Roger - The Many Facets Of Roger (1981)
Roger『The Many Facets Of Roger』
オハイオ州デイトン出身のファンク・バンド「ザップ(Zapp)」を率い、「More Bounce to the Ounce」の大ヒットでファンク界に一大旋風を巻き起こしたロジャー・トラウトマン(Roger Troutman)が、1981年に「Roger」名義で発表した初のソロ・アルバム『The Many Facets Of Roger』。デトロイトのユナイテッド・サウンド・システムズおよびスーパー・ディスクにて録音され、ロジャーの唯一無二の音楽性が爆発したエレクトロ・ファンクの金字塔である。
制作背景・エピソード
本作は当初、ザップのメジャー・デビューの恩人であるジョージ・クリントンのレーベル「Uncle Jam(CBS配給)」からのリリースが予定されていた。しかし、ワーナー・ブラザースが好条件で直契約を結んだため、クリントンとワーナー/トラウトマンの間で法廷闘争へと発展する因縁の背景を持つ。
レコーディングには、ラリー、レスター、テリー・“ザップ”らトラウトマン兄弟も全面参加。強靭無比なザップのバンド・アンサンブルを土台としながらも、シンガー、ソングライター、プロデューサー、そしてマルチ奏者としてのロジャー個人の才気を前面に押し出した作品として結実した。
時代の文脈
1980年代初頭は、シンセサイザーやドラムマシンの普及によりファンクの音像が劇的な進化を遂げていた時代であった。その中でロジャーが確立したカスタム・トーク・ボックス(トーキング・モジュレーター)の歌唱と、ミニモーグによる唸るような極太ベースラインは、Pファンク直系のヘヴィ・グルーヴを80年代型のエレクトロ・ファンクへと見事に刷新した。本作はその決定打となり、ブラック・ミュージックにおけるエレクトロニック・サウンドの新たなスタンダードを確立した。
サウンド・聴きどころ
アルバムの冒頭を飾る「I Heard It Through The Grapevine」は、マーヴィン・ゲイのモータウン・クラシックを10分超の長尺エレクトロ・ファンクへと大胆に解体・再構築したカヴァー。トーク・ボックスの情感豊かな表現力が極まった本作最大の聴きどころである。
さらに、粘りつくようなヘヴィ・グルーヴがフロアを揺らす「So Ruff, So Tuff」や、陽気なパーティー・ファンク「Do It Roger」、メロウなインストゥルメンタル「A Chunk Of Sugar」、そしてロジャーのルーツであるブルース・ギターへの愛が溢れる「Blue (A Tribute To The Blues)」など、タイトル(『The Many Facets Of Roger=ロジャーの多彩な側面』)が示す通り、多彩な音楽的魅力が惜しみなく詰め込まれている。
後世への影響・評価
米ビルボードのソウル/R&Bアルバム・チャートで見事1位を獲得し、総合アルバム・チャートでも26位まで上昇、ゴールド・ディスクに認定された。シングル「I Heard It Through The Grapevine」は米R&Bチャート1位の大ヒットを記録し、「So Ruff, So Tuff」(同17位)、「Do It Roger」(同24位)もチャートを賑わせた。
本作の楽曲群は、90年代以降のヒップホップ、とりわけ西海岸のGファンクに決定的な影響を与えた。「So Ruff, So Tuff」はアイス・キューブ、スヌープ・ドッグ、E-40らに幾度もサンプリングされたストリート・アンセムとなり、「A Chunk Of Sugar」はデトロイトの鬼才プロデューサーJ・ディラ(J Dilla)がスラム・ヴィレッジの「Players」でサンプリングしたことで知られる。ロジャーのトーク・ボックスはGファンクの象徴的サウンドとなり、のちに2パック&ドクター・ドレーの歴史的名曲「California Love」(1995年)でのロジャー本人客演へと直結した。
トラックリスト
- A1 I Heard It Through The Grapevine 10:45
- A2 So Ruff, So Tuff 4:49
- A3 A Chunk Of Sugar 5:28
- B1 Do It Roger 8:11
- B2 Maxx Axe 8:16
- B3 Blue (A Tribute To The Blues) 3:24
動画プレイリスト
このアーティストについて
Roger Troutman(ロジャー・トラウトマン、1951年11月29日 - 1999年4月25日)は、アメリカ・オハイオ州ハミルトン出身の伝説的ファンク・ミュージシャ...
Roger Troutman のプロフィール・作品一覧