Praxis - La Eternidad De Lo Efimero (1988)
Praxis『La Eternidad De Lo Efímero』について
Praxisの『La Eternidad De Lo Efímero』は、メキシコのプログレッシブ・ロック史の中でしばしば名前が挙がる1枚だ。1988年にメキシコのDiscos Rosenbachから出た作品で、アルバム単位ではこのタイトルがPraxisの実質的な代表作になっている。バンドは短命で、残された録音も多くないため、作品そのものがそのままグループの姿を伝える資料のような位置づけにある。
バンドの成り立ちと制作の中心
制作の中心にいたのは、Iconoclastaで活動していた鍵盤奏者リカルド・モレノだ。Praxisは彼が1987年ごろに別プロジェクトとして立ち上げたもので、演奏陣はヘクトル・エルナンデス(ギター)、ベルナルド・アナヤ(ベース)、ヘクトル・ロサス(ドラム/パーカッション)という編成。作曲、編曲、演奏の核がはっきりしていて、バンド全体で作り上げたインストゥルメンタル主体の作品としてまとまっている。プロデュースもバンド自身が担っており、独立レーベル作品らしい手触りがある。
音の印象
音楽の軸はシンフォニック・ロック寄りのプログレッシブ・ロックで、鍵盤とギターのやり取りが前面に出る。Iconoclastaの流れを受けつつ、こちらはより整理された演奏と構成で進む印象が強い。複雑な展開を持ちながらも、各パートの役割が見えやすく、リズム隊が土台を支え、その上でキーボードが旋律や和声を引っ張る形が目立つ。ジャズやフュージョンの要素も感じられるが、中心はあくまでロックの文脈にある。
実際に聴くと、派手な歌メロで押すタイプではなく、楽曲の流れや音色の変化で聴かせる作りが印象に残る。ギターは前に出る場面がありつつ、全体を支配しすぎず、鍵盤とのせめぎ合いの中で曲が進む。メキシコ産プログレに特徴的な、欧州シンフォニック・ロックへの接近と、地元シーンの独自性が同居した響きがある。
作品の位置づけ
Praxisはこの1枚だけを残した短命なユニットで、だからこそ『La Eternidad De Lo Efímero』は活動の集約点として見られている。後年の回顧では、メキシコのプログレッシブ・ロックの中でも完成度の高い作品として扱われることが多く、海外でも評価が広がった。特にイタリアのMellow RecordsによるCD再発で再注目が進み、メキシコ国内だけで閉じない流通を得た点も、このアルバムの歴史を語るうえで重要だ。
一方で、当時の一般的なヒット作や商業的な広がりについては、少なくとも目立った記録は見当たらない。作品の性格としても、チャートを狙うような作りではなく、プログレ愛好家の間でじわじわ評価が積み上がるタイプに近い。メキシコの80年代プログレを追うとき、Iconoclastaと並んで参照される理由はそのあたりにある。
レーベルと盤の背景
オリジナル盤はメキシコの独立レーベル、Discos RosenbachのDR-006。1983年に兄弟のホセ・ルイス・ベラスケス・ゴメスとフアン・マヌエル・ベラスケス・ゴメスによって始まったレーベルで、こうしたローカルな独立レーベルがプログレ作品を支えた時代背景も見えてくる。ジャケットやロゴも含めて、商業流通の中心というより、バンドとレーベルの距離が近い作品づくりの空気がある。
『La Eternidad De Lo Efímero』は、単なる希少盤というより、80年代メキシコ・プログレの一つの到達点として記憶されている作品だ。演奏者の力量、構成のまとまり、独立レーベルならではの制作環境、そのすべてがこの1枚に収まっている。
トラックリスト
- A1 Al Filo Del Abismo
- A2 Praxis
- A3 No Se Quien Soy Desde Que Se Quien Eres
- B1 Equinoccio
- B2 La Eternidad De Lo Efimero