Fleetwood Mac - Then Play On (1969)
Fleetwood Mac 1969

Fleetwood Mac - Then Play On (1969)

Rock Psychedelic Rock Blues Rock

Fleetwood Mac『Then Play On』──ブルース・バンドから次の段階へ進む転換点

Fleetwood Macの『Then Play On』は、1969年9月にUKで発表された3作目のスタジオ・アルバムで、Peter Green在籍期の最後のオリジナル・アルバムとして知られる作品です。初期Fleetwood Macといえば、John Mayall周辺の流れを汲む英国ブルース・ロックの文脈で語られることが多いですが、このアルバムではその枠の中に収まりきらない要素がはっきり見えてきます。ブルースを土台にしながら、曲の構成、音の間合い、ギターの響きにまで意識が向いた一枚という印象です。

このUKオリジナル盤はReprise Recordsの三色“steamboat”ラベルでリリースされ、見開きジャケットのマットな質感や、広めの背表紙を持つ仕様も当時の盤らしい雰囲気を残しています。内袋にはRepriseの案内とPye Records配給表記が入り、UK盤としての時代背景もよく出ています。レーベル面も含めて、1969年という年の空気がそのまま閉じ込められたような内容です。

Peter Green時代の到達点と、次への分岐点

『Then Play On』の位置づけはかなり明確です。Peter Greenがバンドを強く引っ張っていた時期の集大成であり、同時にその先の変化を予告するアルバムでもあります。前2作のブルース色を引き継ぎつつ、ここではより内省的な曲調や、展開の読みにくい楽曲が増えています。Danny Kirwanが本格的に前面へ出た最初のアルバムでもあり、Green一人の色だけではない、複数の作曲感覚が交差する作品になっています。

Peter Greenはギターとヴォーカルの両方で存在感が強く、特に音の減らし方が印象に残る場面が多いです。派手に弾き切るというより、フレーズの置き方で曲の流れを作るタイプで、その点は同時代の英国ブルース勢の中でもかなり個性的です。John Mayallの流れを受けつつも、よりロック・バンドとしてのまとまりを意識した演奏に聞こえます。

収録曲と「Oh Well」の重要性

オリジナルUK盤は14曲入りで、「Oh Well」は未収録です。ここは後年の再発盤や流通盤との大きな違いで、現在よく見かける形とは少し印象が変わります。のちに「Oh Well」前後のヒットを取り込んだ再構成版が出て、アルバムは11曲構成へと整理されましたが、UK初出盤はもっとアルバム全体の流れを重視した形です。

「Oh Well」はFleetwood Macの代表曲として広く知られ、バンド名をブルース・ファン以外にも押し広げた重要な楽曲です。パート1と2に分かれた構成、硬質なリフ、途中で空気が切り替わる作りは、当時の英米ロックの中でもかなり目立つ存在です。ただしこのUK初回盤では、それがアルバムの外に置かれているため、作品全体はより静かな緊張感を持っています。

ブルース・ロックの中での立ち位置

1969年の英国ロックには、ブルースを出発点にしながら別の方向へ進むバンドがいくつもありました。Fleetwood Macもその一つですが、『Then Play On』はその中でも分岐点の記録として読めます。単なるブルースの焼き直しではなく、サイケデリック・ロックの感触や、曲の長さよりも展開の質を重視する姿勢が見えるからです。CreamやJethro Tullのように技巧を前面に出すタイプとも少し違い、もっと地に足のついた演奏の中で新しさを探している感じがあります。

制作面では、バンド内部の緊張も作品に影を落としています。Peter Greenの精神的な負荷が増していく時期でもあり、その不安定さが結果的に音楽の切迫感につながっているように聞こえます。Jeremy Spencerの参加が限定的であることも含め、編成の揺れがそのままアルバムの輪郭になっています。

UKオリジナル盤ならではの聴きどころ

このUK初回盤は、後年の「Oh Well」入り再構成盤とは違い、アルバム単体の流れがはっきりしています。曲順の中で、ブルースの定型から少しずつ外れていく感触があり、最後に残るのは派手さよりも余韻です。実際に聴くと、ギターの音色やリズム隊の間合いがかなり細かく作られていることが分かります。特に、演奏が前に出すぎない場面で、かえって各パートの輪郭が見えやすい作品です。

Fleetwood Macの後年の大成功を考えると、『Then Play On』はその前史として語られがちですが、単なる通過点ではありません。Peter Green時代の終わりを記録しながら、バンドがブルース・ロックの外へ踏み出す瞬間を捉えた一枚。英国ロックの1969年を代表するアルバムのひとつとして、今も位置づけられる作品です。

トラックリスト

  1. A1 Coming Your Way
  2. A2 Closing My Eyes
  3. A3 Fighting For Madge
  4. A4 When You Say
  5. A5 Show-Biz Blues
  6. A6 Under Way
  7. A7 One Sunny Day
  8. B1 Although The Sun Is Shining
  9. B2 Rattlesnake Shake
  10. B3 Without You
  11. B4 Searching For Madge
  12. B5 My Dream
  13. B6 Like Crying
  14. B7 Before The Beginning

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Blues Rock"

toast