New Trolls - Concerto Grosso Per I New Trolls (1971)
New Trolls『Concerto Grosso Per I New Trolls』
1971年にイタリアで登場したNew Trollsの『Concerto Grosso Per I New Trolls(邦題:コンチェルト・グロッソ)』は、映画『華麗なる暗殺(La Vittima Designata)』のオリジナル・サウンドトラックとして制作され、イタリアン・プログレッシブ・ロックの黎明を告げた歴史的傑作。録音は1971年3月23日から27日にかけて、ローマのOrtophonic StudioとミラノのStudio Fonit-Cetraで行われた。チェトラ(Cetra LPX 8)のオリジナル盤は上開きの見開き変形コーティング・ジャケット仕様で、黒と銀のレーベルにはA面にEd. Nazionale、B面にEd. Usignoloの表記が入る。
制作背景と録音
制作の中心にいたのは、映画音楽家ルイス・バカロフ(のちに映画『イル・ポスティーノ』でアカデミー賞を受賞)と作詞家セルジオ・バルドッティ、そしてNew Trollsの演奏陣だ。もともとはトーマス・ミリアン主演のサスペンス映画『華麗なる暗殺』の劇伴として委嘱された企画だったが、バカロフの古典音楽への造詣とバンドの圧倒的な熱量が結びつき、単なる劇伴を超えた独立したロック・アルバムとして結実した。
A面はバロック音楽の「コンチェルト・グロッソ(合奏協奏曲)」形式を取り入れたオーケストラとの共演組曲。第1楽章「Allegro」はチューニング音と指揮者の合図から幕を開け、華麗なストリングスと歪んだハード・ロック・ギターが激突する。続く第2楽章「Adagio」ではシェイクスピアの戯曲『ハムレット』の一節(「死ぬこと、眠ること、おそらくは夢を見ること…」)を引用した英詩が歌われ、ニコ・ディ・パーロのエモーショナルな「泣きのギター」が炸裂。第4楽章「Shadows」は、1970年9月に夭折したジミ・ヘンドリクスへの追悼として捧げられた。
一方のB面「Nella sala vuota(空虚な部屋の中で)」は、A面のクラシカルな美意識とは対照的な、20分を超える長尺ハード・ロック・インプロヴィゼーション。スタジオでの完全一発録音によるもので、ヴィットリオ・デ・スカルツィのハモンド・オルガンやフルート、ジャンニ・ベッレーノの怒涛のドラム・ソロ、ニコ・ディ・パーロの超高音シャウトが荒々しく交錯し、バンドの生々しいライヴ・アンサンブルの凄みを捉えている。
時代の文脈
1970年代初頭、ザ・ナイスやディープ・パープルなどイギリス勢が試行していた「ロックとクラシック・オーケストラの融合」に対し、本作はバロック音楽の発祥地イタリアならではの血肉化されたクラシックの気品をもって正面から回答した。ヴィヴァルディやバッハを思わせる流麗な旋律美と、当時のアングラ・ロックが持っていた獰猛な熱量を完璧なバランスで同居させ、イタリアン・プログレッシブ・ロックの潮流を決定づける先駆的狼煙となった。
後世への影響と評価
イタリア国内で80万枚以上を売り上げる異例のメガヒットを記録し、その後のPFMやバンコ、オザンナ、レ・オルメなどの台頭を直接誘発する起爆剤となった。この成功を機に、ルイス・バカロフはオザンナの『Milano Calibro 9』やイル・ロヴェッショ・デッラ・メダーリャの『Contaminazione』など、ロックとオーケストラを掛け合わせた名作を連続して手掛けることになる。New Trolls自身も後年の『Concerto Grosso Nº2』(1976年)へとこの形式を展開させた。映画音楽、ロック、クラシックが高次元で結晶した、70年代ロック史上に燦然と輝く金字塔である。
トラックリスト
- Concerto Grosso Per I New Trolls
- B Nella Sala Vuota, Improvvisazioni Dei New Trolls Registrate In Diretta 20:30