First Choice - Armed And Extremely Dangerous (1973)
First Choice『Armed And Extremely Dangerous』(1973)
First Choiceの『Armed And Extremely Dangerous』は、フィラデルフィア出身の女性ヴォーカル・トリオが1973年に放った初期代表作である。グループ名が広く知られるきっかけになった作品であり、同時にフィリー・ソウルの流れを語るうえでも外せない一枚だ。タイトル曲のヒットによって、First Choiceはローカルな存在から、R&Bチャートや英国市場でも存在感を示すグループへと押し上げられた。
フィリー・ソウルの現場から生まれたアルバム
制作の背景には、1970年代前半のフィラデルフィア・ソウルを支えた制作陣の動きがある。First Choiceは、Norman HarrisやAllan Felderらと結びつき、Philly Groove Recordsから本作を発表した。レーベル自体も、The DelfonicsやFirst Choiceのようなアーティストを通じてフィリー・ソウルの輪郭をはっきりさせた存在で、当時のシーンの中心にあった。アルバムの音作りにはTom Moultonが関わっており、全編をミックスしたとされる。クレジットの扱いには事情があったようだが、結果として本作の流れるような構成感や、曲ごとのつながりのよさにその仕事ぶりが表れている。
代表曲「Armed and Extremely Dangerous」
やはり中心はタイトル曲である。勢いのある入り方、はっきりしたリズム、押しの強いフックが早い段階で印象に残る。BillboardではHot 100で28位、R&Bで11位を記録し、英国でもチャート入りした。First Choiceにとっての最初の大きな突破口であり、この曲でグループの名前が定着したと言ってよさそうだ。聴感上も、歌の推進力とバックの演奏がきれいに噛み合っていて、のちのディスコへつながる流れを先取りしているように聞こえる。
アルバム全体の手触り
本作はシングルの成功が強く印象に残る作品だが、アルバムとしても当時の女性グループらしい明快さがある。「Smarty Pants」はチャートでも反応があり、続く「Newsy Neighbors」もR&Bチャートに入った。収録曲にはAl Greenの「Love and Happiness」も含まれており、ソウルの定番曲をフィリー流の整ったアレンジで聴かせる構成になっている。ストリングスやブラスを交えた設計は、同時代のMFSB周辺の音とも通じる部分がある。The Three DegreesやThe O’Jaysのようなフィラデルフィア勢と並べて聴くと、当時の録音現場の共通性が見えやすい。
一方で、First Choiceならではなのは、若い女性トリオらしい声のまとまりと、リードの切れ味だろう。Rochelle Flemingの歌は後年にかけてダンス・ミュージック方面でも多く参照されるが、この時点ですでに芯の強さがある。全体を通して、歌が前に出ていながら、演奏の細かな動きもちゃんと耳に入る作りで、ソウル作品としての密度が高い。
メンバーの変化と作品の位置づけ
この時期のFirst Choiceは、まだメンバー編成が固まりきる前の段階でもある。もともとはPhiladelphia周辺で活動していたヴォーカル・グループで、学生時代からのつながりを土台にしていた。『Armed And Extremely Dangerous』の時点でグループの輪郭がはっきりし、以後の活動につながっていく。のちにはディスコ期に「Let No Man Put Asunder」などがクラブ・クラシックとして再評価されるが、その出発点として本作を位置づける見方は自然だろう。
また、Wardell Piperがこの成功のあとにグループを離れたことも知られている。つまり本作は、First Choiceの初期編成の記録でもあり、グループの次の段階へ移る直前のドキュメントでもある。アルバム単体で完結するというより、70年代ソウルからディスコへ移る途中の空気をとらえた一枚、という見方がしっくりくる。
まとめ
『Armed And Extremely Dangerous』は、First Choiceの名を決定づけたデビュー期の重要作であり、フィラデルフィア・ソウルの実践がそのまま記録されたようなアルバムである。タイトル曲のヒットだけでなく、制作陣、歌声、アレンジ、そして当時のシーンとの接点まで含めて見ると、この作品が後のFirst Choice、さらには70年代後半のダンス・ソウルへ続く流れの起点にあることが見えてくる。華やかな装飾のあるソウルでありながら、演奏と歌の輪郭ははっきりしている。そのバランスが、この盤の魅力になっている。
トラックリスト
- A1 Smarty Pants 2:38
- A2 Runnin' Out Of Fools 3:32
- A3 A Boy Named Junior 3:41
- A4 Love And Happiness 6:57
- A5 Wake Up To Me 3:45
- B1 Newsy Neighbors 5:57
- B2 Armed And Extremely Dangerous 2:48
- B3 This Little Woman 3:50
- B4 This Is The House 2:57
- B5 One Step Away 3:10