Kraftwerk - Die Mensch·Maschine (1978)
Kraftwerk『Die Mensch·Maschine』レビュー
1978年にドイツで発表されたKraftwerkの7作目が、この『Die Mensch·Maschine』だ。電子音楽を前面に押し出しながら、リズムは以前よりはっきりと身体に入ってくる形になり、クラフトワークの中でもポップソングとしての輪郭が強い一枚になっている。タイトルが示す通り、テーマは人間と機械の関係で、音そのものだけでなく、ジャケットや言葉づかいまで含めて作品全体が統一されている。
このドイツ盤はKling Klangレーベルからのリリースで、EMI Electrolaによる流通の時代のもの。初期コピーには29×41cmの折りたたみポスターが付属していたことが知られている。裏ジャケットやインナーの表記、そして盤面のクレジットも含めて、当時のオリジナル仕様を伝える内容になっている。
アルバムの位置づけ
Kraftwerkは1970年にデュッセルドルフで始動したグループで、70年代を通じて電子音楽の方法を組み立てていった。『Die Mensch·Maschine』は、その流れの中でもかなり重要な地点にある作品だ。実験性だけで押し切るのではなく、反復、メロディ、ビートの整理が進み、後のシンセポップやエレクトロの土台に近い感触がはっきり出ている。
前作までの流れと比べても、ここでは音の配置が明快だ。機械的でありながら、冷たさだけに寄らず、曲としての推進力がある。Kraftwerkが単なる前衛グループではなく、ポップの形式を電子音で作り替えていく存在として見られる理由が、このアルバムにはよく表れている。
収録曲と聴きどころ
代表曲としてまず挙がるのが「Die Roboter」と「Das Modell」だろう。「Die Roboter」は機械の発話や反復するフレーズが印象的で、ロシア語のボーカルが入る点も特徴的だ。言葉の響きそのものをリズムの一部として扱っている感覚があり、Kraftwerkらしい設計の細かさが見える。
「Das Modell」は、のちにシングルとしても広く知られる曲で、アルバム全体の中でも特にメロディが立っている。ジャケットやインナーではB1曲名が「Das Modell」と表記されており、盤や資料によって扱いに差が見られる点も、この作品のディスコグラフィを追う上では面白いところだ。曲自体は、モデルという存在をめぐる視線を、淡々としたリズムと反復でまとめている。
タイトル曲「Die Mensch·Maschine」も重要だ。人間と機械の境界を問うというより、その両者が同じ画面に並べられているような印象がある。音の整列感が強く、歌というより構造物を聴く感覚に近い。実際に通して聴くと、各曲が独立しているようでいて、アルバム全体の設計がかなり厳密につながっているのがわかる。
アートワークとコンセプト
この作品はアートワークもよく知られている。カール・クレフィッシュによるデザインは、エル・リシツキーの構成主義的な意匠に強く影響を受けていて、黒・白・赤の色使いと硬質なタイポグラフィが目を引く。メンバー4人を横並びで写したジャケット写真も、工業製品のカタログのような整然さがある。
裏ジャケットの図案も含めて、音だけでなく視覚面でも「人間機械」のテーマを補強している。Kraftwerkの作品は、音楽単体ではなく、言葉、写真、グラフィックまで含めてひとつのパッケージとして成立しているが、このアルバムはその完成度がかなり高い。
同時代との関係と影響
1978年という時点で見ると、ロックの文脈からもディスコの文脈からも少し離れた場所で、電子音だけでポップを組み立てる試みがここまで明確に形になっていたのは大きい。のちのゲイリー・ニューマンのロボティックなシンセポップ、デペッシュ・モードやペット・ショップ・ボーイズの80年代エレクトロポップ、さらにアシッドハウス、ニュービート、テクノへとつながる流れの中で、この作品が参照点になったのは自然な流れだ。
聴き進めるほど、音の数は多くないのに、配置の妙で曲が立ち上がってくる。派手な演奏ではなく、制御された反復と音色の選択で引っ張るアルバム。Kraftwerkが電子音楽の作法をポップの領域に持ち込んだ、その到達点のひとつとして受け止められてきた作品だ。
まとめ
『Die Mensch·Maschine』は、Kraftwerkの中でもコンセプト、音作り、ビジュアルのまとまりが強いアルバムだ。機械的な精度を持ちながら、曲としての入口は思った以上に広い。ロボット、モデル、人間と機械というモチーフが、音とデザインの両方で整理されている。1978年の時点でここまで明確に未来のポップを形にしていたことが、この一枚の大きな特徴になっている。
トラックリスト
- A1 Die Roboter 6:11
- A2 Spacelab 5:51
- A3 Metropolis 5:59
- B1 Das Modell 3:38
- B2 Neonlicht 9:03
- B3 Die Mensch · Maschine 5:28