Loleatta Holloway - Loleatta Holloway (1979)
Loleatta Holloway / Loleatta Holloway(1979年、US)
ロレッタ・ホロウェイの1979年作『Loleatta Holloway』は、ゴスペルで鍛えた声をディスコとR&Bの現場に持ち込んだ時期の代表的なアルバムである。1960年代から歌い始めた彼女は、70年代半ば以降にSalsoul系のディスコ作品で存在感を強め、この作品はその流れの中で発表された5作目のスタジオ・アルバムにあたる。フィラデルフィアのGold Mind Recordsからのリリースで、Salsoul配給という背景も含め、当時のダンス・ミュージックの中心地にしっかり結びついた一枚になっている。
制作の現場感がはっきり見えるアルバム
録音はSigma Sound Studios、Muscle Shoals Sound Studios、Universal Recording Corp.、PS Recording Studiosと複数のスタジオで行われ、ミックスもBlank Tape Studios、Muscle Shoals Sound Studios、Larrabee Sound、Sigma Sound Studiosにまたがっている。クレジットにはフロイド・スミス、ボビー・ウーマック、パトリック・モーテン、バニー・シグラーの名前が並び、当時のディスコとソウルの制作体制がそのまま反映された構成である。フィラデルフィア・ソウルの流れ、南部ソウルの手触り、シカゴの録音環境が一つの作品の中に入っている点が、この盤の面白さでもある。
実際に聴くと、ロレッタの声の押し出しがまず前に出る。ハスキーさと強い発声が同居していて、上に伸びるフレーズでも声量が落ちない。ディスコのビートが入っても声が埋もれず、むしろリズムの上を押し切るように進む。ダンス・トラックでもバラードでも、歌の芯がぶれないのがこの人らしさである。
収録曲とアルバムの流れ
全7曲という構成で、派手なフロア向け楽曲と、深いソウル寄りのバラードが並ぶ。表題的な位置にある「The Greatest Performance Of My Life」は、シャーリー・バッシーの楽曲をカヴァーしたナンバーとして知られ、ドラマ性の強い展開が印象に残る。「There Must Be A Reason」はディープ・ソウル色の濃いバラードで、ディスコ盤の中でも歌そのものをじっくり聴かせる場面になっている。
シングルとして切られた「That’s What You Said」は、BillboardのHot Dance Club Playで30位を記録した。チャート上の大ヒットというより、クラブ側の反応を確かに取った曲として位置づけられる。ロレッタのアルバムは、後年に「Love Sensation」がハウスやサンプリング文化の中で大きく再評価されるが、この1979年作もその前段階として、彼女の歌がダンス・ミュージックの現場に深く入り込んでいたことを示す内容である。
同時代の文脈とロレッタの位置
ロレッタ・ホロウェイは、ゴスペル出身の強靭な歌唱を持つシンガーとして、同時代のディスコ・ディーヴァの中でもかなり直線的な力を感じさせる存在である。パティ・ラベルやグロリア・ゲイナーのようにソウルとディスコの接点を広げた歌い手たちと並べて語られることが多いが、ロレッタの場合は、より生々しい声の圧が前面に出る。70年代後半のディスコが洗練に向かう中で、このアルバムはその洗練だけに寄らず、歌の熱を残しているところが特徴である。
また、彼女の歌は後年のハウスやヒップホップでも繰り返し参照された。特に「Love Sensation」のサンプルは、Black Boxの「Ride On Time」で広く知られるようになり、のちに権利をめぐる問題も起きた。さらにMarky Mark & The Funky Bunchの「Good Vibrations」では正式にクレジットと対価が与えられた。こうした後年の受容を踏まえると、1979年のこのアルバムは、単なるディスコ時代の一作ではなく、のちのクラブ・ミュージックに続く声の資源を蓄えた時期の記録でもある。
盤としての情報
このUS盤は1979年リリースで、RunoutのSerifed “I” スタンプからRCA Records Pressing Plant, Indianapolisでのプレスと分かる。録音・ミックス・マスタリングの各工程が明示されており、当時のUSディスコ盤らしい制作の足跡が残っている。なお、B面後半の曲の長さにはジャケット表記とラベル表記で差があり、実際の収録時間は別に示されている。こうした細部も、70年代末のレコードらしい資料性を持つ部分である。
『Loleatta Holloway』は、ヒット曲の強さだけで押す作品ではない。ゴスペル由来の声、ディスコの推進力、ソウルの濃さが一枚の中で並走していて、ロレッタ・ホロウェイという歌い手の輪郭をそのまま刻んだアルバムである。70年代後半のダンス・ミュージックを聴くうえで、外せない位置にある一作だ。
トラックリスト
- A1 The Greatest Performance Of My Life 7:00
- A2 All About The Paper 6:10
- A3 There Must Be A Reason 6:20
- B1 That's What You Said 6:55
- B2 Baby It's You 3:59
- B3 There'll Come A Time 3:21
- B4 Sweet Mother Of Mine 4:37