, The Night Tripper - The Sun, Moon & Herbs (1971)
Dr. John, The Night Tripper『The Sun, Moon & Herbs』
1971年8月31日、ATCO Recordsから出たDr. John(ドクター・ジョン)ことマック・レベナックの通算4作目のスタジオ・アルバム。ニューオーリンズ出身の彼が「ザ・ナイト・トリッパー」名義で推し進めてきたヴードゥー/スワンプ・サイケデリック路線の最終章・集大成に位置づけられる作品だ。USオリジナル盤(SD 33-362)は、黄色のレーベルにカラーホイールが入った仕様で、歌詞とアートワークが印刷された専用インナースリーブが付属している。
制作背景・エピソード
本作はもともと、3枚組の長大なコンセプト・アルバムとして構想されていた。録音は主にロンドンの名門Trident Studiosで行われ(「Familiar Reality - Opening」のみハリウッドのDimension Recordersで先行録音)、マイアミのCriteria Studiosにて名匠トム・ダウドらの手によって編集とリミックスが施され、濃密な1枚のLPへと凝縮された。
ロンドン滞在中には現地のトップ・ミュージシャンたちが大挙してセッションに参加した。エリック・クラプトン、ミック・ジャガーをはじめ、デレク・アンド・ザ・ドミノスのリズム隊であるカール・レイドルやジム・ゴードン、ピーター・グリーン、クラウス・フォアマン、ドリス・トロイ、P.P.アーノルドらが集結し、混沌とした長尺ジャムを繰り広げた。
収録曲には「Black John The Conqueror」「Craney Crow」「Zu Zu Mamou」など、ニューオーリンズのブードゥー伝承や民間信仰、バイユーの神秘主義に根ざしたダークで呪術的なナンバーが並ぶ。
時代の文脈
1968年の衝撃的デビュー作『Gris-Gris』から続く路線の総決算にあたる。1970年代初頭の英米ロック/ブルース界では、ニューオーリンズのセカンドライン・ビートやケイジャン/バイユー文化、R&Bへの憧憬が最高潮に達しており、クラプトンやジャガーら英国ロックの頂点に立つスターたちがドクター・ジョンの元に集ったことは、その熱気を象徴していた。
本作のディープで不気味なスワンプ・ゴシック的世界を経て、ドクター・ジョンは次作『Gumbo』(1972年)や名盤『In the Right Place』(1973年)で、アラン・トゥーサンやミーターズと合流し、よりストレートで明快なニューオーリンズR&B/ファンク路線へと移行していく。
チャート面では、ビルボードの総合アルバムチャート(Billboard 200)で最高184位を記録し、ドクター・ジョンにとってキャリア初のビルボード・チャートイン作品となった。
後世への影響とサウンドの魅力
「バイユー・ファンク」「スワンプ・ロック」「ヴードゥー・サイケデリア」の極北を示す作品として、ロック、ブルース、ファンクを横断するカルト的クラシックとして語り継がれている。ドクター・ジョンのしゃがれたダミ声ボーカルと、重厚にうねるパーカッション、妖艶な女性コーラス、そしてクラプトンらのブルージーなギターが絡み合うトランス感は唯一無二だ。
夜の湿地帯の霧深さを思わせる湿り気を帯びたグルーヴと不穏な音響空間は、後のストーナー・ロック、オルタナティブ・ロック、さらにはトリップホップのプロデューサーたちにも多大なインスピレーションを与えた。豪華な参加者を揃えながらポップさに一切阿らず、極限の泥臭いスワンプ・ジャムへと昇華させた特異なセッション作として、70年代ロック史において今も異彩を放っている。
トラックリスト
- A1 Black John The Conqueror 6:20
- A2 Where Ya At Mule 4:55
- A3 Craney Crow 6:40
- B1 Familiar Reality-Opening 5:25
- B2 Pots On Fiyo (Filé Gumbo) / Who I Got To Fall On (If The Pot Get Heavy) 5:48
- B3 Zu Zu Mamou 7:57
- B4 Familiar Reality-Reprise 1:53
動画プレイリスト
このアーティストについて
Dr. Johnは、ニューオーリンズ出身のシンガー、ピアニスト、ソングライターだ。本名はMalcolm John Rebennackで、1941年11月20日にルイジアナ州ニュー...
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