The Menzingers - Everything I Ever Saw (2026)
The Menzingers『Everything I Ever Saw』レビュー
The Menzingersは、米ペンシルベニア州スクラントン出身のポップ・パンク・バンドだ。Tom May、Greg Barnett、Joe Godino、Eric Keenの4人編成で、Epitaphから2026年に発表した『Everything I Ever Saw』は、通算8作目のスタジオ・アルバムにあたる。収録は全11曲、再生時間は約39分。制作は長年の相棒であるWill Yipとともに、南フィラデルフィアの新しいスタジオで進められたという。
この作品は、バンドがこれまで積み上げてきた合唱感のある曲作りと、ツイン・ボーカルのやり取りを、比較的まっすぐな形でまとめた1枚として受け取れる。Epitaph Europeから出たヨーロッパ盤で、ゲートフォールド仕様、プリント入りインナー・スリーブ付き。盤種も多く、EU band exclusiveのCloudy Electric Blueや、Epitaph webstore exclusiveのSunburst Splash、band exclusiveのPatina Rust SplashやGreen & White Splash、Banquet Records exclusiveのGreen w/ Bone & Olive Splatterなど、細かなバリエーションが用意されている。コレクター向けの動きも含めて、2026年時点のバンドの存在感が見えるリリースだ。
地元に戻って作った作品
制作背景で大きいのは、地元圏内で作ったことだ。The Menzingersは、長年の活動の中で、離れて見ていた故郷を再び制作の中心に置いた。インタビューでは、メンバー自身の生活の変化、たとえば離婚や第一子の誕生といった出来事が、曲の内容に入りやすくなったことも語られている。そうした個人的な時間の変化が、アルバム全体の視点にそのまま反映されている印象がある。
タイトルの『Everything I Ever Saw』も、過去を振り返るだけでなく、今の自分たちに至るまでの経過を記録するような響きを持つ。バンドのキャリアが20年を超えた段階で出た作品として、単なる懐古ではなく、今いる場所の確認という意味合いが強い。
演奏と歌のバランス
聴きどころは、やはりメロディの運びと、2人の歌がぶつからずに並ぶところだ。The Menzingersの持ち味である、コーラスに入ったときの厚みはこの作品でもはっきりしている。ギターは派手に音数を詰め込むというより、曲の輪郭をくっきりさせる方向に置かれていて、ドラムとベースが前へ進む力を作る。結果として、各曲が短い時間で要点に届く構成になっている。
一方で、レビューではメロディや演奏の安定感を評価する声がある反面、歌詞面では既視感を指摘する見方も出ていた。実際、The Menzingersらしい言葉選びや生活感のある視点は保たれているが、過去作で強く感じられた切迫感や驚きが前面に出るタイプではない。そこをどう受け取るかで印象は変わるだろう。
同時代のポップ・パンクの中で
The Menzingersは、同世代のポップ・パンクやメロディック・パンクの中でも、合唱感と内省の両方を持ち込むバンドとして語られてきた。Epitaphというレーベルの文脈でも、The Offspring、NOFX、Rancid、The Bouncing Souls、Alkaline Trio、The Weakerthans、Thursday、New Found Gloryなど、メロディと勢いを両立させる系譜の中に置きやすい。『Everything I Ever Saw』も、その流れを強く外れることなく、バンドの現在地をそのまま示す内容になっている。
また、Will Yipとの再タッグは、近年のパンク/オルタナティブ系作品でよく見られる、輪郭のはっきりした録音感につながっている。南フィラデルフィアという制作環境も含め、都市の距離感や生活の手触りがそのまま音に残るタイプのアルバムだ。
作品の位置づけ
『Everything I Ever Saw』は、The Menzingersのキャリアの中で、勢いで押し切る作品というより、積み重ねてきた年数をそのまま反映したアルバムとして位置づけられる。バンドの名前を知らない人でも、曲の進み方や合唱の作り方を追うだけで、彼らが長く同じフォーマットを磨いてきたことは伝わるはずだ。ヒット曲の単独性よりも、アルバム全体で流れを作るタイプの作品で、11曲を通して聴くと、生活の変化とバンドの現在地が重なって見えてくる。
発売時点の評価は、完成度の安定を認めつつ、従来作ほどの強い驚きは置かれていない、という受け止め方が中心だった。とはいえ、The Menzingersらしい歌の運び、ツイン・ボーカルの整理された絡み方、そして地元に戻って作ったという背景は、このアルバムの輪郭をかなり明確にしている。2026年のEpitaph作品として、バンドの歩みを静かに示す1枚だ。
トラックリスト
- A1 Chance Encounters
- A2 Better Angels
- A3 Romanticism
- A4 Other People's Money
- A5 Gasoline & Matches
- B1 The Fool
- B2 Nobody's Heroes
- B3 Breathe With Me
- B4 When She Enters My Dreams
- B5 Parade Day
- B6 Everything I Ever Saw