TransAtlantic - SMPTe (2000)
TransAtlantic『SMPT:e』について
TransAtlanticは、Neal Morse、Mike Portnoy、Roine Stolt、Pete Trewavasという、90年代末のプログレッシブ・ロックを代表するプレイヤーが集まって始動したスーパーグループである。Spock’s Beard、Dream Theater、The Flower Kings、Marillionと、それぞれ別の重要バンドを背負った4人が並ぶだけで、当時の期待値はかなり高かったはずだ。本作『SMPT:e』はそのデビュー作で、2000年にオリジナル盤が出た作品。収録時間は約77分、全5曲という構成で、長尺曲を軸にした典型的なプログレッシブ・ロック作品になっている。
タイトルと作品の成り立ち
タイトルの『SMPT:e』は、4人の姓の頭文字を並べたものでもあり、同時に映像や録音の現場で使われるタイムコード規格「SMPTE」をもじったものでもある。バンド名を前面に出すよりも、メンバーの個性そのものを作品名に組み込んだ形で、結成当初の空気がよく出ている。初期案として別のバンド名も検討されていたという話もあるが、結果としてはこの一作目の時点で、4人の持ち味をそのまま提示する方向にまとまっている。
録音は1999年夏、ニューヨーク州ミルブルックのMillbrook Studiosで行われた。各メンバーが追加録音を別々の拠点で行い、ミックスは米国、マスタリングはソニー・ミュージック・スタジオで仕上げられている。制作の流れを見るだけでも、単なる寄せ集めではなく、かなり丁寧に組み立てられたプロジェクトだったことがわかる。
収録曲の特徴
冒頭の「All Of The Above」は約31分に及ぶ大曲で、本作の中心に置かれた楽曲だ。Neal Morseが主導した曲として知られ、序盤からテーマを細かく切り替えながら、組曲的に展開していく。長さだけで押すのではなく、メロディの反復やパートごとの切り替えで構成を保っている点が印象的な曲である。
Roine Stoltが書いた「My New World」も16分を超える長尺曲で、ギター主体のフレーズと鍵盤のレイヤーが絡み合う。TransAtlanticの中では、Neal Morseの作家性が強く見えやすい一方で、この曲ではRoine Stoltらしい流れの作り方が前に出る。バンド内での作曲の分担がそのまま音の違いになっているのが面白いところだ。
「We All Need Some Light」は比較的コンパクトな曲で、アルバムの中では休符のような役割を持つ。メロディ重視の組み立てで、長尺曲の合間に置かれることで全体の流れを整えている。「Mystery Train」はアンサンブルの切り返しが細かく、プログレらしい曲展開がはっきり出る。「In Held (Twas) In I」はProcol Harumのカバーで、1967年の原曲を踏まえたうえで、TransAtlantic流の大編成感に引き寄せた演奏になっている。
本作の位置づけ
『SMPT:e』は、TransAtlanticの出発点としてだけでなく、2000年前後のプログレッシブ・ロック復興の流れを象徴する一枚でもある。90年代末から2000年代初頭にかけては、クラシックなプログレの手法を受け継ぐ新世代の作品が増えていた時期で、YesやGenesis、King Crimson、Gentle Giantといった先行世代の影響が、より明確な形で再提示されていた。本作もその文脈にある。
評価面では高く受け止められ、演奏力と構成力の両方が注目された。いっぽうで、Yesの『Close to the Edge』期を思わせる部分や、Neal Morseの色が強く出ている点を指摘する声もあった。実際、長尺の組曲、メロトロン的な響き、複雑な転調、分厚いコーラスといった要素は、この時代のプログレの記号をかなり明確に使っている。そうした要素が、4人それぞれのバックグラウンドと重なっているのが本作の特徴である。
2016年盤について
ここで扱っているのは、2016年にドイツで出たInside Out Music盤のブラック・ヴァイナル仕様2LP+CDである。ゲートフォールド・ジャケット、プリント入りインナースリーブ付きで、LP用に曲順が調整されている。特に「All Of The Above」は、片面の収録時間制限に合わせてPt.1とPt.2に分割されており、CD版とは並びが異なる。アナログで聴く場合は、この分割によって大曲の流れがいったん区切られる構成になっている。
オリジナル盤から16年後の再発ではあるが、作品そのものは2000年のデビュー作として捉えるのが自然だ。TransAtlanticというユニットの出発点、そして4人の個性が最初にまとまった記録として、今見ても情報量の多いアルバムである。
トラックリスト
- All Of The Above Pt. 1 13:30
- All Of The Above Pt. 2 17:29
- C1 We All Need Some Light 5:45
- C2 My New World 16:16
- D1 Mystery Train 6:52
- D2 In Held (Twas) In I 17:21
- CD-1 All Of The Above 30:59
- CD-2 We All Need Some Light 5:45
- CD-3 Mystery Train 6:52
- CD-4 My New World 16:16
- CD-5 In Held (Twas) In I 17:21