Ronnie Foster - Two Headed Freap (1972)
Ronnie Foster『Two Headed Freap』――ブルーノートから登場した初リーダー作
ロニー・フォスターの『Two Headed Freap』は、1972年にUSブルーノートから発表された作品で、彼にとって初のリーダー作として位置づけられるアルバムだ。バッファロー出身のフォスターは、クラシック・ピアノに親しんだのち、10代でジャズへ傾き、15歳の頃にはジョージ・ベンソンのバンドで演奏を始めている。のちにソウル・ジャズ、ファンク、ラテンの要素を横断するオルガン/キーボード奏者として知られるが、この時点ですでに、演奏の輪郭はかなりはっきりしている。
録音は1972年1月20日と21日、ヴァン・ゲルダー・スタジオ。プロデュースはドクター・ジョージ・バトラー、エンジニアはルディ・ヴァン・ゲルダーという、ブルーノートらしい布陣でまとまっている。レーベルのこの時期は、ハード・バップの時代から少し進み、よりファンク寄り、ジャズ・ロック寄りの作品も増えていた頃で、本作もその流れの中にある。ブルーノートの伝統的なジャズの文脈に、70年代初頭のグルーヴ感がそのまま接続された一枚。
初リーダー作としての輪郭
フォスターは、ジョージ・ベンソンとの長い共演で知られる人物でもある。15年ほどにわたるベンソンとの関係は、後年の『Breezin'』の時代まで続き、さらにスティーヴィー・ワンダーとも接点を持つ。そうしたキャリアを踏まえると、『Two Headed Freap』には、バンドの中で機能する鍵盤奏者というより、自分のグルーヴを前に出す側の感覚がよく出ている。
曲順を追うと、オルガンの持続音とリズム隊の噛み合いがはっきりしていて、各曲の重心は低い。メロディを細かく積み上げるより、反復するフレーズと拍の置き方で引っ張る場面が多い。ジャズの即興性を保ちながら、ファンクの身体感覚へ寄せていく作り。ここには、同時代のハモンド・オルガン奏者たち、とくにソウル・ジャズから発展した路線との近さがある。
「Mystic Brew」の存在感
このアルバムで特に知られるのが「Mystic Brew」だ。リリース当時の人気曲というより、後年にヒップホップのサンプリング・ソースとして大きく再評価されたトラックとして記憶されている。ア・トライブ・コールド・クエストが1993年の『Midnight Marauders』収録「Electric Relaxation」でこのオルガン・グルーヴを引用したことは有名で、その後もJ.コールが参照している。原曲の段階で、短いフレーズの反復に十分な粘りがあり、ビートの空白を埋めすぎない設計になっているのが印象的だ。
実際に聴くと、「Mystic Brew」は派手な展開で押す曲ではなく、リズムの揺れと音数の少なさで引っ張るタイプ。オルガンの音色が前に出る一方で、周囲の演奏が必要以上に主張しないため、ループとして切り出される理由が分かりやすい。単独で聴いても、その後の引用を知っていても、まずフレーズの置き方が強い。
ブルーノート盤としての特徴
この盤には、ブルーノートの定番的な内袋「Blue Note. The Definitive Catalogue.」が付属している版があり、ラベル表記には青文字仕様のバリエーションがある。ディスコグラフィ上では、同じタイトルでもラベル違いの存在が確認されており、コレクター視点ではそこもひとつの見どころになる。録音年は1972年で、オリジナル盤と同年のリリース。ブルーノートの70年代初頭の空気を、そのまま閉じ込めた初出盤として扱える。
収録曲の出版権表記を見ると、Unart Music Corp.、Assorted Music、Jec. Pub. Co.、Erva Music Pub. Co., Inc. など複数の出版社がクレジットされている。B4はA&R Studiosでリミックスされた記載もあり、アルバム全体の中で細かな制作履歴が残っている点も面白い。
同時代の文脈
『Two Headed Freap』は、ブルーノートの伝統的なハード・バップとは少し違う方向にあるが、完全にポップへ寄り切るわけでもない。その中間で、ジャズの演奏感とファンクの反復性をつなぐ役割を持つ。比較対象としては、同時代のジャズ・ファンク系オルガン作品や、ジョージ・ベンソン周辺のグルーヴ志向の録音が思い浮かぶ。とはいえ、フォスターの鍵盤はギター主導のグルーヴとは別の進み方をしていて、低音の支え方や和音の置き方に特徴がある。
アルバム全体としては、フォスターがのちに展開していくソウル・ジャズ寄りの活動の出発点として見やすい。ブルーノートからの初リーダー作であり、のちのサンプリング文化の中で最もよく知られるトラックを含む一枚。1972年のジャズ/ファンクの接点を、そのまま記録した作品として整理できる。
トラックリスト
- A1 Chunky 4:50
- A2 Drowning In The Sea Of Love 4:05
- A3 The Two Headed Freap 4:19
- A4 Summer Song 5:20
- B1 Let's Stay Together 4:50
- B2 Don't Knock My Love 4:30
- B3 Mystic Brew 4:13
- B4 Kentucky Fried Chicken 5:00