Peter Jacques Band - Fire Night Dance (1979)
Peter Jacques Band 1979

Peter Jacques Band - Fire Night Dance (1979)

Electronic Disco

Peter Jacques Band『Fire Night Dance』

ピーター・ジャック・バンド(Peter Jacques Band)の『Fire Night Dance』は、フランス領グアドループ出身の実業家・DJ・プロデューサーであるジャック・フレッド・ペトリュス(Jacques Fred Petrus)と、イタリア・ボローニャ音楽院出身のピアニスト・作編曲家・プロデューサーであるマウロ・マラヴァーシ(Mauro Malavasi)が結成したイタリア発のディスコ・プロジェクトによるデビュー・アルバム。オリジナルは1978年末にイタリアのGoody Music(規格番号:GDY 002)から発売され、翌1979年には米国の名門ディスコ・レーベルPrelude Records(規格番号:PRL 12164)や西ドイツのAriola(規格番号:200 421)など世界各国で配給された。

制作背景と録音

バンド名の「Peter Jacques」は実在するメンバーの名前ではなく、仕掛け人であるジャック・フレッド・ペトリュス自身の名前をもじった言葉遊びから名付けられたものだ。パリのクラブ「Club Saint-Hilaire」やミラノのクラブでDJとして活動していたペトリュスは、ボローニャで若き音楽学生だったマラヴァーシと出会い、1975年ごろに制作会社Goody Music Productions(GMP)を設立、1978年にはボローニャに録音スタジオとGoody Music Recordsを立ち上げた。二人が最初に送り出したスタジオ・プロジェクト「Macho(マッチョ)」によるスペンサー・デイヴィス・グループのカバー「I'm a Man」(約18分に及ぶ長尺ディスコ・バージョン)が1978年10月に米ビルボードのディスコ・チャートで1位を獲得する大成功を収めたのに続き、その勢いに乗って第2弾プロジェクトとして始動したのがピーター・ジャック・バンドであった。

ベーシックなリズム・トラックとインストゥルメンタルの録音はボローニャのFonoprint Studios(エンジニア:Maurizio Biancani)を中心に進められ、追加セッションはパリのStudio Milan(エンジニア:Jean-Paul Malek)およびミラノのC.G.D. Studio(エンジニア:Pino Vicari)で行われた。演奏には、のちにChangeやB.B. & Q. Bandも支えることになるイタリアの精鋭スタジオ・ミュージシャンが集結しており、ダヴィデ・ロマーニ(Davide Romani:ベース)、レレ・メロッティ(Gabriele “Lele” Melotti:ドラムス)、ジョルジーノ・ファッブリ(Fabbri Giorgino:ギター)、ルディ・トレヴィージ(Rudy Trevisi:サックス、シンセサイザー、クラヴィネット、エレクトリック・ピアノ、フルート、パーカッション、編曲補佐)、サンドロ・コミーニ(Sandro Comini:トロンボーン)、ジョージ・アゲド(George Aghedo:コンガ、パーカッション)らが参加し、マラヴァーシ自身もシンセサイザー、クラヴィネット、エレクトリック・ピアノ、フルート、トランペット、編曲を担当、ストリングスはThe Goody Music String Ensembleが務めている。

さらに、本場アメリカのディスコ/ソウル市場に通用する本格的なサウンドを追求するため、元Black Ivoryのフロントマンでニューヨーク・ディスコ/ブギー界を代表するシンガーのリロイ・バージェス(Leroy Burgess)がリード・ヴォーカルに起用され、バック・コーラスにはHilda Harris、Maeretha Stewart、Arthur Simms、Ann Calvert、Joe Scott、Sammy Gaha、Claudia Polley、Lavelle Duggan、Gloria Turnerら実力派シンガーが加わった(なお、ヨーロッパでのテレビ出演やジャケット等のヴィジュアル面ではJacob Wheeler、Carin Mc Donald、Von Gretchen Shepardらパフォーマー/モデルがフロントを務めた)。最終的なミキシングはフィリー・ソウルの拠点として知られるニューヨークのSigma Sound Studiosでカーマイン・ルビーノ(Carmine Rubino、アシスタント:Jim “Doc” Dougherty)が手がけ、マスタリングはニューヨークのSterling Soundでホセ・ロドリゲス(José Rodriguez)が仕上げている。

収録曲とアメリカ向けの作り

収録曲はA1「Walking On Music」(8:16)、A2「Devil's Run」(8:30)、B1「Fire Night Dance」(8:40)、B2「Fly With The Wind」(9:03)の全4曲。いずれも8分から9分台の長尺で、12インチ・シングルのクラブ・プレイを見据えた構成となっている。楽曲はすべてマラヴァーシとアラン・テイラー(Alan Taylor)の共作で、タイトル曲「Fire Night Dance」のみペトリュスも共作者に名を連ねている。なかでもオープニングを飾る「Walking On Music」とタイトル曲「Fire Night Dance」は、ダヴィデ・ロマーニのうねるベースとレレ・メロッティの疾走感あふれるフォー・オン・ザ・フロアのドラムス、マラヴァーシとトレヴィージによる流麗なピアノ/シンセサイザーとブラス&ストリングス、そしてリロイ・バージェスの熱量高いソウルフルなヴォーカルが一体となったディスコ・クラシックとして高く評価されている。

時代の文脈と後世への影響

本作は、1980年代にヨーロッパで発展するシンセサイザー主導のいわゆる「イタロ・ディスコ(Italo disco)」とは一線を画し、アメリカの伝統的なフィリー・ソウル(MFSBやSalsoul Orchestraなど)やニューヨーク・ディスコの洗練された生楽器アンサンブルに、ヨーロッパならではの緻密なエレクトロニック・アレンジを融合させた「イタリア製USスタイル・ディスコ/ポスト・ディスコ」の先駆的作品として位置づけられる。

1979年、本作は米国のクラブ・シーンで大きな反響を呼び、収録された全4トラックが一括して米ビルボードのディスコ・チャート(Billboard Disco Action / Hot Dance Club Play)で最高6位を記録するヒットとなった(なかでも「Walking On Music」はバンド最大の代表曲として欧米のフロアで長く愛され続けている)。このアメリカ市場での成功を足がかりに、ペトリュスは同年ニューヨークにオフィス「Little Macho Music」を設立。本作と同じボローニャの音楽家チーム(マラヴァーシ、ロマーニ、トレヴィージら)を核として、翌1980年にはルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)とジョセリン・ブラウン(Jocelyn Brown)を擁するChange(チェンジ)のデビュー作『The Glow of Love』(全米ダンス・チャート9週連続1位の「A Lover's Holiday」を収録し、グラミー賞7部門にノミネート)を、1981年にはThe B.B. & Q. Bandを世に送り出すことになり、本作はその黄金期の原点となった重要作である。

トラックリスト

  1. A1 Walking On Music 8:16
  2. A2 Devil's Run 8:30
  3. B1 Fire Night Dance 8:40
  4. B2 Fly With The Wind 9:03

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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