Cocteau Twins - Garlands (1982)
Cocteau Twins『Garlands』――1982年、4AD初期を決定づけたデビュー作
Cocteau Twinsの『Garlands』は、1982年7月10日にUKの4ADから出た初期アルバムで、バンドの名を広く知らしめた最初期の重要作。スコットランド・グランジマウスで1981年に結成されたばかりの3人組が、短い準備期間ののちに一気に形にした作品で、のちのドリームポップやシューゲイザーへつながる入口としても参照され続けている。とはいえ、この時点のサウンドは後年の透明感よりも、低音の圧と金属的な響き、リズムの硬さが前に出たもの。4AD初期のカタログの中でも、かなり輪郭のはっきりした一枚だ。
制作背景とリリース時の位置づけ
結成間もない頃、バンドは敬愛していたThe Birthday Partyのライブに足を運び、そこでドラマーのフィル・カルバートから4ADの住所を教えてもらったことが縁になったとされる。ロビン・ガスリーがデモを持ってロンドンへ向かい、アイヴォ・ワッツ=ラッセルとジョン・ピールの双方にテープを渡した、という流れも残っている。4AD側は当初シングルを想定していたが、Blackwing Studiosでエリザベス・フレイザーの歌声を聴いたワッツ=ラッセルがアルバム制作へ方針を変えた、というエピソードが知られている。
録音は1981年12月、スコットランドでわずか7日間。クレジットには「Engineered by Eric and John at Blackwing」とあり、ライナーにはフレイザーの文句とも祈りとも取れる一節「Déar Carol, Wé shall both die in your rósary: Elizabeth」が記されている。こうした断片も含めて、当時の4ADらしい、作品全体をひとつの世界として提示する姿勢が見える。
音の輪郭: ベース、808、歪んだギター
実際に聴くと、まず耳に残るのはウィル・ヘギーの重いベースライン。そこへRoland TR-808のドラムマシンが直線的に入り、ロビン・ガスリーの歪みとリバーブの深いギターが層を作る。いわゆる“きらびやか”なCocteau Twins像とは少し違い、ここでは音が前へ迫ってくる感触が強い。フレイザーの声も、まだ後年のように言葉の輪郭が溶け切る段階ではなく、短いフレーズや響きの強さがそのまま曲の芯になっている。
特に「Wax and Wane」は代表曲として扱われることが多く、ピールの1982年“Festive Fifty”で37位に入った記録もある。アルバムの中でも、リズムとベースの推進力が最も分かりやすく出た曲で、初期Cocteau Twinsの硬質な側面を示す一曲。ほかにも、曲ごとに強弱はあるが、全体としてはメロディを前面に押し出すというより、低音と残響の密度で引っ張る構成が続く。
同時代の文脈と比較
当時の批評では、Siouxsie and the Bansheesとの比較が早くから出ていた。フレイザーの声や、ゴシック寄りの暗い質感に注目が集まったためだ。実際、Spin誌は彼女を「エコーとにじんだマスカラのSiouxsie」と表現したとされ、バンド自身も「Siouxsieの模倣バンド」と見られた時期があったと振り返っている。もっとも、『Garlands』は単なる追随ではなく、4AD初期の美学と結びついた独自の音像を早い段階で示している。
Sounds誌はフレイザーの声域の広さを取り上げ、「儚いイメージが漂う音の絵巻」と評したという。こうした受け止め方は、のちのCocteau Twinsを語るときにもつながるが、このデビュー作ではまず、暗さと緊張感のほうが前に出る。後年の『Head Over Heels』でグロソラリア的な歌唱がより明確になっていく流れを考えると、『Garlands』はその手前にある、まだ言葉と音がせめぎ合う段階の記録でもある。
作品のその後への影響
『Garlands』はUKインディー・アルバムチャートでトップ5入りし、最高4位を記録した。商業的な大ヒットというより、4ADの存在感を強め、Cocteau Twinsの名前をシーンに刻んだ初期成果として見られている。さらに、ガスリーの多層的なギターは後のシューゲイザー世代にとって重要な参照点になり、音の重なり方そのものが受け継がれていった。
2003年には「スコットランド最高のロック/ポップアルバム100選」に選出された記録もある。結成直後の勢い、4ADとの出会い、Blackwingでの録音、そして1982年夏のリリース。『Garlands』は、Cocteau Twinsが独自の方向へ進み始める最初の着地点として、今もはっきりした輪郭を保っている。
トラックリスト
- Over
- A1 Blood Bitch 4:37
- A2 Wax And Wane 4:02
- A3 But I'm Not 2:49
- A4 Blind Dumb Deaf 3:46
- This Side
- B1 Shallow Then Halo 5:15
- B2 The Hollow Men 5:03
- B3 Garlands 4:31
- B4 Grail Overfloweth 5:23