Westfauster - In A King's Dream (1971)
Westfauster『In A King's Dream』について
Westfausterの『In A King's Dream』は、1971年に残されたサイケデリック・ロック/プログレッシブ・ロックの一枚として知られる作品だ。アメリカ・オハイオ州シンシナティ周辺のバンドで、60年代末から70年代初頭にかけて活動したグループの記録である。レーベルはナッシュビル拠点のNascoで、バンドにとってはこのLPがまとまった形で残された代表作にあたる。Stephen Helwig、Michael Newland、Charles West Fausterの名がクレジットされており、バンドの編成と演奏の輪郭がそのまま作品の性格につながっている。
この盤は1993年にリリースされた再発盤で、音源そのものは1971年のオリジナル作品として捉えるのが自然だ。70年代初頭のアメリカ地方都市のバンドらしく、メジャー路線の洗練よりも、当時の空気をそのまま閉じ込めたような手触りがある。Nascoはナッシュビルのレーベルで、地域色の強い作品や個性的なローカル・ロックを残したことで知られるが、このアルバムもそうした文脈の中で聴くと位置が見えやすい。
作品の位置づけ
Westfausterは、シンシナティ周辺のサイケデリック・プログレ系バンドとしては比較的知られた存在だが、活動期間は長くない。そうした中で残された『In A King's Dream』は、バンドの方向性を示す重要な記録になっている。プロフィールにもある通り、演奏にはプログレッシブな構成感と、ポスト・サイケデリックな響きが同居している。派手なヒット曲で広く知られるタイプではなく、むしろアルバム単位で当時のローカル・シーンをたどると見えてくる作品だ。
また、Haymarket RiotのSteve Helwigが参加している点も、この作品を語るうえで外せない。地域のミュージシャン同士のつながりが、こうした盤では演奏の質感やアンサンブルのまとまりに反映されやすい。クレジットから見える範囲でも、単なる学生バンド的な録音ではなく、ある程度の演奏経験を持ったメンバーが制作に関わっていたことがうかがえる。
サウンドの印象
全体としては、サイケデリック・ロックの色合いを土台にしながら、曲の展開やアレンジにプログレッシブ・ロック寄りの組み立てが見えるタイプの作品だ。リフやメロディを押し出す場面と、曲の途中で流れを切り替えるような構成が行き来し、70年代初頭らしい試行錯誤の気配が残る。録音の質感も、後年の整った再発見系アーカイブ作品というより、当時のローカルLPらしい素朴さが前に出る。
演奏面では、ギターが曲の中心を担いながら、ベースとドラムがその周囲を支える形が基本にあるようだ。そこにオルガン的な響きや、曲によってはより内省的な展開が差し込まれることで、単調になりすぎない流れを作っている。サイケデリックな残響だけで押し切るのではなく、プログレッシブな構成意識でまとめようとする姿勢が、このアルバムの特徴として受け取れる。
注目したい楽曲の聴きどころ
タイトル曲の「In A King's Dream」は、作品全体の入口として機能する重要な曲だ。アルバム名を冠した曲だけに、バンドがこの盤でやろうとしていることが比較的わかりやすく出る。サイケデリックな雰囲気を持ちながら、単純なジャムでは終わらず、展開の変化で曲を進めていくタイプの構成が印象に残る。導入から中盤にかけての流れで、バンドがメロディと演奏の両方を意識していることが見えやすい。
この曲では、演奏のまとまりが作品の性格をよく示している。リフの反復に頼り切らず、フレーズの受け渡しやダイナミクスの変化で曲を持たせるあたりに、当時のプログレ志向が感じられる。派手な技巧を前面に出すというより、曲の中で少しずつ場面を切り替えていく作りで、アルバムの中でも核になる一曲として聴こえる。
もう一つの聴きどころは、アルバム内でよりサイケデリック色の強い楽曲群だ。こちらは、曲の骨格が見えやすい場面と、音の揺れや残響を活かした場面が交互に現れ、バンドの表現範囲を確認できる。ローカル盤らしい荒さを含みつつも、単なる粗さに終わらず、曲ごとの表情の違いがそのまま作品の魅力になっている。
再発盤としての見え方
1993年盤として手に取られることの多いこのレコードは、オリジナルの1971年盤を後追いで聴く入口としても位置づけられる。再発によって、70年代初頭の地方ロックが改めて掘り起こされた流れの中で評価が見直された作品の一つと考えられる。オリジナル盤の流通事情を気にしなくても音源に触れられる点は、こうした再発盤ならではの役割だ。
Westfauster『In A King's Dream』は、巨大な成功譚ではなく、地方のバンドが残した一枚の記録として価値がある作品だ。サイケデリック・ロックとプログレッシブ・ロックの接点にある70年代アメリカの空気、そしてシンシナティ周辺のローカル・シーンの一端を、そのまま伝えるアルバムとして受け止めやすい。
トラックリスト
- A1 Where Are You 3:26
- A2 Everyday 8:55
- A3 Blind Man 3:16
- A4 Blind Man's Epitaph 2:54
- B1 In A King's Dream 10:08
- B2 A Sunny Day 3:18
- B3 Low Sun 2:53
- B4 Did It Or Didn't It (Take Us High) 5:09