Beardfish - +4626 - Comfortzone (2015)
Beardfish 2015

Beardfish - +4626 - Comfortzone (2015)

Rock Prog Rock

Beardfish『+4626 - Comfortzone』について

『+4626 - Comfortzone』は、スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・バンド、Beardfishが2015年にInside Out Musicから発表した8作目のスタジオ・アルバム。イェヴレ出身の彼らにとって、2016年の解散前に残した最後のアルバムでもある。バンド名を耳にすると、まず思い出されるのは、70年代由来のロック感覚と、現代的な構成力を同居させた作風だが、本作でもその持ち味ははっきりしている。

この欧州盤は、InsideOut MusicのIOMLP 413。180グラムの重量盤2枚組LPで、ゲートフォールド仕様、さらにアルバム全編を収めたCDも付属する。ドイツ製のプレスで、アナログとCDをまとめて楽しめる形になっている。

タイトルに込められた意味

タイトルの「+4626」は、Beardfishの故郷イェヴレに電話をかける際の番号を指す。スウェーデンの国番号46と、イェヴレの市外局番26をつなげたものだ。ツアー先から地元へ連絡を入れるときの番号、という説明がそのまま作品の距離感につながっている。外へ出ていくことと、故郷へ引き戻される感覚。その往復が、アルバム全体の芯にある。

テーマは「成長」と「小さな町の閉塞感」

中心人物のRikard Sjöblomは、制作の早い段階から本作が「成長すること」を大きく扱うアルバムになると感じていたという。彼らが育ったバルト海沿いの小さな町イェヴレには、陰鬱さや閉塞感が反映されている。そこには「挑戦しても無駄だ」という、地方都市にありがちな敗北主義も滲む。アルバムは、そうした凡庸な生き方や、人をそこに縛りつける力から抜け出そうとする姿を、曲ごとの物語として描いていく。

単一のコンセプトを一直線に追うというより、複数の視点で同じテーマを照らす作り。聴き進めると、個人的な話と社会的な空気が行き来する構成になっている。

曲ごとの見どころ

収録曲の中でも印象に残るのが「Ode To The Rock 'N' Roller」。自作曲を演奏するより、カバー・バンドやトリビュート・バンドのほうが稼げると気づいた瞬間の動揺を歌った内容で、ミュージシャンの現実を少し皮肉っぽく切り取っている。華やかさよりも、仕事としての音楽に目を向けた曲。

一方で、15分を超える「If We Must Be Apart (A Love Story Continued)」は、壊れた恋愛を壮大な心理劇として描く長編。Beardfishらしい展開の多さを持ちながら、単なる技巧の見せ場では終わらず、感情の揺れを軸にした組み立てになっている。大作志向のプログレが好きな人の耳を引くのは、この曲のような長尺曲だろう。

そしてアルバムは3部構成の「The One Inside」で区切られる。組曲的な扱いで、作品全体の流れに節目を与えている。

サウンドと制作

音像は、1970〜80年代ロックの影響を感じさせるレトロな質感が前に出る。ベースとキーボードの動きが目立ち、うねるようなリフとメロディが続く作り。ギターが前面に出る場面でも、全体の推進力はリズム隊と鍵盤が支えている。プログレッシヴ・ロックの文脈に置きながらも、ハードロックやクラシック・ロックの手触りを残しているのが特徴的だ。

ミックスはギタリストのDavid Zackrissonが担当している。バンドにとって新しい試みだったようで、演奏する側の感覚がそのまま音の整理に反映されている印象がある。楽器の鳴りが混み合っても、各パートの役割は追いやすい。

Beardfishの中での位置づけ

Beardfishは、Pain of Salvation、Spock's Beard、Flying Colorsのオープニング・アクトも務めてきたバンドで、同世代のプログレ勢の中でも、演奏力と楽曲構成の両方で存在感を示してきた。本作は、その積み上げの先にある到達点のひとつとして捉えやすい。2016年の解散前に残された最後のアルバムという点でも、バンドの活動を締めくくる意味合いが強い。

その後、Rikard Sjöblomはソロ・プロジェクトのGungflyやBig Big Trainで活動を続け、Beardfishも再結成に至る。そうした流れを踏まえると、『+4626 - Comfortzone』は、ひとつの終点であると同時に、次の活動へつながる節目の作品として見えてくる。

総括

『+4626 - Comfortzone』は、故郷の空気、成長への違和感、凡庸さから抜け出そうとする意識を、長尺曲と緻密なアレンジでまとめたアルバム。派手な一発より、曲の展開や言葉の運びで印象を残すタイプの作品で、プログレッシヴ・ロックの中でも、物語性とバンド演奏の両方が前に出る内容になっている。2015年のBeardfishを知るうえで、重要な一枚。

トラックリスト

  1. A1 The One Inside: Part 1 (Noise In The Background)
  2. A2 Hold On
  3. A3 Comfort Zone
  4. B1 Can You See Me Now?
  5. B2 King
  6. B3 The One Inside: Part 2 (My Companion Through Life)
  7. B4 Daughter / Whore
  8. C If We Must Be Apart (A Love Story Continued)
  9. D1 Ode To The Rock 'N' Roller
  10. D2 The One Inside: Part 3 (Relief)
  11. CD1 The One Inside: Part 1 (Noise In The Background)
  12. CD2 Hold On
  13. CD3 Comfort Zone
  14. CD4 Can You See Me Now?
  15. CD5 King
  16. CD6 The One Inside: Part 2 (My Companion Through Life)
  17. CD7 Daughter / Whore
  18. CD8 If We Must Be Apart (A Love Story Continued)
  19. CD9 Ode To The Rock 'N' Roller
  20. CD10 The One Inside: Part 3 (Relief)

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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