Roberta Flack & Donny Hathaway - Roberta Flack & Donny Hathaway (1972)
Roberta Flack 1972

Roberta Flack & Donny Hathaway - Roberta Flack & Donny Hathaway (1972)

Funk / Soul Soul Rhythm & Blues

Roberta Flack & Donny Hathaway / Roberta Flack & Donny Hathaway

1972年にアトランティックから出た、ロバータ・フラックとドニー・ハサウェイの共演作。タイトルそのままの内容で、当時それぞれが持っていた歌の強さと、デュオならではの呼吸の合い方が前面に出た作品である。ソウル、R&B、ファンクの流れの中に置くと、派手な演出で押すタイプではなく、歌そのものの説得力で聴かせるアルバムとして位置づけやすい。

共演に至る背景

ロバータ・フラックとドニー・ハサウェイは、どちらもハワード大学に関わりのある人物として知られ、作品以前から接点を重ねていた。本作の企画はジェリー・ウェクスラーの発案とされ、当時すでにソロで評価を得ていたハサウェイと、批評面では高く見られながら商業面で苦戦していたフラックを組み合わせる意図があった。単なる話題作りではなく、両者の声質と解釈の相性を軸にした企画だった点が重要である。

録音は1971年3月から10月にかけて、ニューヨークのアトランティック・レコーディング・スタジオとリージェント・サウンド・スタジオで行われた。プロデュースはジョエル・ドーンとアリフ・マーディン。アトランティックらしい堅実な制作体制の中で、歌を中心に据えた仕上がりになっている。

アルバムの聴きどころ

この作品の核は、二人の歌声が互いを押し出すのではなく、譲り合いながら前に進むところにある。ロバータ・フラックの歌は、音程を大きく揺らさずに言葉を置いていくタイプで、ドニー・ハサウェイはそこに少し熱を足す。結果として、デュエットでありながら過剰な掛け合いにはならず、曲の輪郭がはっきり残る。

実際に聴くと、ボーカルの重なり方がかなり細かく設計されていることがわかる。片方が前に出る場面と、二人が同じ高さで並ぶ場面の切り替えが自然で、コーラスの厚みも必要以上に盛られていない。アレンジはソウル寄りだが、歌を圧迫しないバランスでまとめられている。

代表曲「Where Is the Love」

先行シングルの「Where Is the Love」は、このアルバムを代表する一曲である。ロバータ・フラックが「The First Time Ever I Saw Your Face」でソロの大きな成功を得た直後という時期でもあり、勢いをそのまま受けた形で広く届いた。ビルボードHot 100で5位、イージー・リスニング・チャートとR&Bチャートでは1位を記録し、1972年9月にはゴールド認定も受けている。翌1973年のグラミー賞では「Best Pop Vocal Performance by a Duo or Group with Vocals」を受賞した。

この曲の強みは、メロディのわかりやすさだけではなく、二人の声の役割分担にある。フラックの落ち着いた進行に、ハサウェイの温度感が重なり、感情を前に押し出しすぎずに届く。70年代前半のソウルに多い、歌の説得力で引っ張るタイプのヒット曲として印象に残る。

1972年という時代の中で

1972年のソウル/R&Bは、シンガーの個性が前に出る作品が多く、同時にアレンジや録音の質感にも耳が向く時期だった。このアルバムもその流れの中にある。派手なサイケデリック化や大編成のショーアップより、歌、フレーズ、間合いを大事にする作りで、同時代のアトランティック系ソウルの中でもかなり端正な部類に入る。

ロバータ・フラックにとっては、ソロで築いた評価をそのまま別の形に広げた一枚であり、ドニー・ハサウェイにとっては、すでに持っていた存在感をデュオという形で再確認させる作品でもある。後の二人の共演作や、ソウル歌手同士のデュオ作品を考えるときにも、基準点のように扱われることが多い。

USオリジナル盤について

今回の盤は1972年のUSオリジナル。アトランティックのSD 7216で、ゲートフォールド仕様。レーベルには「DIST. BY ATLANTIC RECORDING CORPORATION, 1841 BROADWAY, NEW YORK, NEW YORK 10023」のリムテキストが入るタイプで、PRC Pressing、マトリクス末尾に「RI」が付く盤として案内されている。アトランティックの1970年代前半らしいUS盤の作りで、のちの再発盤とはレーベル表記の細部が異なる。

ロバータ・フラックとドニー・ハサウェイの共演は、単に有名歌手同士を並べた記念盤ではなく、歌の質感そのものを聴かせるための作品として成立している。曲数以上に内容の密度があり、特に「Where Is the Love」を中心に、二人の声がどう交わるかを追う楽しさがあるアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 I (Who Have Nothing) 5:00
  2. A2 You've Got A Friend 3:24
  3. A3 Baby I Love You 3:24
  4. A4 Be Real Black For Me 3:30
  5. A5 You've Lost That Loving Feeling 6:36
  6. B1 For All We Know 3:38
  7. B2 Where Is The Love 2:43
  8. B3 When Love Has Grown 3:31
  9. B4 Come Ye Disconsolate 4:50
  10. B5 Mood 7:00

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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