David Bowie - David Bowie (1969)
David Bowie / David Bowie(UK Philips, 1969)
デヴィッド・ボウイの2作目のスタジオ・アルバムで、一般には「Space Oddity」として知られる作品。1969年11月に英国でリリースされ、ボウイの初期キャリアの中でも重要な位置を占める1枚だ。後年のグラム・ロック期やキャラクター先行のイメージとは少し距離があり、フォーク、ポップ、サイケデリックの要素を含みながら、まだ手探りの段階にあるボウイの姿がそのまま残っている。結果として、完成度の高い代表作というより、次の時代へ向かう入口の記録として読むと輪郭がつかみやすい。
作品の位置づけ
本作は、ボウイがのちに大きく飛躍する前夜のアルバムだ。1969年時点ではまだ商業的な成功作ではなく、後年になって再評価が進んだタイプの作品でもある。とはいえ、冒頭の「Space Oddity」だけでなく、アルバム全体に漂う曲作りの試行錯誤、フォーク寄りの語り口、室内楽的なアレンジの感触が、のちのボウイ像とは別の魅力を作っている。初期ボウイの中では、スタイルを固定しない姿勢がすでに見えている時期の記録でもある。
参加ミュージシャンにはハービー・フラワーズ、リック・ウェイクマン、トニー・ヴィスコンティらが名を連ねる。ボウイ本人の周辺に、当時の英国ロック/ポップの実力派が集まっている構図で、録音物としても後の大作期につながる下地が感じられる。制作は1969年6月から9月にかけて行われた。
「Space Oddity」の存在感
やはり中心は「Space Oddity」だ。映画『2001年宇宙の旅』から着想を得たとされるこの曲は、宇宙開発が熱狂を集めていた1969年の空気と強く結びついている。シングルはアポロ11号の月面着陸の数日前に出され、BBCが宇宙中継のBGMに使ったことでも知られる。曲の内容は明るい祝祭感とは違い、宇宙で孤立していく宇宙飛行士を描いたものなので、この採用には当時から違和感もあったようだ。
アルバム版では、この曲が冒頭に置かれることで、作品全体の重心が決まっている。ヒット曲としての強さだけでなく、ボウイが物語を持つ楽曲を扱う際の視点がすでに明確だ。後の「Starman」や「Life on Mars?」のような代表曲へつながる、語りと旋律の結びつきがここにある。
UKオリジナル盤の仕様
このUK Philips盤は、黒地に銀文字のラベル、見開きゲートフォールド仕様で、内側に歌詞を収めた初期プレス。スリーヴにはSBL 7912、ラベルにはSBL.7912と表記されている。レーベルの幅広いPhilipsロゴが使われている点も、初回盤を見分ける手がかりになる。内ジャケットには、フロント・カバーがVernon Dewhurstによるもので、Victor Vasarelyの作品「CTA 25 Neg」を基にしていること、バック・カバーがGeorge Underwoodによることが記されている。
この盤では、A2の2部構成のうちのA2.2にあたる部分が、スリーヴにもセンターラベルにも明記されていない。いわゆる“hidden track”として扱われている箇所で、米Mercury盤やその後のRCA再発では取り除かれた。UKオリジナル盤では、溝の構造上は「Unwashed and Somewhat Slightly Dazed」と「Letter to Hermione」の間にまたがる形で収められている。
オリジナル盤と後年版の違い
1969年UK Philips盤は、のちの再発盤と比べると、作品名もアートワークも初出時の姿を保っている。1972年以降のRCA再発では、北米盤をもとにタイトルが「Space Oddity」に改められ、ジギー・スターダスト風の新しいジャケットが使われた。さらに1990年のRyko盤ではそのRCA系の見た目を踏襲しつつ、隠れたパートが復元され、初めて「Don’t Sit Down」と名付けられた。1999年の再発ではタイトルと1969年風のカバーが組み合わされ、2009年の40周年版では英国オリジナルに近い体裁へ戻されている。
その意味で、このUK初回盤は、後年の流通事情で変化していく前の基準点にあたる。タイトル、ジャケット、曲順、細部の表記まで含めて、1969年当時のボウイ像をそのまま持っている盤だ。
同時代の中での輪郭
1969年の英国ロック/ポップの文脈で見ると、本作はサイケデリックの残り香とフォーク・ロックの語りを併せ持つ位置にある。派手なハード・ロック路線でもなく、純粋なシンガーソングライター作品とも少し違う。ボウイはこの時点で、のちに自分のキャラクターを前面に出していく前段階にいるが、そのぶん曲の構成や言葉の置き方に注意が向いている。ブリティッシュ・ポップの流れの中でも、後のロキシー・ミュージックやブライアン・イーノ周辺の「洗練された異物感」と響き合う部分がある。
まとめ
この1969年UK Philips盤の『David Bowie』は、巨大な変身を遂げる前のボウイを記録したアルバムだ。代表曲「Space Oddity」を軸にしながら、まだ定まらない声、フォーク寄りの筆致、サイケデリックな気配が同居している。初回盤ならではの見開き仕様、黒銀ラベル、曲の表記の扱いも含めて、後年の再発盤とははっきり違う顔を持つ。ボウイが20世紀の音楽史で特別な存在になっていく、その出発点のひとつとして見ておきたい1枚だ。
トラックリスト
- A1 Space Oddity 5:13
- A2.1 Unwashed And Somewhat Slightly Dazed 6:09
- A2.2 Don't Sit Down 0:39
- A3 Letter To Hermione 2:30
- A4 Cygnet Committee 9:22
- B1 Janine 3:22
- B2 An Occasional Dream 2:54
- B3 The Wild Eyed Boy From Freecloud 4:46
- B4 God Knows I'm Good 3:17
- B5 Memory Of A Free Festival 7:06
動画プレイリスト
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David Bowie - Space Oddity
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David Bowie - Unwashed And Somewhat Slightly Dazed
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David Bowie - Letter To Hermione
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David Bowie - Cygnet Committee
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David Bowie - Janine
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David Bowie - An Occasional Dream
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David Bowie - Wild Eyed Boy From Freecloud
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David Bowie - God Knows I'm Good
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David Bowie - Memory Of A Free Festival
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David Bowie - Conversation Piece
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David Bowie - Don't Sit Down
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David Bowie - Ragazzo Solo, Ragazza Sola