Experience Unlimited - Free Yourself (1977)
E.U. 1977

Experience Unlimited - Free Yourself (1977)

Jazz Funk / Soul Funk Jazz-Rock Soul Jazz-Funk

Experience Unlimited『Free Yourself』

ワシントンD.C.のファンク/ゴーゴー・バンド、Experience Unlimited(E.U.)が1977年にBlack Fireから発表したデビュー・アルバムが『Free Yourself』である。E.U.はもともとThe Rebels、The Young Hustlersと名乗って活動を始めたグループで、のちにD.C.シーンを代表する存在へと育っていく。その出発点にあたる本作は、まだゴーゴーの代名詞として知られる前の時期を記録した一枚で、ジャズ・ファンク、ソウル、メッセージ性の強い楽曲が中心になっている。

制作背景と録音の実像

録音は1976年7月29日、ヴァージニア州フォールズ・チャーチのBias Recording Studiosで行われた。エンジニアはRobert Dawson、編曲はバンド自身、ヴォーカル・アレンジはWayne Davisが担当している。プロデュースはJames “Jimmy” GrayとCharles C. Stephensonで、Black Fire Productionsの制作作品として仕上げられた。Black Fireは、D.C.のジャズDJであり音楽誌の発行人でもあったJimmy Grayが1975年に立ち上げたレーベルで、アーティストに創作の自由を与える方針を掲げ、純利益をアーティストとレーベルで折半する仕組みも打ち出していた。

楽曲面では、「Peace Gone Away」がギタリストDonald Fieldsの作曲で、Melva “Lady” AdamsとBobby Owensが歌っている。後年の再発ではオリジナルのアナログ・マスターテープからBernie Grundmanがカッティングを担当している。

当時のD.C.シーンの中で

1970年代のワシントンD.C.では、Chuck Brown率いるThe Soul Searchersが、曲を切らさずにグルーヴを保つファンクのスタイル、ゴーゴーを育てていた。Chuck Brownの「Bustin’ Loose」がヒットするのは1978年末で、Rare Essenceも1976年に登場している。そうした流れの中で見ると、『Free Yourself』は、E.U.がまだ本格的にゴーゴーへ寄っていく前の段階を映した作品になる。ゴーゴー史をまとめた資料では、E.U.はもともとロック色の強いバンドで、1970年代後半にRare Essenceのライヴを見てゴーゴーのビートを取り入れるようになったとされる。

Black Fireの歴史を紹介するブログでは、表題曲「Free Yourself」を「のちのプロト・ゴーゴーの古典」と呼び、社会意識に満ちたバラード「People」にこのバンドの別の顔が出ていると評している。

聴きどころとして語られてきた点

本作のサウンドについては、楽曲紹介のブログで「Peace Gone Away」が力強いメッセージ・ソングとされ、「70年代の失われたファンクの名盤の一つ」と位置づけられている。そこでは、タイトなファンク演奏、ギターとサックスのソロの見事さも挙げられていた。

また、タイトルの「Free Yourself」はスリーブの背表紙にのみ記されているという仕様も、この盤のオリジナルらしさを示す要素になっている。白ラベルに黒印字、ペーストオンの裏ジャケットという作りも含め、1970年代のローカル・プレス盤らしい佇まいがある。

その後の評価と影響

E.U.はのちにゴーゴーの代表的バンドの一つになり、1988年にはスパイク・リー監督の映画『School Daze』のサウンドトラック収録曲「Da Butt」が大きな話題になった。Billboardのブラック・シングル・チャートで1位、Hot 100で35位を記録し、ミュージック・ビデオもスパイク・リーが監督している。その後はVirgin Recordsと契約し、E.U.の音源はBeck、N.W.A、Public Enemyなど、ジャンルを越えたアーティストにサンプリングされていった。

『Free Yourself』自体も、オリジナル盤はBlack Fireの中でも入手困難で人気の高い一枚とされ、数百ドルで取引されていたという。2019年にはNow-Again Recordsから再発され、Vinyl Me, Pleaseの同年5月の“Essentials”にも選出された。Black Fireのジャケット・アートを紹介する展示がブルックリンで開かれるなど、レーベル全体の再評価も進んでいる。2022年には、Black Fireが1970年代D.C.文化に与えた影響を扱うドキュメンタリーも制作された。

『Free Yourself』は、E.U.が後に到達するゴーゴーの前夜に置かれた作品であり、同時にBlack Fireというレーベルの理念を具体化した記録でもある。D.C.ローカルのファンク、ジャズ、ソウルが交差する地点にあり、のちの代表曲「Da Butt」へ続くバンドの履歴をたどるうえで、重要な起点になっている。

トラックリスト

  1. A1 It's All Imagination 3:23
  2. A2 Functus 4:50
  3. A3 Peace Gone Away 4:45
  4. A4 Free Yourself 7:57
  5. B1 Hey You 3:38
  6. B2 People 6:09
  7. B3 Funky Consciousness 9:08

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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