Rahmann - Rahmann (1979)
Rahmann / Rahmann(1979, Polydor)
Rahmannの唯一のアルバム『Rahmann』は、1979年にフランスのPolydorから出た作品で、フレンチ・プログレ/ジャズロックの周辺にある一枚として知られている。中心人物はアルジェリア出身のギタリスト兼マルチ奏者、マハマド・ハディ。後年は「マッド・シアー・カーン」の名でも活動する人物で、本作ではその出自がそのまま音の輪郭になっている。中東系の弦楽器、鍵盤、パーカッションを重ねながら、ゼウール由来の複雑なリズムとアラブ音楽の旋律感を組み合わせた内容で、フランスの70年代後半らしい実験性と土着感が同居したアルバムになっている。
作品の性格
このアルバムでまず目につくのは、ロックの編成に寄りかかりすぎないところだ。ギターを軸にしながらも、ウードやブズーキといった弦楽器が前に出る場面があり、音色の重心はかなり独特。そこに鍵盤と打楽器が細かく絡み、リズムはまっすぐ進まず、節回しも西洋ロックの定型から少し外れる。マグマ周辺に連なるゼウールの文脈を踏まえつつ、単純な模倣にはなっていないのが面白いところだ。
聴感としては、熱量の高い演奏が続くというより、アンサンブルの中で異なる文化圏の語法がぶつかり合う場面が多い。勢いで押すタイプではなく、フレーズの置き方やリズムのずらし方に耳が向く作り。フランスの70年代プログレやジャズロックに共通する知的な構成感がありながら、アルジェリア的な響きが前景に残るため、同時代の欧州ジャズロックの中でもかなり個性が強い。
メンバーとゼウール人脈
参加メンバーには、ベーシストのジェラール・プレヴォも名を連ねる。プレヴォはゼウール系バンドZaoのメンバーとしても知られており、この一枚がフレンチ・ゼウールの流れと接続していることがわかる。また、B面1曲目「Danse Sacrée」には、マグマにも参加したヴァイオリニスト、ディディエ・ロックウッドがゲスト参加している。こうした人脈を見るだけでも、この作品が当時のフランス音楽シーンの周縁同士をつないだ位置にあったことがうかがえる。
アルバムの位置づけ
Rahmannは本作一枚のみで知られるグループで、しかもその中心にいたハディの個性が作品全体を強く規定している。バンド名義ではあるが、実質的には彼のルーツと音楽観をまとめた記録に近い。フランスのプログレやジャズロックの中でも、欧州ジャズの洗練より、北アフリカの旋律やリズムの感触が前に出る点が特徴的だ。マグマ直系のゼウール趣味を持ちながら、よりアラブ音楽寄りの視点が濃い、そんな立ち位置の作品として見ておきたい。
収録曲にまつわる話
曲単位で見ると、「Danse Sacrée」が特に重要な位置を占める。ゲストにディディエ・ロックウッドを迎えたこの曲は、アルバムの中でも人脈の広がりを示す場面になっている。全体としては派手なヒット曲を狙った作りではなく、組曲的な流れや演奏の連なりで聴かせる内容。アルバム単位でのまとまりが強く、特定の一曲だけを切り出すより、通して聴いたときに輪郭が見えやすいタイプだ。
リリースとその後
オリジナルは1979年、フランス盤のPolydor 2393 252。70年代末のPolydorらしい時代の空気を持つ一枚で、のちに再評価が進んだ。発表当時は完成度の高さで受け止められたものの、その後は長く入手しづらい状態が続いたとされる。1996年にはMuseaから再発され、フレンチ・ゼウール系フュージョンの隠れた作品として改めて注目された。オリジナル盤と再発盤のあいだには、少なくとも入手性に大きな差があったことになる。
70年代フランスのジャズロック、プログレ、ゼウールの交点を探るとき、この『Rahmann』はかなり重要な座標に置ける。ロック、ジャズ、北アフリカ系の旋律とリズムが、ひとつのグループ名義の下でまとまった記録。Mahamad Hadiという人物の出自と志向が、そのまま音として残った作品だ。
トラックリスト
- A1 Atlanta 5:25
- A2 Nadiamina 6:18
- A3 Ab 7:57
- B1 Danse Sacrée 6:25
- B2 Leïla 9:35
- B3 Marche Funèbre (Dédiée Au Prophète) 4:56