Black Widow - Sacrifice (1970)
Black Widow『Sacrifice』――1970年UKプログレッシブ・ロックの異色作
Black Widowの『Sacrifice』は、1970年にUKのCBSレーベルから登場したデビュー・アルバム。前身のPesky Gee!から発展する形で、1969年9月にレスターで結成されたバンドの最初の長編作品である。ジャンル表記はRock、スタイルはProg Rockだが、この作品を語るうえでは、当時の英国ロックの中でもかなり演劇性の強い一枚として見ておきたい。
Black Widowは、初期からオカルトや悪魔崇拝のイメージを前面に出したことで知られる。ドラマーのClive Boxが発想したコンセプトを軸に、舞台上での儀式めいた演出を組み立て、Alex SandersとMaxine Sandersの協力も受けながら、呪文や魔法円の見せ方まで詰めていったという。音楽だけでなく、ライブ全体を一つの劇として見せる姿勢が、このバンドの出発点にある。
アルバムの位置づけ
『Sacrifice』はBlack Widowにとって最初のアルバムであり、同時にバンド像を世間に強く刻んだ作品でもある。のちに3枚のアルバムを残して1973年に解散するが、その中でもこのデビュー作は、バンドの看板になったオカルト・ロック的なイメージと、プログレッシブ・ロックの構成感が最初にまとまった形で出た盤として重要だ。UKアルバムチャートでは32位を記録しており、話題性だけでなく一定の反応も得ている。
収録曲と代表曲
先行シングルの「Come To The Sabbat」は、このアルバムを語るうえで外せない曲。BBCでは放送禁止扱いとなり、ラジオでの露出はほとんどなかったとされる一方、バンドの名を広める役割は十分に果たした。曲名からして強い印象を残すが、単なる刺激狙いではなく、アルバム全体の世界観を代表する存在になっている。
作品全体は、重さのあるリフ、劇的な展開、語り口のはっきりした歌唱が並ぶ構成で、同時代の英国プログレやハードロックと接点を持ちながらも、Black Sabbathのような暗黒イメージとも比較されやすい。実際、レコード店では両者を混同して買う客もいたと伝えられている。Black Widowのほうは、サウンド以上に「何を見せるか」が強く意識されたグループだった点が特徴的だ。
オリジナルUK盤の仕様
このUKオリジナル盤はCBSのオレンジ・ラベル仕様で、ゲートフォールド・スリーブ。レーベルには「April Music」の出版クレジットが入るバリエーションで、同系統の別表記盤も存在する。盤面のランアウトには、マトリクス番号のほか、9時方向に文字、3時方向に数字が刻まれている。レーベル上のカタログ番号が先、ジャケット上の番号が後、という表記順もこの盤の確認ポイントになる。
同時代の文脈
1970年前後の英国ロックでは、重厚なリフや長尺構成を持つバンドが次々と現れ、表現の幅が一気に広がっていた。Black Widowはその流れの中でも、演出面を強く押し出した点で独特だ。音だけでなく、舞台装置、衣装、儀式性まで含めて作品世界を作る姿勢は、後年のショック・ロックや演劇的なハードロックにも通じる要素を持つ。
『Sacrifice』は、派手な話題先行に見えて、実際にはバンドの初期像をかなり明確に伝えるデビュー作。オカルト・イメージが先に立つが、UKプログレの時代背景の中で、演奏と演出を一体にした作品として残っている。Black Widowという名前を初めて記録したアルバムとして、1970年の英国ロックの空気をよく映している一枚だ。
トラックリスト
- A1 In Ancient Days
- A2 Way To Power
- A3 Come To The Sabbat
- A4 Conjuration
- B1 Seduction
- B2 Attack Of The Demon
- B3 Sacrifice