Johnny Jenkins - Ton-Ton Macoute! (1970)
Johnny Jenkins『Ton-Ton Macoute!』
ジョージア州メイコン出身のブルース・ギタリスト、Johnny Jenkinsが1970年にATCO Recordsから発表したソロ・デビュー作。若き日のオーティス・レディングを見出した人物としても知られ、本作ではマッスル・ショールズ周辺のミュージシャンたちが集まり、南部のブルース、ソウル、ファンク、ロックが交差する濃密なサウンドが記録されている。冒頭の「I Walk On Guilded Splinters」をはじめ、強烈な個性とグルーヴを持つ傑作として語り継がれる一枚だ。
制作背景・エピソード
本作のセッションは、もともとカプリコーン・レコーズの創設者フィル・ウォルデンが、天才ギタリストのデュアン・オールマンのソロ・アルバムとして進めていたものだった。録音はアラバマ州マッスル・ショールズのFAME Studiosやメイコンのスタジオで行われたが、途中でデュアンがThe Allman Brothers Bandの結成へと向かったため、残されたトラックに旧友のJohnny Jenkinsがリード・ボーカルとギターを入れて完成させたという劇的な経緯を持つ。
参加メンバーにはデュアン・オールマン(リードギター、スライドギター、ドブロ)をはじめ、ベリー・オークリー(ベース)、ジェイモー(ドラムス)、エディ・ヒントン(ギター)ら、オールマン・ブラザーズ・バンド結成前夜の重要人物やマッスル・ショールズの敏腕プレイヤーが勢揃いしている。ドクター・ジャンの「I Walk On Guilded Splinters」や「Blind Bats And Swamp Rats」、スリーピー・ジョン・エスティスの「Leaving Trunk」、マディ・ウォーターズの「Rollin' Stone」、ボブ・ディランの「Down Along The Cove」など、多彩なルーツ・ナンバーが選曲された。
時代の文脈
1970年という時期は、サザン・ロック、スワンプ・ロック、サザン・ソウル、ブルースが濃密に交錯していた時代にあたる。本作はその潮流の只中で、オールマン・ブラザーズ・バンド結成前夜の熱気とマッスル・ショールズの演奏陣が交わった貴重なドキュメントとしても位置づけられている。白人と黒人の南部ルーツ・ミュージックがひとつの作品の中で溶け合っている点も、このアルバムの歴史的意義を際立たせている。
サウンドの特徴と聴きどころ
ディープ・サウス特有の湿度と粘り気のあるリズム(バイユー・ファンク/スワンプ・ファンク)に、デュアン・オールマンの鋭くうねるスライド・ギター、そしてジェンキンスの泥臭く嗄れたブルース・ヴォーカルが絡み合う様は圧巻だ。「I Walk On Guilded Splinters」の呪術的なビートはもちろん、「Rollin' Stone」での痛快なブルース・ロック展開、ディランのカバー「Down Along The Cove」で聴けるデュアンの美しいドブロ演奏、そしてジョン・リー・フッカー「Dimples」の土着的なブギまで、名演が揃っている。
後世への影響
もっとも広く知られているのは、冒頭の「I Walk On Guilded Splinters」だ。ジェイモーの叩く重厚で催眠的なドラムブレイクとパーカッション、唸るベースラインは、1993年にBeckが世界的大ヒット曲「Loser」でそのままサンプリングしたことで90年代オルタナティヴ・ロックの象徴的ビートとして定着した。さらにOasisの「Go Let It Out」(2000年)や、Paul Weller、Beastie Boysなどにもサンプリング・参照され、レア・グルーヴ/ヒップホップ/ロックのサンプリング・ソースとして不滅の存在感を放ち続けている。
トラックリスト
- A1 I Walk On Guilded Splinters 5:23
- A2 Leaving Trunk 4:07
- A3 Blind Bats And Swamp Rats 4:46
- A4 Rollin' Stone 4:58
- B1 Sick And Tired 4:11
- B2 Down Along The Cove 3:03
- B3 Bad News 3:21
- B4 Dimples 2:40
- B5 Voodoo In You 5:05