Black Country, New Road - For The First Time (2021)
Black Country, New Road『For The First Time』
Black Country, New Roadの『For The First Time』は、2021年にNinja Tuneから出たデビュー・アルバム。前身バンドの解散を経て2018年に結成された彼らが、最初のシングル2作で集めた注目をそのままアルバムへ持ち込んだ作品で、2021年のUKアルバム・チャートでは初登場4位を記録した。翌年の『Ants From Up There』へつながる初期像を、かなりはっきり残した一枚でもある。
制作背景と録音の経緯
当初の6人にギタリストのルーク・マークが加わり7人編成となったバンドは、ダン・キャリーのSpeedy Wundergroundから「Athens, France」、Blank Editionsから「Sunglasses」を限定7インチで発表し、どちらも早い段階で完売した。その反響を受けてNinja Tuneと契約し、アルバム制作へ進んだ流れになる。プロデュースは、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどを手がけたアンディ・サヴァース。録音はイギリスの第1回ロックダウン直前、2020年3月に集中して行われた。
制作では、バンドの最初期18ヶ月のライブ活動をそのまま記録する意図が掲げられ、過剰なスタジオ処理を避ける方針が取られた。目指されたのは「自分たちがライブで愛している音そのもの」を捉えること。初期シングルの「Athens, France」と「Sunglasses」は、歌詞の一部を改定し、静と動のダイナミクスを深めたアレンジで再録音されている。
アルバムタイトルは、デイヴ・ブルーベックの1973年のライブ盤『We're All Together Again for the First Time』に由来する。
時代の文脈
Black Country, New Roadは、black midi、Squid、Shameらと並んで、サウスロンドンのThe Windmillを拠点とする新世代UKポストパンク/オルタナティヴの流れで語られてきたバンド。わずか2枚のシングルだけで大きな期待を集めた状態でアルバムを出し、パンデミック直前の緊張感を抱えたまま作品化された点が、このデビュー作の背景になっている。
サウンド・聴きどころの評され方
作品の中では、ポストパンク、スリント直系のポストロック、マスロックを土台にしつつ、東欧ユダヤの伝統音楽クレズマーやフリージャズの要素が取り込まれていると評された。ジョージア・エラリーのヴァイオリンとルイス・エヴァンスのサックスがリフや旋律を引っ張り、静寂から激しい狂騒のクライマックスへ移るダイナミックな構成が特徴として挙げられる。アイザック・ウッドのヴォーカルも、つぶやくような語り口から感情の昂ぶりに任せたシャウトへ移る独自のスタイルとして強い印象を残す。
曲単位では、8分を超える破滅的な展開を見せる「Sunglasses」が特に注目された。「Opus」も、クレズマーの祝祭感とハードコアな激しさが交差する曲として高い評価を得ている。歌詞面では、カニエ・ウェストやスコット・ウォーカーなどのポップカルチャーを織り込みながら、若者の不安や文化的な幻滅を生々しく描いている。
評価
リリース後は各音楽メディアから高い評価を受け、NME、The Guardian、Paste、Stereogumなどの年間ベストでも上位に選ばれた。2021年のマーキュリー賞にもノミネートされている。
今回の盤は、140グラムのシングルLP仕様で、白い紙製インナー、12インチの歌詞ブックレット、ダウンロードコード付き。2021年のオリジナル期に出たヨーロッパ盤として、初出時のフォーマットをそのまま押さえた内容になっている。
トラックリスト
- A1 Instrumental
- A2 Athens, France
- A3 Science Fair
- B1 Sunglasses
- B2 Track X
- B3 Opus