The Butterfield Blues Band - The Resurrection Of Pigboy Crabshaw (1968)
The Butterfield Blues Band『The Resurrection Of Pigboy Crabshaw』
1960年代のアメリカン・ブルース・ロックを語るとき、The Butterfield Blues Bandは外せない存在だ。Paul Butterfieldを中心に1963年に結成されたこのバンドは、シカゴ・ブルースの語法を土台にしながら、ロックの強い推進力とR&B、ソウルの感触を取り込んでいった。その流れの中で1968年に発表されたのが『The Resurrection Of Pigboy Crabshaw』である。バンドにとっては、ブルース・バンドとしての出自を保ちながら、編成と音の重心を大きく動かした作品として位置づけられる。
このUK盤はEdsel Recordsから1989年に出た再発盤で、オリジナルの1968年盤を後年のリスナー向けに掘り起こしたものだ。ジャケットやクレジットの細部はオリジナル盤とは異なる可能性があるが、作品そのものが持つ骨格は変わらない。再発盤として手に取ると、この時代のブルース・ロック作品が、どのようにソウルやブラス・ロックへ接近していったかを確認しやすい。
作品の輪郭
本作の大きな特徴は、従来のギター中心のブルース・バンド像から、ホーン・セクションを含むアンサンブル重視の編成へ進んでいる点にある。タイトルの“Pigboy Crabshaw”はElvin Bishopのニックネームで、彼がリード・ギターの中心を担っていることを示す。Paul Butterfieldのハーモニカが前面に出る場面はもちろんあるが、アルバム全体としては、個人技の見せ場を並べるより、バンド全体のうねりを作る方向へ寄っている。
録音時期のバンドには、Gene Dinwiddie、David Sanborn、Keith Johnsonらが加わり、ホーンやサックスの色が強まっている。ここで鳴っているのは、初期の硬質なエレクトリック・ブルースだけではなく、R&Bとソウルの要素を吸い込んだ、より開けたバンド・サウンドだ。聴き進めると、ギターのリフ、ハーモニカのフレーズ、ブラスの合いの手が、ひとまとまりで前へ進む感覚がある。
1968年という位置づけ
Butterfield Blues Bandは、同時代のブルース・ロック勢の中でも、単に英国勢の模倣に留まらず、アメリカの黒人音楽の流れを強く意識したバンドだった。Mike Bloomfield在籍期の切れ味のあるブルース解釈とは別に、本作ではElvin Bishopを軸にした、よりファンキーでソウル寄りの展開が目立つ。The Rolling Stonesが同時期にブルースとR&Bを自分たちのロックへ吸収していたのと比べても、この作品はかなりアメリカ南部寄りの湿度を感じさせる。
商業的にも、このアルバムはバンド史上もっとも高い順位までチャートを上げた作品として知られる。ブルース・バンドという枠に収まりきらない広がりが、当時のロック・リスナーにも届いた形だ。とはいえ、従来のブルース志向を期待した耳には、ホーンを含む編成やソウルの比重が大きく映ったはずで、その変化が作品の性格をはっきり決めている。
再発盤として聴く意味
1989年のEdsel盤は、オリジナル期の空気を後年に持ち込む役割を担う。70年代以降の再発市場では、こうしたブルース・ロックの名盤が、レコード店の棚で改めて掘り起こされていった。この盤もその流れの一つで、オリジナルの1968年盤を知らない世代にとっては、Butterfield Blues Bandの転換点を追う入口になっている。
収録曲単位で見ると、アルバムはブルースの定型に寄りながらも、演奏の置き方に余白がある。ハーモニカが一気に主役へ出る箇所、ギターとホーンがぶつかる箇所、リズム隊が前へ押す箇所、それぞれの役割が分かれていて、バンドの編成変化がそのまま音に出ている。Paul Butterfieldのバンドというより、複数のプレイヤーが同じ方向へ踏み込んでいく集団演奏の記録として聴くと、輪郭がつかみやすい。
まとめ
『The Resurrection Of Pigboy Crabshaw』は、The Butterfield Blues Bandがシカゴ・ブルースの直球勝負から、ソウルやR&Bを取り込んだバンド・サウンドへ移っていく途中の一枚だ。Elvin Bishopの存在感、ホーンの導入、Paul Butterfieldのハーモニカの置き方、そのどれもが作品の方向性を示している。ブルース・ロックの枠内にありながら、次の段階へ踏み出した1968年の記録として、今聴いてもはっきりした輪郭を持っている。
トラックリスト
- A1 One More Heartache 3:20
- A2 Driftin' And Driftin' 9:09
- A3 Pity The Fool 6:00
- A4 Born Under A Bad Sign 4:10
- B1 Run Out Of Time 2:59
- B2 Double Trouble 5:38
- B3 Drivin' Wheel 5:34
- B4 Droppin' Out 2:16
- B5 Tollin' Bells 5:23