Velocette - Fourfold Remedy (1998)
Velocette 1998

Velocette - Fourfold Remedy (1998)

Rock Pop Indie Pop Indie Rock

Velocette『Fourfold Remedy』

Velocetteの『Fourfold Remedy』は、1998年にUKのWiiija Recordsから出たデビュー作。ロンドンの北部で1997年に結成されたこのバンドは、元Comet Gainのメンバーを中心に始まり、同時代の英国インディーの流れの中で注目を集めたグループだ。NMEやMelody Makerで好意的に扱われたという背景も、この1枚の立ち位置をよく示している。

作品全体は、メロディを前に出したインディー・ロック/インディー・ポップの作り。CMJの同時代評では、Sarah Bleachの歌声を軸にした“chanteuse-led bedsitter pop”として紹介されていて、オルガンやストリングスを交えた、室内楽的な組み立てが印象に残る。90年代後半の英国インディーらしい、派手さよりも曲の輪郭や音の配置を重視した作り込みが見える。

録音とミックスは1998年春から初夏にかけて、ロンドンのFortress II Studioで行われた。クレジットを見ると、ハープ、グロッケンシュピール、フェンダー・ローズ、ハモンド、メロトロンまで使われていて、演奏面の引き出しがかなり多い。ギター中心のバンド像だけでは収まらない、細かい音色の重なりがこのアルバムの特徴になっている。

Comet Gain周辺から続く流れ

Velocetteは、Comet Gainの元メンバー4人で始まったバンドとして知られる。実際、初期曲の「Get Yourself Together」「Don't Care」「Strip Polka」は、Comet Gainの未発表セカンド・アルバム用に録音されていたものだったという。バンドの出自をたどると、単独の新規プロジェクトというより、Comet Gain周辺で育ってきた感覚を別の形にまとめた活動として見えてくる。

そのため『Fourfold Remedy』にも、英国インディーの中でも文学的で、日常の室内に置かれたような視点がある。大きなロック・サウンドで押し切るのではなく、歌とアレンジの距離感で聴かせる作り。StereolabやSaint Etienne、The Sundaysを連想するという受け止め方が同時代にあったのも自然なところだ。

評価と受け止められ方

このアルバムの評価は一枚岩ではない。CMJのレビューでは、耳に残る旋律と澄んだヴォーカルが長所として挙げられ、同時に曲によっては歌の印象がやや単調に感じられるという見方もあった。後年の回顧では、もっと辛口に扱われることもある。つまり、強い個性で一気に押し切るタイプの作品ではなく、細部の作りや曲ごとの表情で印象が変わるアルバムとして受け止められてきた。

チャート面では、米国のCMJ Radio 200で1999年6月14日付の133位に入り、その後も7月にかけて141位、157位と推移している。大きな商業ヒットではないが、オルタナティブ系のラジオで少しずつ回った記録が残っている。表立った成功より、当時のインディー・シーンの中で静かに流通した作品という印象が強い。

1998年UKインディーの中で

Wiiija Recordsは、Rough Tradeショップから始まったロンドンのレーベルで、90年代の英国インディーを支えた存在のひとつ。『Fourfold Remedy』も、その文脈にしっかり収まる。粗い勢いより、アレンジの工夫や女性ヴォーカルの扱い、60年代ポップの要素を細かく組み込む方向に寄った作品で、同時代の英国インディー/ソフトポップの一角を示す1枚になっている。

ヒット曲という意味では大きく広がった曲は見当たらないが、初期曲の「Get Yourself Together」「Don't Care」「Strip Polka」はバンドの出自を示す重要な楽曲として位置づけられる。アルバム全体を通して聴くと、派手な山場よりも、曲の並びと音色の積み重ねで雰囲気を作るタイプの作品であることがわかる。1998年の時点で、Velocetteがどこを向いていたかをそのまま残したデビュー作として見ておきたい。

トラックリスト

  1. A1 Reborn
  2. A2 Bitterscene
  3. A3 La Sirena
  4. A4 Unkind
  5. A5 Where Are We?
  6. B1 Get Yourself Together
  7. B2 Spoiled Children
  8. B3 Submarines
  9. B4 Someone's Waiting
  10. B5 That Ain't Mine

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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