Romanthony - Romanworld (1997)
Romanthony 1997

Romanthony - Romanworld (1997)

Electronic Blues Funk / Soul Electric Blues Deep House Contemporary R&B House Garage House

Romanthony『Romanworld』――ハウスの枠をはみ出す1997年の長編作

Romanthonyの『Romanworld』は、1997年にUKのAzuli Recordsから出た作品で、同年のオリジナル盤として位置づけられる一枚だ。アーティスト名義はRomanthony、本名はRomanthony Prince、ニュージャージー出身のハウス・プロデューサーとして知られる。歌声がPrinceを思わせることで語られることが多く、この作品でもその特徴ははっきり出ている。単なるクラブ向けの機能音楽ではなく、歌、語り、スキット、曲間のつながりまで含めてひとつの作品として組み立てられている点が、このアルバムの大きな輪郭になっている。

作品の性格

『Romanworld』は、ハウス、ガラージ・ハウス、ディープ・ハウスを軸にしながら、エレクトリック・ブルースやコンテンポラリーR&Bの要素も見えるアルバムだ。AllMusicの評価でも、後から企画的にまとまったコンセプト・アルバムに近いものとして捉えられていて、全体を通して聴くと長尺の組曲のような構成になっているとされる。実際、冒頭の店内アナウンスを思わせるスキットや、ビートを外したジャズ寄りの表題曲、ブルース色の強い曲など、ハウスの定型だけでは収まらない場面が続く。

このアルバムの面白さは、ダンスフロア向けの即効性よりも、Romanthony自身の声と発想を前面に出しているところにある。曲が単独で完結するというより、いくつかの曲がフェードでつながりながら流れていく作りで、作品全体の流れを重視した構成になっている。スリーブのトラック表記が正確ではなく、ラベル面にはトラックリストも載っていないため、パッケージ情報よりも実際の再生体験のほうが作品理解に近いタイプの盤でもある。

Romanthonyという作家の位置づけ

Romanthonyは1991年にBlack Male Recordsを立ち上げ、その後も別名義を使いながら作品を発表してきた。1995年にはWorld Recordsも設立しており、『Romanworld』はそうした活動の流れの中にある、ソロ名義の代表的な長編作として見てよさそうだ。2000年には別の作品でボーカルと共作にも参加していて、制作と歌の両面で存在感を示していた。2000年代のハウスやUKガラージの文脈で、プロデューサー兼シンガーという立ち位置を強く印象づけた人物のひとりだろう。

同時代の比較対象としては、やはりPrinceとの連想がまず浮かぶ。声質だけでなく、ファンク、R&B、ハウスをまたぐ姿勢にも通じるものがある。さらに、ハウスの枠内で語るなら、クラブ仕様の機能性を保ちながら、曲ごとの展開や声のニュアンスで個性を立てるタイプの作家として見えてくる。ロンドンのAzuli Recordsは1990年代のハウスやUKガラージを多く扱ったレーベルで、『Romanworld』もその流れの中で出た一枚だ。Azuliは当時、ロンドンのハウス・シーンと密接につながるレーベルとして機能していた。

聴きどころとして見える点

この作品を通して聴くと、まず耳に残るのはRomanthonyの声の存在感だ。高揚感だけで押し切るのではなく、話しかけるようなパートや、少し崩した歌い回しが曲の輪郭を作っている。ビートはハウスの基本を保ちながらも、ところどころでリズムの置き方がずれたり、ブルースっぽいコード感が入ったりして、ひとつのジャンルに固定されない。アルバムとしては長さがあるが、そのぶん、曲ごとの表情の差が見えやすい構成でもある。

ヒット曲として広く知られる1曲を前面に押し出すタイプではなく、アルバム全体で世界観を示す作りだ。大きなチャート実績を語るより、クラブ・ミュージックの中で、歌うハウスの可能性を広げた作品として見るほうが自然だと思う。1997年という時期に、ハウス、ガラージ、R&B、ブルースの要素を一枚に収めたこと自体が、この作品の性格をよく表している。

まとめ

『Romanworld』は、Romanthonyの個性をそのままアルバムにしたような作品だ。曲単位の強さだけでなく、つながり方やスキットの挿入まで含めて、ひとつの“世界”として組まれている。ハウスのフォーマットに収まりきらない歌と構成、そしてニュージャージー出身のシンガー/プロデューサーとしての立ち位置が、1997年時点の空気とともに刻まれている。クラブの現場とアルバム作品のあいだを行き来するような、少し変わった手触りの一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Desire
  2. A2 Falling From Grace
  3. B1 Testify
  4. B2 Soul On Fire
  5. B3 Ministry Of Love
  6. B4 In The Mix
  7. C1 Romanworld
  8. C2 Make This Love Right
  9. C3 Now You Want Blues
  10. D1 Now You Want Me
  11. D2 Let Me Show Love
  12. D3 Come My Way

動画プレイリスト

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