Flying Colors - Third Degree (2019)
Flying Colors 2019

Flying Colors - Third Degree (2019)

Rock Prog Rock

Flying Colors『Third Degree』について

Flying Colorsは、アメリカのプログレッシヴ・ロック界を代表するプレイヤーたちが集まったスーパーグループで、2011年に結成された。ケイシー・マクファーソン、ニール・モーズ、スティーヴ・モーズ、デイヴ・ラルー、マイク・ポートノイという5人編成で、各自が別の現場で確かな実績を持つ。そうした顔ぶれだけを見ると技巧寄りの作品を想像しやすいが、実際のこのバンドは演奏の密度とポップな歌心を同じテーブルに置いているところが特徴になる。

『Third Degree』はその3作目のスタジオ・アルバムで、2019年10月4日にMusic Theories Recordingsからリリースされた。ヨーロッパ盤は180g重量盤のブルー・ヴァイナル2LP仕様で、ゲートフォールド・スリーブとインサート付き。ジャケット周りも含めて、バンドのスケール感をそのまま形にしたような作りになっている。

作品の位置づけ

Flying Colorsは、デビュー作『Flying Colors』、続く『Second Nature』を経て、3作目でさらにバンドとしてのまとまりを強めた印象がある。『Third Degree』では、前2作で存在感の大きかったニール・モーズやマイク・ポートノイの色合いがやや整理され、ケイシー・マクファーソンが中心に立つ構図が目立つ。プログレッシヴ・ロックの複雑さを保ちながら、楽曲の輪郭はかなり明瞭で、歌ものとしての聴きやすさが前に出ている。

制作は2016年12月にスティーヴ・モーズのフロリダのスタジオで始まり、そこから7曲が形になった。その後、2018年12月にナッシュビルのニール・モーズのスタジオへ集まり、さらに3曲を追加。ポートノイがその時期にドラムを録音している。プロデュースはバンド自身、エグゼクティヴ・プロデューサーはビル・エヴァンス、ミックスとマスタリングはリッチ・マウザーが担当している。

内容と聴きどころ

曲ごとの表情がはっきりしているのが、このアルバムのわかりやすいところだ。たとえば「The Loss Inside」は、アルバム中で唯一ドロップDチューニングを使った曲で、マクファーソンのソウルフルな歌唱が前面に出る。「Love Letter」はビーチ・ボーイズ、ビートルズ、ジェリーフィッシュ、ELO、シルヴァーチェアなどの流れを思わせる作りで、マクファーソン、ニール・モーズ、ポートノイが順にリードを取る構成になっている。

「You Are Not Alone」は、マクファーソンの故郷オースティンを襲ったハリケーン・ハーヴィーがきっかけになった曲。こうした背景があるためか、単なる技巧披露ではなく、歌詞とメロディの役割がかなり大きい。実際に聴くと、リズム隊の推進力が強い場面でも、曲の中心はあくまで歌とフックに置かれている印象が残る。

プログレとポップの接点

Flying Colorsの持ち味は、プログレッシヴ・ロックの構築感と、ポップ・ロックの明快さの両立にある。『Third Degree』でもその方向性は変わらないが、過去作よりもバンド全体で曲を組み立てている感触が強い。ニール・モーズやマイク・ポートノイが前に出る場面を期待して聴くと、むしろマクファーソンの歌とソングライティングの比重を感じるはずだ。

同時代のプログレ系スーパーグループの中でも、このバンドは演奏の難度を誇示するより、楽曲の流れをきちんと保つことに重心がある。Deep Purple、Dream Theater、Dixie Dregs、Spock’s Beard、Transatlanticといった参加メンバーの経歴を知っていると、もっと複雑な方向を想像しやすいが、実際にはメロディの整理されたロック・アルバムとしてまとまっている。

受け止められ方

本作はスイス11位、ドイツ16位、スコットランド28位を記録している。Loudwireが2019年のベスト・ロック・アルバム50枚のひとつに選んだこともあり、リリース当時の反応は一定の広がりを持っていた。Flying Colorsにとっては、個々の名手が集まった企画色よりも、継続したバンドとしての輪郭を見せた作品として記憶される内容になっている。

2019年盤のヨーロッパ・リリースは、ブルー・ヴァイナル2LPの装丁も含めて、作品の完成度をそのままパッケージしたもの。『Third Degree』は、Flying Colorsがプログレッシヴ・ロックの文脈にいながら、曲の芯を歌に置き続けた2019年の到達点として見ておきたい一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 The Loss Inside 5:50
  2. A2 More 7:10
  3. A3 Cadence 7:40
  4. B1 Guardian 7:11
  5. B2 Last Train Home 10:32
  6. C1 Geronimo 5:20
  7. C2 You Are Not Alone 6:21
  8. C3 Love Letter 5:10
  9. D1 Crawl 11:14

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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