Rikard Sjöblom's Gungfly - Friendship (2018)
Rikard Sjöblom's Gungfly『Friendship』について
『Friendship』は、スウェーデンのマルチ・インストゥルメンタリスト、Rikard Sjöblomが「Rikard Sjöblom's Gungfly」名義で2018年に発表したアルバムである。プログレッシヴ・ロックを軸にしながら、ピアノを前面に出した曲、重心の低いパート、長尺の展開を行き来する内容で、彼の作曲家としての持ち味がまとまった1枚になっている。SjöblomはBeardfishのヴォーカル兼キーボード奏者として知られ、のちにはBig Big Trainでも活動してきた人物で、この作品はその流れの中でも、ソロ性の強いプロジェクトとして位置づけられている。
作品の輪郭
アルバム全体を貫くのは、失われた幼なじみとの友情というテーマである。故郷の村へ戻ったときの記憶、子どもの頃に作ったツリーハウスなど、具体的な情景が曲の中に置かれている。たとえば「A Treehouse In A Glade」では、そうしたノスタルジックなモチーフがそのままタイトルになっていて、内容の方向性がわかりやすい。感情を大きく誇張するよりも、記憶の断片を積み上げていく作りで、歌詞と演奏が同じ温度で進んでいく印象が残る。
サウンド面では、1970年代のプログレッシヴ・ロックからの影響が強く出ている。オルガンやピアノを軸にした導入から、ギターが前に出る場面、テンポを落として展開を広げる場面まで、曲ごとに役割がはっきりしている。演奏の切り替えが多く、短いフレーズをつなぐだけでなく、ひとつのモチーフを長く育てる構成が目立つ。中心に置かれている13分超のタイトル曲も、その流れを代表する存在である。
演奏と制作
クレジットを見ると、Sjöblom自身がヴォーカル、ギター、キーボード、ベースを担当し、大半の楽器をひとりでこなしている。ドラムはPetter Diamant、一部の曲のベースやダブルベースはRasmus Diamant、さらにDavid Zackrissonが2曲でギターを加えている。基本は個人作業に近いが、必要なところには外部の演奏が入っており、ひとりで組み立てた輪郭を崩さずに音の厚みを足している。
この作品で特に目立つのは、長尺曲の組み立て方である。タイトル曲は、静かな始まりから徐々に楽器が増え、リフとメロディが入れ替わりながら進む。ひとつの場面に留まりすぎず、次の展開へ移るまでの流れが自然で、アルバムの中心として機能している。「If You Fall, Part 2」は前作『On Her Journey To The Sun』収録曲の続編で、Keith Emersonを思わせるオルガンを土台に、より速く、より重く、より長く発展させた形になっている。前作を知ると、Sjöblomが同じ素材を別角度から組み直していることが見えてくる。
収録曲と盤の内容
このドイツ盤LPはInside Out Musicのウェブショップ限定で、2枚組LPに同内容のCDが付属する仕様である。D面にはボーナス・トラックとして「Slow Dancer」「Past Generation」、さらに「Friendship - Utopian Radio Edit」が収められている。オリジナルのアルバム本編に加えて、補助的な曲がまとまっている形で、LPとしての構成に余白を持たせている。
アルバム本編では、曲ごとの性格がかなりはっきりしている。「A Treehouse In A Glade」のように記憶の風景を描く曲もあれば、長大な組曲的展開を持つ曲もあり、ピアノ主導の場面からヘヴィなバンド・サウンドへ移る流れもある。派手さを前に出すより、曲の中で役割を変えながら進めるタイプの構成で、Beardfish時代から続く緻密なアレンジ感覚がそのまま反映されている。
同時代の文脈
2010年代後半のプログレッシヴ・ロックでは、70年代の語法を参照しながら、現代的な録音でまとめる作品が多かったが、『Friendship』もその流れの中にある。特に、オルガン主体の厚い音像や、長尺曲の中での場面転換は、クラシックなプログレの文法に近い。一方で、Sjöblomの歌メロや曲の運びには、単なる復古ではない整理のされ方がある。Beardfishで培った構成力と、Big Big Trainで見せた叙情的な側面が、ひとつのソロ作品に集まっている印象である。
専門メディアでの評価も高く、The Prog Reportは2018年の中でも注目すべき作品として扱い、The Progressive AspectもSjöblomを現代プログレの中で重要な書き手・演奏者として評価している。こうした反応を見ると、『Friendship』は単なるソロ名義作というより、彼の作曲家としての現在地を示すアルバムとして受け止められている。
まとめ
『Friendship』は、Rikard Sjöblomが自分の楽曲作りをかなり明確に提示した作品である。友情の記憶という題材、1970年代プログレを踏まえた構成、ひとりで多くの楽器を担う制作体制、そのどれもが表に出ている。BeardfishやBig Big Trainで知られる前提があると耳に入りやすいが、このアルバム単体でも、長尺曲の設計とメロディの置き方にSjöblomらしさがよく出ている。2018年作としての位置づけもはっきりした、プログレッシヴ・ロックの1枚である。
トラックリスト
- A1 Ghost of Vanity 5:56
- A2 Friendship 13:31
- B1 They Fade 4:56
- B2 A Treehouse In a Glade 6:41
- B3 Stone Cold 6:08
- C1 If You Fall, Part 2 12:42
- C2 Crown of Leaves 6:43
- Bonus Tracks
- D1 Slow Dancer 4:56
- D2 Past Generation 4:26
- D3 Friendship - Utopian Radio Edit 6:23
- CD1 Ghost of Vanity 5:59
- CD2 Friendship 13:36
- CD3 They Fade 4:51
- CD4 A Treehouse In A Glade 6:47
- CD5 Stone Cold 6:08
- CD6 If You Fall, Part 2 12:45
- CD7 Crown Of Leaves 6:50
- CD8 Slow Dancer 4:59
- CD9 Past Generation 4:26
- CD10 Friendship - Utopian Radio Edit 6:30