Glass Hammer - Perilous (2012)
Glass Hammer『Perilous』
Glass Hammerの通算13作目のスタジオ・アルバム『Perilous』は、2012年に登場した作品で、同年のUK盤アナログはPlane Groovyから500枚ナンバリング限定の2枚組LPとして出た。見開きジャケット、ポリラインドのLPスリーブ、ダウンロードカード付きで、シュリンクにはハイプステッカーも貼られていた。
制作背景と録音の経緯
本作は、2010年の『If』、2011年の『Cor Cordium』に続く、ジョン・デイヴィソンとカムラン・アラン・シコーを含む編成での3作目にあたる。デイヴィソンは2012年2月にイエスの新リード・シンガーに抜擢されており、本作のソングライティング・セッションには参加していない。作詞は全曲スティーヴ・バッブ、作曲はバッブ、フレッド・シェンデル、シコーの3名が担当している。
録音はチャタヌーガのSound Resourcesで行われ、ドラムスは前2作に続いてセッション・ドラマーのRandall Williamsが担当した。ゲスト陣も多く、前作までの編成とは異なる顔ぶれが加わっている。「In That Lonely Place」ではAmber Fultsがリード・ヴォーカルを務め、The Adonia Trioが弦楽三重奏で参加。さらにThe McCallie School Guitar Choir、The Chattanooga Girls Choir、Latin Choir、Carey Shinbaumらがクレジットされている。マスタリングはBob Katz、アートワークはRodrigo T. Adolfoが担当した。
このアナログ盤には、通常盤CDには入っていないボーナス・トラック3曲「Dancers In Twilight」「And Then She Sighed」「A Grain Of Sand」も収録されている。「And Then She Sighed」は中止となったJ・R・R・トールキン題材のアルバムのために2009年に録音されたバッブ作の楽曲で、Laura Lindstrom Davisのリード・ヴォーカルと少女合唱をフィーチャーしたもの。「A Grain Of Sand」は『If』期に候補曲として録音されたシコー作曲のインストゥルメンタルで、同曲用に録音されたデイヴィソンのヴォーカル素材は『If』収録の「If the Stars」に転用された。これら2曲はのちに2017年の結成25周年記念レア音源集『Untold Tales』にも収録され、バッブのライナーノーツで由来が明かされている。
時代の文脈
『Perilous』は、2009年の『Three Cheers for the Broken-Hearted』でポップ・ロック寄りに振れたあと、70年代風のシンフォニック・プログレ路線へ戻った時期の作品として位置づけられている。スージー・ボグダノウィッツとカール・グローヴズの離脱後、デイヴィソンとシコーを迎えた編成の流れをまとめる1枚でもある。
2012年2月のデイヴィソンのイエス加入は、グラス・ハマーにも注目を集めるきっかけになった。バッブは「YES factor」が世界的な関心を高めたことを認めつつ、この年の最大のニュースは『Perilous』だと述べている。あわせて、暗いジャケットから音楽性の変化を想像する声に対しては、これまでにない試みをしながらもシンフォニック・プログレのルーツを捨てるつもりはない、と説明していた。
本作は全13パートのコンセプト・アルバムで、A1「The Sunset Gate」からD1「Where Sorrows Died And Came No More」までの曲名を順につなげると、物語の筋を示す短い詩になる仕掛けがある。バッブは、夜の墓地で道に迷った2人の子供と、家路を探す途中で出会う存在を想定した寓話として説明している。最終的な解釈はリスナーに委ねる形だが、アルバム全体はひとつの統一されたビジョンとして構成されている。
聴きどころとして挙げられた曲
Sea of TranquilityのPete Pardoは本作を高く評価し、ジョン・アンダーソンを思わせるデイヴィソンの伸びやかなハイトーン・ヴォーカルを、シェンデルとバッブのキーボード・アレンジ、シコーのギターの上に乗るものとして紹介している。「The Years Were Sped」ではスティーヴ・ハウのアコースティック作品に通じるシコーのアコースティック・ギター、「Our Foe Revealed」ではバッブのベースとシェンデルのキーボード、「Toward Home We Fled」ではムーグやメロトロンの音色、「The Wolf Gave Chase」では往年のジェネシスを思わせる緊迫したインストゥルメンタル、「In That Lonely Place」ではAmber Fultsのリード・ヴォーカルが挙げられた。最終曲「Where Sorrows Died And Came No More」もハイライトの一つとして触れられている。
なお、『Sea of Tranquility』のPardoと『The Phantom Tollbooth』はいずれも本作に5点満点中4.5点を付けている。『Perilous』は、デイヴィソンが単独のメイン・リード・ヴォーカリストを務めた最後のスタジオ・アルバムでもあり、次作『Ode to Echo』ではボグダノウィッツとグローヴズが復帰する。
トラックリスト
- A1 The Sunset Gate 7:37
- A2 Beyond They Dwell 4:00
- A3 The Restless Ones 3:36
- A4 They Cast Their Spell 3:21
- B1 We Slept, We Dreamed 7:41
- B2 The Years Were Sped 2:57
- B3 Our Foe Revealed 6:27
- C1 Toward Home We Fled 6:47
- C2 As The Sun Dipped Low 1:32
- C3 The Wolf Gave Chase 1:59
- C4 We Fell At Last 1:56
- C5 In That Lonely Place 6:10
- D1 Where Sorrows Died And Came No More 6:34
- Bonus Tracks
- D2 Dancers In Twilight 3:38
- D3 And Then She Sighed 1:59
- D4 A Grain Of Sand 2:58
動画プレイリスト
このアーティストについて
Glass Hammerは、1992年にアメリカ・テネシー州チャタヌーガで結成されたシンフォニック・プログレッシブ・ロック・バンドだ。中心人物はマルチ・イン...
Glass Hammer のプロフィール・作品一覧