Turley Richards - Therfu (1979)
Turley Richards『Therfu』について
Turley Richardsの『Therfu』は、1979年にAtlanticから登場したアルバムで、彼のソロ作の中でも晩年の時期に置かれる1枚だ。ターリー・リチャーズは、アメリカ・ウェストバージニア州チャールストン出身のシンガー/ソングライターで、ギタリストとしても活動した人物。60年代から活動を続け、70年代前半には小さなヒットも持っているが、この『Therfu』はそうしたヒット狙いの作りとは少し距離があり、より落ち着いたアルバム作りに軸足を置いた作品として受け止められている。
1979年という時期を考えると、AORやソフトロックの文脈がかなりはっきり見えてくる。実際、当時の業界誌でも本作は「書き手として、歌い手として力量がある」という見方で紹介され、Fleetwood Mac周辺を思わせる洗練されたアレンジと、ロックの骨組みを持った楽曲が評価されていた。派手な売り出し方よりも、曲の作りと演奏のまとまりで聴かせるタイプの作品だ。
作品の輪郭
このアルバムでまず目立つのは、Mick Fleetwoodが演奏と共同プロデュースに関わっている点だ。レビューでもFleetwood Mac系の空気感が指摘されていて、実際にサウンド面でも、ドラムの存在感やバンド全体のまとまりにその影響が見える。Bob Welchらの参加もあり、セッション色のある布陣で作られた一枚として整理できる。
曲の並びは、いかにも大きなヒットを前提にしたシングル寄りというより、アルバム全体で流れを作る構成。歌はソフトで、演奏はきれいに整っているが、ただ丸いだけではなく、ロックの骨格が残っているという評価が当時からあった。『Record World』では思慮深く、きれいで、ロックの芯があるとされ、『Cash Box』でも滑らかな歌唱とAOR向きの感触が強調されていた。
「You Might Need Somebody」とその後
収録曲の中では「You Might Need Somebody」が特に知られている。これは後年、Randy CrawfordやShola Amaのカバーで広く知られることになる楽曲だが、Turley Richardsによるこの時点の録音が最初期の形になる。アルバムからはこの曲がシングルとして取り上げられ、業界誌でも一定の反応があった。『Therfu』全体として大きな全米ヒットには結びつかなかったものの、この曲の存在でアルバムの輪郭はかなりはっきりする。
続く「Stand By Me」もシングルとして紹介されており、アルバムの中では楽曲単位での押し出しが意識されていたことがわかる。とはいえ、作品全体はヒット曲の寄せ集めではなく、同じ温度感でまとめた一作という印象が強い。
Turley Richardsにとっての位置づけ
Turley Richardsは1970年にワーナー・ブラザースからデビュー・アルバムを出して以降、70年代を通じて活動を続けた。『Therfu』は、その流れの中でAtlanticと組んだ後半期の作品にあたり、前半のソロ活動で見せたシンガー/ソングライターとしての持ち味を、より丁寧なアレンジの中でまとめた盤として見える。派手な転機というより、キャリアの中で曲作りと歌の輪郭を改めて示した一枚、という位置づけだ。
当時のAORやソフトロックの周辺には、Fleetwood Mac、Bob Welch、Steely Dan周辺のように、演奏の精度とメロディの整え方を重視する流れがあったが、『Therfu』もその空気の中で理解しやすい。ロックのエッジを強く出すのではなく、歌を中心に据えた仕上がり。そこにMick Fleetwoodの関与が加わって、単なるシンガーソングライター作品以上のまとまりを持った。
日本盤について
今回の盤は1979年の日本盤で、同年リリースのオリジナル期に近いタイミングで出たもの。レーベルはAtlanticで、当時の日本盤らしい丁寧な製品として扱われていたはずだ。オリジナルの空気をそのまま受けた時期のプレスなので、後年の再発盤とは違い、当時のAtlantic作品としての手触りをそのまま持っている。
『Therfu』は、強い一発で押し切るタイプのアルバムではないが、歌、曲、演奏のまとまりでじわっと輪郭が立つ作品だ。Turley Richardsのディスコグラフィーの中では、AOR寄りの感触とソングライターとしての仕事が素直に出た一枚として位置づけやすい。
トラックリスト
- A1 You Might Need Somebody 3:40
- A2 All Over The World 3:33
- A3 When I Lose My Way 3:48
- A4 Baby, Please Don't Go 4:55
- A5 Climb Up The Steeple 4:32
- B1 Stand By Me 3:45
- B2 I'm Coming Back Home (With A Little Bit Of Luck) 3:35
- B3 Can't You Hear Them Crying 4:21
- B4 It's All Up To You 3:21
- B5 There's Something Wrong 5:35