Laurie Anderson - Big Science (1982)
Laurie Anderson 1982

Laurie Anderson - Big Science (1982)

Electronic Rock Pop Experimental Art Rock New Age

Laurie Anderson『Big Science』(1982) — アートとポップの境目を押し広げた作品

Laurie Andersonの『Big Science』は、1982年にUSのWarner Bros. Recordsから出たアルバムで、彼女にとってワーナーとの大型契約の第1弾として位置づけられる作品だ。もともとは1970年代末から手がけていた約8時間規模の舞台作品「United States I-IV」の断片を再構成して作られており、レコード単体というより、パフォーマンス、朗読、音響、映像をまたぐ彼女の活動の一部として生まれている。

Laurie Andersonは、ヴァイオリンの素養を持ちながら、視覚芸術の教育を受けたアーティストで、音楽家というよりパフォーマンス・アーティストとして先に知られた人物だ。とはいえ『Big Science』では、その経歴がそのまま音に反映されている。歌うというより語るような声、機械的な処理、反復、空間の使い方が前面にあり、ロックやポップの形式を借りながら、内容はかなり実験的。1980年代初頭のニューヨークのアートシーンと結びついた作品として扱われることが多いのも納得できる内容だ。

先行シングル「O Superman」の存在

このアルバムを語るうえで外せないのが「O Superman (For Massenet)」だ。もともとはAnderson自身が自主制作し、少数を手作業で流通させた楽曲で、BBC Radio 1のJohn Peelが繰り返しオンエアしたことで広く知られるようになった。そこからWarner Bros.が権利を獲得し、1981年にシングルとして出すと、全英シングルチャートで2位まで上昇した。前衛寄りの作品がポップ・チャートの上位に入る、かなり異例の展開だった。

曲の核にあるのは、Jules Massenetのオペラ『Le Cid』のアリア「Ô Souverain, ô juge, ô père」に由来するフレーズで、これをミニマルな反復と声の処理で組み立てている。実際に聴くと、派手な展開があるというより、一定のリズムと言葉の配置がじわじわと効いてくる。長い尺なのに、声の置き方と間の取り方で引っ張る構成がはっきりしていて、当時のシングルとしてはかなり特異だ。

アルバムの内容と聴こえ方

『Big Science』は、作品全体を通して、音数の多さよりも配置の精密さが印象に残る。シンセサイザー、加工された声、簡潔なリズム、断片的な言葉が、曲ごとに違う形で並ぶ。ロックのバンド演奏を軸にしたアルバムではないが、冷たい機械音だけの作品でもない。人の声が中心にあり、その声が話し、歌い、説明し、ずらし、時にユーモアを差し込む。

収録曲の中では、B1「Mister Heartbreak」方面につながる感触のある曲や、B3のように元の舞台作品の文脈が見える曲もあり、アルバム全体が「United States I-IV」の再編集盤として機能している。ラジオ的な親しみやすさと、舞台作品由来の構造感が同居しているのが特徴だ。ポップの体裁を取りながら、聴き手に意味の取り方を委ねる部分が多い。

1982年盤の仕様について

このUS盤は1982年リリースで、Warner Bros. RecordsのBSK 3674。レーベル面にWarner Bros.の「W」ロゴが入っている点が、この盤の見分けどころになっている。インナースリーブにはクレジットと歌詞が印刷され、ランオフにはMASTERDISKの刻印とEDPロゴが確認できる。録音はThe Lobby、The Hit Factory、Skyline Studios、Sorcerer Soundなどニューヨークのスタジオで行われ、マスタリングはMasterdisk、プレス関連にはEuropadiskの記載がある。

同じ1982年のオリジナル期でも、レーベルデザインの違いで細部が分かれることがあるが、この盤はオリジナルの時代感を持つUSプレスとして扱える。後年の再発ではレーベル意匠が変わるため、見た目の印象も少し異なる。

同時代の文脈

『Big Science』が出た1982年は、ポストパンク、ニューウェイヴ、アートロックがそれぞれ別の方向へ広がっていた時期だ。その中でLaurie Andersonは、バンドの文法に寄りかからず、言葉と音響の組み合わせでポップの外側と内側を往復している。比較対象としては、同時代の実験音楽やアヴァンギャルドの流れが見える一方で、単純に前衛へ閉じていないところが重要だ。

この作品でAndersonは、アート作品の発表者から、広く音楽の文脈で語られる存在へと一段階進んだ。後の作品群や、彼女の表現の幅を考えると、『Big Science』はその入口であり、同時に代表作としても扱われることが多い。音楽、朗読、テクノロジー、都市の気配が一つのパッケージに収まったアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 From The Air 4:29
  2. A2 Big Science 6:14
  3. A3 Sweaters 2:18
  4. A4 Walking & Falling 2:10
  5. A5 Born, Never Asked 4:56
  6. B1 O Superman (For Massenet) 8:21
  7. B2 Example #22 2:59
  8. B3 Let X=X 3:51
  9. B4 It Tango 3:01

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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