Gary Numan - Dance (1981)
Gary Numan『Dance』
シンセポップの先駆者ゲイリー・ニューマン(Gary Numan)が、1981年9月4日に名門Beggars Banquetからリリースしたソロ3作目のスタジオ・アルバム『Dance』。『The Pleasure Principle』(名曲「Cars」収録)や『Telekon』で全英チャート1位を連発し、冷徹なアンドロイド的エレクトロ・ポップの頂点に君臨していた彼が、自らのパブリック・イメージを果敢に解体し、耽美で空間的なアート・ロック/ファンクへと舵を切った歴史的野心作である。
制作背景とミック・カーンら異色のゲスト陣
この劇的なスタイル変革の決定的な契機となったのが、当時デヴィッド・シルヴィアン率いる英国のアート・ロック・バンド「Japan(ジャパン)」への深い傾倒であった。よりしなやかで有機的なリズム・セクションを渇望したニューマンは、Japanの天才ベーシストであるミック・カーン(Mick Karn)をスタジオに招聘した。
ミック・カーンの唯一無二のフレットレス・ベースと妖艶なサックスを中心に、元Japanのギタリストであるロブ・ディーン(Rob Dean)、クイーン(Queen)のドラマーであるロジャー・テイラー(Roger Taylor)、カナダのエキセントリックなエレクトリック・ヴァイオリニストであるナッシュ・ザ・スラッシュ(Nash The Slash)ら、通常のシンセポップでは考えられない異彩を放つミュージシャンが集結した。
サウンド・収録曲の聴きどころ
本作の最大の聴きどころは、ミック・カーンのトレードマークである「ウネウネと波打つ官能的なフレットレス・ベース」とニューマンの冷ややかなシンセサイザーの奇跡的な融合にある。
先行シングルとして全英シングル・チャート第6位のスマッシュヒットを記録した「She's Got Claws」(B1)は、タイトなリズムマシンと無機質なシンセの上を、ミック・カーンのうねるベースラインとサックスが縦横無尽に泳ぎ回るアート・ファンクの最高峰。さらに9分超に及ぶ長尺のオープニング「Slowcar To China」(A1)、ロジャー・テイラーが重厚なドラムを叩き出す「Crash」(B2)や「You Are, You Are」(B6)など、従来の「Cars」的な明快なフックを排し、催眠的で夜の闇を思わせるミニマルなアンビエント/ファンク・グルーヴが全編を覆っている。
時代の文脈と後世への絶大な影響力
1981年のUKでは、ニューロマンティックの台頭とともに、Japanの『Gentlemen Take Polaroids』などに代表される洗練されたアート・ロック/ファンクが批評家筋から高い評価を得ていた。本作『Dance』はその潮流に呼応し、約50分に及ぶ長尺のトータル・アルバムとして構築された。発売当時はポップなヒット曲を求めた従来のファンを戸惑わせたものの、全英アルバムチャート最高3位を記録しシルバー・ディスクを獲得した。
発売から年月を経るにつれ、本作は「ゲイリー・ニューマンの最高傑作のひとつ」として劇的な再評価を勝ち取った。その陰鬱で美しいアンビエント感とベース主導のグルーヴは、ゴシック・ロック、ダークウェイヴ、さらには90年代のトリップホップやナイン・インチ・ネイルズ(トレント・レズナー)をはじめとするインダストリアル/オルタナティヴ・ロック勢に決定的な影響を与えた。近年Beggars Arkiveから拡張版2枚組LPとしてリイシューされた際も、その時代を遥かに先取りしていたサウンドデザインが世界中で改めて絶賛されている。
トラックリスト
- A1 Slowcar To China
- A2 Night Talk
- A3 A Subway Called "You'"
- A4 Cry, The Clock Said
- B1 She's Got Claws
- B2 Crash
- B3 Boys Like Me
- B4 Stories
- B5 My Brothers Time
- B6 You Are, You Are
- B7 Moral
動画プレイリスト
このアーティストについて
Gary Numanは、イングランド・ロンドンのハマースミス出身のアーティストで、Electronic、Rockを軸に、New WaveやSynth-popの文脈で語られることが多...
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