Speed, Glue & Shinki - Speed, Glue & Shinki (1972)
Speed, Glue & Shinki『Speed, Glue & Shinki』
Speed, Glue & Shinki は、1970年に結成された日本のサイケデリック・ロック/ブルース・ロック・トリオで、中心にいたのはギタリストのShinki Chen。バンド名そのものが示す通り、当時の日本ロックの中でもかなり硬質で、粗い歪みを前面に出したグループとして知られている。この『Speed, Glue & Shinki』は1972年に発表された作品で、バンドのディスコグラフィーの中でも最終盤に位置するアルバムだ。1971年のデビュー作『Eve』に続く2作目として扱われることが多く、結果的には彼らの活動の締めくくりに近い内容になっている。
作品の輪郭
収録曲は、ブルースを土台にしたリフ主体の曲、引きずるようなテンポのナンバー、シンセや効果音を交えた実験寄りの曲が並ぶ構成で、まとまりよりも勢いと荒さが先に立つ。代表曲としては“Run and Hide”や“Calm Down”、“Wanna Take You Home”がよく挙げられる。ギターは終始ざらついた質感で、リズム隊も重く、演奏の密度で押していくタイプのアルバムだ。歌やメロディを前に出すというより、バンドの空気感そのものを記録したような作りになっている。
当時の日本のロックには、頭脳警察や裸のラリーズ、フラワー・トラベリン・バンドのように、海外のハードロックやサイケデリック・ロックを強く吸収したバンドがいた。その中でも Speed, Glue & Shinki は、特にブルースの骨格を強く残しながら、音の圧と荒れ方で勝負している印象がある。英米のハードロックに寄せるというより、日本のロック史の中で独自に先鋭化した作品として耳に残る。
バンドの状況と作品の位置づけ
この時期のバンドは、すでに内部のバランスが崩れていたとされる。オリジナル・ベーシストの加部正義は離脱状態にあり、代わってMike Hanopolが参加、Joey Smithが制作面でも大きな役割を担った。そうした事情もあってか、アルバム全体には統一感よりも、場面ごとの温度差や不安定さがそのまま残っている。完成度の高い整った作品というより、崩れかけたバンドが最後に残した記録に近い。
商業的には大きな成功を収めた作品ではなく、当時の一般的なチャート実績も目立たない。一方で後年になると、日本ロック史の重要盤として再評価が進んだ。70年代初頭の日本で、ここまで重く、湿ったブルース感覚を持ったアルバムは多くない。のちのストーナー・ロックやドゥーム寄りの耳で聴くと、前時代的というより、むしろ先に行きすぎた感触がある。
2019年盤について
この2019年盤は、日本盤として再発されたもので、オリジナルの1972年盤からかなり時間を置いた復刻になる。ジャケットはダブル・スリーブ仕様で、大きめの帯が付き、黄色い12インチのインサート2枚が封入されている。歌詞、クレジット、小さな写真が載った構成で、コレクション性の高い体裁だ。外袋にはQRコードのステッカーがあり、盤はEU製、レーベル表記も「Made in the EU」となっている。オビには価格表記や日付、印字情報が入っていて、現行の再発盤らしい整理された仕様になっている。
オリジナル盤は1972年の作品として日本ロック史の文脈で語られ、2019年盤はその内容を現在の流通環境で手に取りやすくしたものだ。音そのものは、当時の録音のざらつきや生々しさが重要な作品なので、再発盤でもその性格が大きく変わるタイプではない。むしろ、荒いギター、低く沈むベース、前のめりのドラムが作る圧を、改めて確認するための盤として見るのが自然だ。
まとめ
『Speed, Glue & Shinki』は、1972年の日本ロックが持っていた熱量と不安定さをそのまま閉じ込めたアルバムだ。整った名盤というより、崩れかけたバンドが最後に残した強い痕跡。ブルース由来の重さ、サイケデリックな揺らぎ、ハードロック的な押し出しが同居していて、その混ざり方にこのバンドらしさがある。70年代日本のアンダーグラウンドなロックを追ううえで、外せない一枚として扱われているのも納得できる内容だ。
トラックリスト
- A1 Sniffin' & Snortin' Pt.1 (Vitamine C)
- A2 Run And Hide
- A3 Bad Woman
- A4 Red Doll
- B1 Flat Fret Swing
- B2 Snifin' & Snortin' Pt.2 (Vitamine C)
- B3 Don't Say No
- B4 Calm Down
- C1 Doodle Song
- C2 Search For Love
- C3 Chuppy
- C4 Wanna Take You Home
- D1 Sun - Planets - Life - Moon
- D2 Song For An Angel