The Severed Heads - Clean (1981)
Severed Heads 1981

The Severed Heads - Clean (1981)

Electronic Experimental Industrial

The Severed Heads『Clean』──1981年の実験とポップのあいだにある初期作

オーストラリア・シドニーで活動を始めたSevered Headsは、テープループや電子音、断片的なリズムを組み合わせながら、インダストリアルの文脈から少しずつ独自の方向へ進んでいったグループだ。そんな彼らの初期重要作として知られるのが、1981年の『Clean』である。Tom Ellardを中心に、まだバンドの輪郭が固まりきる前の時期に作られた作品で、後年のシンセポップ寄りの展開に先立つ、実験性の強い段階が記録されている。

このアルバムは、Winter 1980からWinter 1981にかけてTerse Tapesで録音されている。A4は1981年1月3日のI.C.E.でのライヴ録音、D1-D4は1981年7月7日のFilmmakers Co-opでのライヴ録音、さらにC1-C4はSide 3 Cassetteから、C5とD6はClean demo cassetteから収録された。未発表曲として扱われるトラックも含まれており、スタジオ作品というより、当時の制作環境そのものをパッケージしたような構成になっている。

作品の位置づけ

『Clean』は、Severed Headsがまだ純粋なノイズ実験だけに寄っていない時期の記録として見られている。テープ編集、ラジオ断片、演奏に不慣れな楽器、短いフレーズの反復が、きっちり整理された形ではなく、作業の跡が残るかたちで並ぶ。初期インダストリアルの硬さがありつつ、後年の彼らに通じるメロディの断片や、4/4のリズム感も少しずつ見えてくる。

Tom Ellard自身は、当時すでにカセット文化が下火になりつつある中で、レコードを出すなら今しかないという感覚を持っていたと回想している。資金をためて4トラック環境を整え、自主レーベルDogfood Production Systemから発表したという流れも、この作品の性格をよく示している。完成度を競うというより、手元の機材とアイデアをそのまま記録したような作り。

音の印象

実際に聴くと、音はかなり切り詰められていて、隙間が多い。ビートが前に出る曲でも、いわゆるダンス・ミュージックの整った推進力とは違い、細かい音の断片がぶつかりながら進む感じがある。テープの質感や、録音時の空気まで含めて残っているような鳴り方で、当時の実験音楽の現場感がそのまま伝わる。

一方で、ただ荒れているだけではない。ところどころに、のちのSevered Headsが得意にしていく、短くて覚えやすいフレーズの形が顔を出す。インダストリアルの側から入って、シンセポップやEBMに接続していく流れの、かなり早い段階を聴いている感覚がある。Kraftwerk以後の電子音楽、初期インダストリアル、そして80年代初頭のニューウェイヴ周辺の空気が、同じ盤面に並んでいる。

同時代との関係

1981年という時期を考えると、『Clean』は商業的なニューウェイヴやシンセポップが広がる流れの外側にいる。The Human Leagueの『Dare』のような洗練された方向とはかなり距離があるし、同時代の実験音楽やインダストリアルの中でも、Severed Headsはテープ操作とポップの断片を同居させるやり方が早い。後年の彼らがダンス・ミュージック寄りの要素を取り込んでいく土台は、この段階ですでに見えている。

代表曲やヒット曲を軸に語るタイプの作品ではないが、Severed Heads全体の流れを追うと、『Clean』はかなり重要な基点になる。のちにバンドがNettwerkやVolitionとつながり、1984年の“Dead Eyes Opened”で広く知られる前、その前史として置かれる1枚だ。

2020年盤について

今回の盤は2020年にDark EntriesからUS盤として再発されたもの。Dark Entriesはサンフランシスコ拠点のレーベルで、廃盤作や地下音楽の再発で知られている。オリジナルの1981年盤と比べると、この再発は当時の初期作をあらためて聴ける形でまとめ直したものとして意味がある。初出時のアンダーグラウンドな位置づけから、現在の耳でSevered Headsの出発点を確認するための盤、という見方がしやすい。

『Clean』は、完成された名作というより、制作の途中にある手触りがそのまま残った作品だ。だからこそ、Severed Headsがどこから来て、どこへ向かったのかが見えやすい。初期インダストリアルの硬さ、実験の粗さ、そして後の彼らにつながる曲の輪郭。その三つが、1981年の時点で同じ場所に置かれている。

トラックリスト

  1. A1 Food City
  2. A2 Our Own Home
  3. A3 Charivari
  4. A4 Nightsong
  5. A5 Car Advertisment
  6. B1 Love
  7. B2 Don't Saxophone
  8. B3 Book
  9. B4 Tiny Fingers
  10. B5 Heavily Tatooed Men + Women
  11. B6 Violins And Moonlight
  12. C1 Stomach
  13. C2 You Will
  14. C3 Turtledove
  15. C4 Flower
  16. C5 Clean Loops
  17. D1 Floopness
  18. D2 Ladies + Gents Digital
  19. D3 Somehow Pain
  20. D4 Subjective
  21. D5 Always Randy
  22. D6 Unbreakable
  23. D7 Traumat
  24. D8 Opera
  25. D9 Siren

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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