Killing Joke - Outside The Gate (1988)
Killing Joke『Outside The Gate』(1988) レコード紹介
Killing Jokeの『Outside The Gate』は、1988年にUKのEGから出た7作目のスタジオアルバムだ。タイトル初出年のオリジナル盤で、レーベル表記はEG LP 73。ポストパンクの出自を持つバンドが、80年代後半の時点でどこまで音の輪郭を広げていたか、その変化がはっきり出ている1枚である。
Killing Jokeは1979年、ノッティング・ヒルで結成されたバンドで、Jaz Coleman、Geordie Walker、Youth、Paul Fergusonを中心に始動した。初期から持っていた硬質なリズム感と不穏な空気は、その後のポストパンク、インダストリアル、さらにはメタル方面にも影響を残している。特に後年のインダストリアル・メタルの流れを考えると、このバンドの存在感はかなり大きい。
この作品の立ち位置
『Outside The Gate』は、そうしたKilling Jokeの流れの中でもかなり特殊な位置にある。ギター主体の攻撃性を前面に出した初期作とは異なり、シンセサイザーやオーケストラ的なアレンジが目立つ作りで、ニューウェイヴやシンセポップの要素が強く出ている。バンドの音像が大きく外側へ広がった時期の記録として聴ける内容だ。
制作面でも動きが多い。ジャズ・コールマンとジョーディー・ウォーカー自身がプロデュースを担当し、レコーディングはThe Whitehouseで行われた。B4のSteinway GrandはAbbey Road Studio Oneで録音されている。さらに、この作品はConny Plankへのトリビュートとして捧げられている。Conny Plankはクラウトロック以降の重要なプロデューサーで、電子音楽や実験色の強いロックと相性のいい仕事で知られた人物だ。
音の印象
実際に聴くと、Killing Jokeらしい緊張感のあるリズムは残しつつも、前景に出てくるのはギターの鋭さよりも、鍵盤と音の層の厚みだ。曲によってはバンドの持つ冷たい質感が、80年代後半のシンセ・サウンドと接続された形になっていて、初期の荒々しい印象とはかなり違う。ロックバンドのアルバムというより、構成の細かい電子音主体の作品に近い場面もある。
一方で、完全に柔らかくなっているわけではない。Jaz Colemanの歌い方や曲の進行には、Killing Joke特有の圧が残る。整った音作りの中に、どこか落ち着かない感触が入り込む構図だ。派手な展開より、音の配置や質感の変化で聴かせるタイプのアルバムとしてまとまっている。
収録曲とシングル
このアルバムからはシングルとして「My Love of This Land」と「America」が切り出されている。いずれもアルバム全体の方向性を代表する曲で、従来のKilling Jokeを知っていると、かなり違う角度から作られていることがわかる。特に「America」は、政治的な題材を扱うこのバンドらしさを保ちながら、より整ったポップな輪郭を持っている。
制作時の背景
この時期のバンド内部はかなり揺れていた。結成メンバーのPaul Fergusonはセッション開始直後に外れ、ドラムはスタジオミュージシャンに交代した。ベースのPaul Ravenはレコーディングには参加したが、方向性の違いからクレジットから名前を外すよう求めたとされる。アルバムジャケットがJaz ColemanとGeordie Walkerの写真コラージュのみで構成され、プロモーションもこの2人中心で進んだ点にも、その空気が出ている。
こうした事情から、本作は当時の批評面では厳しい見られ方をした。さらにレーベルとの関係もこじれ、アメリカではVirgin America側の判断でリリースされず、お蔵入りになった経緯もある。Killing Jokeにとっては、作品の方向性だけでなく、バンドの体制や契約関係まで含めて大きな転機になったアルバムだ。
同時代の文脈
1988年という時期を考えると、ポストパンクの初期衝動はすでに過去のものになり、バンドごとに電子音やダンス的な要素、あるいはより洗練されたプロダクションへ向かう動きが広がっていた。『Outside The Gate』もその流れの中に置くと理解しやすい。Killing Jokeはその後、より重く硬い方向へも戻っていくが、このアルバムでは別の可能性を試している。
のちのインダストリアル・メタルの流れを思うと、Killing Jokeが持っていた「ロックの編成を保ったまま音の重心をずらす」感覚は、後続にもつながっていく。Geordie Walkerの死去が2023年に伝えられたこともあり、バンドの歩みを振り返るときにこの時期の作品は、単なる異色作ではなく、変化の途中にある記録として見えてくる。
まとめ
『Outside The Gate』は、Killing Jokeの中でもギターの圧よりアレンジの設計が前に出た1988年作だ。ポストパンクの延長線上にありながら、ニューウェイヴ、シンセポップ、電子音の要素を強めたことで、バンドの別の顔が記録されている。初期作の延長として聴くと戸惑いもあるが、80年代末のKilling Jokeがどこへ向かおうとしていたかを示すアルバムとして、はっきりした輪郭を持っている。
トラックリスト
- A1 America 3:48
- A2 My Love Of This Land 4:12
- A3 Stay One Jump Ahead 3:09
- A4 Unto The Ends Of The Earth 6:07
- B1 The Calling 4:45
- B2 Obsession 3:34
- B3 Tiahuanaco 3:26
- B4 Outside The Gate 8:38