Peter Gabriel - Peter Gabriel (1980)
Peter Gabriel『Peter Gabriel』(1980)
ピーター・ガブリエルが1980年にCharismaから発表したソロ通算3作目のスタジオ・アルバム。ヒプノシス(Hipgnosis)が手がけた顔の半分が溶け崩れるポラロイド写真のジャケットから、通称『Melt』『Peter Gabriel 3』として知られ、全英アルバム・チャートで自身初となる1位を獲得した初期の金字塔である。ポスト・パンクやニュー・ウェイヴの熱気を捉えつつ、ドラムのシンバル使用を全面的に禁じるなど過激な音響実験を敢行し、1980年代ポップ/ロックのサウンド革命の震源地となった。
「シンバル禁止」が生んだゲート・リバーブと制作背景
録音は1979年の夏から秋にかけてロンドンのタウンハウス・スタジオなどで進められた。プロデューサーに若きスティーヴ・リリーホワイト(Steve Lillywhite)、エンジニアにヒュー・パジャム(Hugh Padgham)を起用。ガブリエルは参加ドラマーたちに「シンバルを一切叩かない」という前代未聞の制約を課し、タムやスネアの残響を石壁のスタジオ・ルーム内で激しくコンプレッションした上でノイズゲートで断ち切る音響処理を編み出した。
この手法から生まれた「ゲート・リバーブ(Gated Reverb)」サウンドは、直後のフィル・コリンズ「In the Air Tonight」を経て80年代ポップス全体を決定づける世界的トレンドへと発展した。
参加メンバーも極めて豪華で、ドラムのフィル・コリンズとジェリー・マロッタ、ベース/チャップマン・スティックのトニー・レヴィン、シンセサイザーのラリー・ファスト、ギタリストのデヴィッド・ローズやポール・ウェラー(ザ・ジャム)が集結している。
収録曲と際立つテーマ性
アルバムは、破壊的なゲート・リバーブが炸裂する緊迫の「Intruder」で口火を切る。続く「No Self Control」ではロバート・フリップの鋭利なギターとケイト・ブッシュのコーラスが不穏な心理描写を加速させる。全英4位の大ヒットを記録した「Games Without Frontiers」は、冷戦下の国家間の対立を子供の遊戯になぞらえた風刺劇で、ケイト・ブッシュが歌う「Jeux sans frontières」のリフレインが耳を捉える。
そしてアルバムの白眉となるのが、終盤に配された「Biko」。南アフリカのアパルトヘイト政策に抗議し獄死した黒人解放運動の指導者スティーヴ・ビコを讃えた楽曲であり、アフリカ土着のチャントと力強い太鼓のリズムが圧倒的な連帯感を呼ぶ、世界的アンセムである。
時代における位置づけと後世への影響
本作は全英チャートを制覇し、ガブリエルの商業的・芸術的評価を決定づけた。「Biko」を通じてアムネスティ・インターナショナルやワールド・ミュージックへの世界的な関心を喚起し、後のWOMADフェスティバルの創設や世界的モンスター・ヒット作『So』(1986年)へとつながる重要な起点となった。
サウンド・メイキングと社会派メッセージの双方が最高度の緊張感で結実した、80年代ロック史を語る上で避けて通ることのできない傑作である。
トラックリスト
- A1 Intruder 4:50
- A2 No Self Control 3:50
- A3 Start 1:20
- A4 I Don't Remember 4:32
- A5 Family Snapshot 4:22
- A6 And Through The Wire 4:54
- B1 Games Without Frontiers 4:00
- B2 Not One Of Us 5:18
- B3 Lead A Normal Life 4:12
- B4 Biko 7:22
動画プレイリスト
このアーティストについて
Peter Gabrielは、ロックを軸に、ファンク、ソウル、フォーク、ワールド・ミュージックの要素も取り込んできたアーティストだ。ポップ・ロックやアー...
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