Porter Robinson - Worlds (2014)
Porter Robinson『Worlds』レビュー
Porter Robinsonの『Worlds』は、2014年に登場した1stフルアルバムである。アメリカ・ノースカロライナ州チャペルヒル出身の彼が、それまでのエレクトロハウス/コンプレクストロ寄りの作風から大きく舵を切り、自分自身の感覚を前面に出した作品として知られている。AstralwerksからのUS盤で、内袋に印刷が入った仕様。アルバム単体としてだけでなく、当時のEDMシーンに対する明確な応答としても受け止められた作品だ。
EDMの文脈から一歩外へ出たアルバム
Porter Robinsonは、2010年代前半にEDMの急速な商業化が進むなかで、そうした流れに距離を置くようになる。『Worlds』は、その転換点をそのまま形にしたアルバムで、クラブ向けの即効性だけを狙った作りではない。四つ打ちの推進力は残しつつ、メロディや音像の組み立てにかなり重心を置いている。ダンスミュージックのフォーマットを使いながら、聴感としてはポップソングやサウンドトラックに近い場面も多い。
収録曲の中では、「Sad Machine」が特に代表曲として扱われることが多い。ボーカロイドの声をフィーチャーしたこの曲は、アルバムの方向性を端的に示す1曲で、機械的な響きと感情の揺れが同居している。「Lionhearted」や「Flicker」なども含め、シンセのきらめきと細かな打ち込み、歌ものとしての輪郭がはっきりしているのがこの作品の特徴だ。
日本文化、ゲーム音楽、アニメの影響
このアルバムでまず目立つのは、Porter Robinsonが好んできた日本の文化的要素の入り込み方である。ボーカロイド、アニメ、そして『ダンスダンスレボリューション』や『ゼルダの伝説』のようなゲーム体験から受けた感覚が、単なる引用ではなく、曲全体の設計にまで反映されている。90年代のゲーム音楽やアニメ的な高揚感、SF的な広がりを、エレクトロニック・ミュージックの文法に落とし込んだ形だ。
実際に聴くと、音数は多いのに隙間がしっかり残っていて、派手なビルドアップだけで押し切らない。シンセのフレーズが前に出る場面でも、低域は必要以上に膨らませず、輪郭を保ったまま積み上げていく。クラッシュするようなビートと、淡い質感のパッドやアルペジオが同じ曲の中に並び、きっちり切り替わる。その切り替えが、アルバム全体の流れを作っている。
当時の評価と、その後の再評価
リリース当初の評価は一枚岩ではなかった。従来のEDM的な期待を外す作品でもあったため、戸惑いを示す声もあった一方で、2014年のベストアルバムの一つとして挙げる反応も多かった。インディーポップ寄りの質感や、エモーショナルなメロディへの依存を指摘する意見もあったが、時間が経つにつれて再評価が進み、いまではこのジャンルの基準点のように語られることもある。
チャート面でも存在感ははっきりしていた。全米ビルボード200で最高18位、BillboardのTop Dance/Electronic Albumsでは1位を記録し、長くチャートに残った。売れ方としても、単発の話題作ではなく、じわじわと聴かれ続けたアルバムだったことがわかる。
Porter Robinsonにとっての位置づけ
『Worlds』は、Porter Robinsonのキャリアの中でかなり大きな分岐点にあたる。若くしてシーンに出てきた彼が、既存の成功パターンをなぞるのではなく、自分の記憶や趣味、感情の置き場をそのまま作品化したアルバムだからだ。後の彼の活動を考えても、この作品で見えた「内面を音にする」姿勢は重要だった。EDMの枠内に収まる作品というより、その枠を使って別の景色を見せたアルバムとして記憶されている。
『Worlds』は、ハウス、エレクトロハウス、シンセポップ、チルウェイヴといった要素を横断しながら、Porter Robinson独自の輪郭を作った作品である。2014年という時代の空気、ゲームやアニメへの視線、そしてEDMへの距離感が、そのまま1枚に封じ込められている。
トラックリスト
- A1 Divinity 6:07
- A2 Sad Machine 5:51
- A3 Years Of War 3:53
- B1 Flicker 4:38
- B2 Fresh Static Snow 5:59
- B3 Polygon Dust 3:28
- C1 Hear The Bells 4:45
- C2 Natural Light 2:21
- C3 Lionhearted 4:24
- D1 Sea Of Voices 4:59
- D2 Fellow Feeling 5:49
- D3 Goodbye To A World 5:28