Kraftwerk - Kraftwerk (1970)
Kraftwerk / Kraftwerk(1970)
クラフトワークの記念すべきファースト・アルバム。1970年にドイツで発表された本作は、のちに世界的な電子音楽の代名詞となるバンドの、まだ初期衝動が前面に出た時代をそのまま封じ込めた作品である。ラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーを軸に、クラフトワークは前身バンドOrganisationの活動を経て結成され、1970年7月から9月にかけて録音された。プロデュースはコニー・プランク。Neu!、クラスター、ハルモニアなど、同時代のドイツ音楽を語るうえで外せない仕事を残した人物で、本作にもその手腕がはっきり出ている。
初期クラフトワークの輪郭が見える一枚
このアルバムを聴くと、後年の機械的で整然としたクラフトワーク像とは少し違う、より生身の演奏感が前に出ている。フルートの使い方が印象的な「Ruckzuck」は、その代表例で、勢いのある反復と音の抜き差しが曲の推進力になっている。「Stratovarius」も含め、音の組み立てはすでに独特だが、まだロックバンドの編成と即興性が強く残る。ドラムは曲ごとに異なり、「Ruckzuck」と「Stratovarius」はアンドレアス・ホーマン、「Vom Himmel Hoch」はクラウス・ディンガーが担当している。のちにNeu!を結成するディンガーが参加している点も、当時のジャーマン・ロックのつながりを示す。
全体としては、電子音楽というより、実験的なロックと前衛音楽のあいだを探っている印象が強い。反復、音色の選び方、曲の進行のさせ方に、すでにクラフトワークらしさの芽がある一方で、まだ完成された“ロボット感”には至っていない。この段階の作品を聴くと、後年の『Autobahn』以降の洗練がどれだけ大きな飛躍だったかもわかりやすい。
ジャケットと初回盤の存在感
ジャケットの円錐標識のアートワークは、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻が手がけたもの。工業建築の連作で知られる二人らしく、無機質で構造的な印象が強い。内側にはグルカハレのポップ&ブルース・フェスティバルで撮影された小さなメンバー写真が使われており、外側の記号性と内側のドキュメント性が対になっている。オリジナル盤は青地に銀刷りのラベルで、マトリクス表記やランアウトの仕様も含めて、当時のドイツ盤らしい作り込みがある。盤の仕様としては、初回プレス特有の見分け方が語られることも多い。
ジャーマン・ロックの文脈の中で
1970年のドイツでは、英米ロックの影響を受けつつも、それとは別の感覚で音楽を組み立てようとする動きが広がっていた。Can、Amon Düül II、Neu!、Clusterといった周辺の流れと並べると、本作の立ち位置も見えやすい。クラフトワークはその中でも、後のエレクトロニクス志向へつながる要素を早くから持っていたバンドで、ここではまだ“電子音楽の完成形”ではないにしても、反復と構造への関心がすでに明確だ。
のちのクラフトワークを決定づけるヒュッター/シュナイダー体制の音像からすると、本作はかなり異なる。しかし、ここにある実験性、曲の切り替え方、音の配置の意識が、後の作品群へつながっていくのは自然な流れに見える。クラフトワークの出発点として聴くと、単なるデビュー作以上の意味がある一枚である。まだ粗さの残る演奏と、すでに独自の設計図を感じさせる構成、その両方が同居している。
トラックリスト
- A1 Ruckzuck 7:47
- A2 Stratovarius 12:10
- B1 Megaherz 9:30
- B2 Vom Himmel Hoch 10:12