Gleb Kolyadin - The Outland (2022)
Gleb Kolyadin 2022

Gleb Kolyadin - The Outland (2022)

Rock Prog Rock

Gleb Kolyadin『The Outland』

Gleb Kolyadinは、サンクトペテルブルク出身のピアニスト/キーボード奏者で、室内楽的な感触とプログレッシブ・ロックの語法をつなぐ音作りで知られる人物だ。2022年作の『The Outland』は、彼にとって3作目のソロ・アルバムにあたり、KscopeからUK盤として登場した作品である。レコードにはプリント入りインナー・スリーブが付属し、表記上はMade in the EU。Kscopeらしい現代プログレの文脈にしっかり置かれた一枚になっている。

作品の輪郭

このアルバムは、iamthemorningで見せてきたピアノ主体の美しさを土台にしながら、それをより器楽作品として広げた内容になっている。楽曲はピアノだけで完結する場面と、バンド編成で推進力を持たせる場面がはっきり分かれていて、その切り替えが聴きどころになっている。プログレ・ロック、ジャズ・フュージョン、現代音楽の要素が自然に接続され、曲ごとの性格が明確なのもこの作品の特徴だ。

冒頭の「Voyager」は、アルバム全体の方向を示すような導入曲で、旋律の置き方と展開の運びにKolyadinらしい整理された感覚が出ている。「Cascades」はソロ・ピアノ寄りの曲として耳に残りやすく、音数を絞ったぶん、鍵盤のタッチや余白の扱いが前に出る。「Apparatus」ではロック色が強まり、リズムの押し出しがはっきりする。アルバムの中でこうした性格の違いが並ぶことで、単なるピアノ作品集ではなく、構成のあるプログレ作品としてまとまっている。

制作背景とリリースまでの流れ

制作の背景には、パンデミック下で人と会えない息苦しさの中、新しい世界を頭の中に作る感覚があったとされる。本人が語るところでは、完成した作品は聴き手それぞれの“内的な映画”として立ち上がるものを意識していたという。リリースは2022年11月にBandcamp先行公開があり、その後Kscopeから正式に出た流れで、2022年の作品として扱われる。

発表時期には戦争の影響も重なり、当初の予定より遅れた経緯があった。そうした事情も含めて、作品自体が閉塞感の中で組み立てられた印象を持つ。とはいえ、音の並びは重苦しさに寄り切らず、むしろ構築の細かさや旋律の流れが前に出る。内向きの感情をそのまま沈めるのでなく、器楽曲として整えて外に出した形だ。

演奏陣と音の質感

演奏面では、Gavin Harrisonのドラム、Vlad Avyのギター、Tony Levinのアップライトベース、Eliza Marshallのフルート、さらに14人編成の弦楽隊が参加している。ここにKolyadin自身のピアノとキーボードが重なり、室内楽の精密さとロックの推進力が同居する。特に弦の入れ方は、単なる装飾ではなく、曲の輪郭を太くする役割を担っている。

Gavin Harrisonの参加は、この作品をプログレ文脈の中で聴くうえで大きい。派手に叩きまくるというより、細かなアクセントで流れを支えるタイプの演奏が曲の構造に合っている。Tony Levinの低音も、ピアノ主導の楽曲に芯を入れる役回りとして機能している。こうしたメンバー構成からも、ソロ作でありながらアンサンブル作品として組まれていることが伝わってくる。

同時代の文脈

Kscopeというレーベルの性格を踏まえると、『The Outland』は現代プログレの中でも、派手な技巧より構成と音色の設計を重視する作品群と並べて語りやすい。クラシック寄りの書法、ジャズ由来の和声感、ロックの拍の強さが混ざる点では、周辺にいる多くの現代プログレ系キーボード・アーティストと地続きの感触がある。ただし、Kolyadinの場合はピアノの存在感が強く、曲の中心が常に鍵盤にある点がはっきりしている。

iamthemorningで見せてきた繊細な室内感覚を引き継ぎつつ、それをソロ作として組み替えた位置づけも見えてくる。バンドの一部として鳴るピアノではなく、作曲の中心にあるピアノ。その輪郭が『The Outland』ではより明瞭だ。

まとめ

『The Outland』は、2022年のGleb Kolyadinを示す作品として、ピアノ、室内楽、プログレ・ロック、ジャズ・フュージョンの要素を無理なく束ねたアルバムである。曲ごとの性格差がはっきりしていて、ソロ・ピアノの静かな場面から、弦とドラムが前に出る場面まで、構成の切り替えが丁寧だ。Kscopeらしい現代プログレのフォーマットの中で、Kolyadin自身の作曲感覚が前面に出た一枚として記憶される内容になっている。

トラックリスト

  1. A1 Voyager
  2. A2 Ascension
  3. A3 Cascades
  4. B1 Mercurial
  5. B2 Apparatus
  6. B3 Hermitage

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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