WIZRD - Seasons (2022)
WIZRD 2022

WIZRD - Seasons (2022)

Rock Jazz Indie Rock Prog Rock Jazz-Rock

WIZRD『Seasons』(2022)レビュー

ノルウェーの4人組、WIZRDによる『Seasons』は、2022年にKarisma Recordsから登場したデビュー作だ。プログ・ロックを軸にしながら、ジャズ・ロック、インディー・ロックの要素も自然に混ぜ込んだ作品で、北欧の新しいバンドらしい整理された音像と、演奏の熱量が同居している。全8曲、約43分という尺の中で、複雑な展開と耳に残るメロディの両方をきちんと置いているのが印象に残る。

学生プロジェクトから始まったバンド

WIZRDは、トロンハイム音楽院での学生プロジェクトを出自とするバンドとして紹介されている。メンバーはSpidergawd、Krokofant、Soft Ffog、Megalodon Collective周辺にも関わる実力派で、ノルウェーのジャズ、ロック、即興音楽の場で経験を積んだ人たちによる集まりという背景がある。そうした経歴は、曲の組み立てやアンサンブルの細かさにそのまま表れている。単に技巧を見せるだけでなく、ロックの推進力を保ったまま、節ごとに空気を切り替えていく構成がはっきりしている。

制作面では、Jaga Jazzistのドラマーであり映画音楽作曲家としても知られるマーティン・ホルントヴェトがプロデュースを担当。録音はオスロのStudio Paradiso、ミックスはベルゲンのマティアス・テレツが手がけた。ノルウェー国内の制作体制でまとめられた作品で、音の輪郭はくっきりしている一方、演奏の生々しさも残している。

ジャズ・ロックのうねりと、歌ものとしてのわかりやすさ

『Seasons』は、変拍子や転調、細かなリズムの切り替えが多いが、難解さだけに寄らない。レビューでも、ジャズ由来の展開とロック/ポップの親しみやすさが両立している点が評価されていた。実際、曲の進み方はかなり緻密なのに、コーラスやフレーズの置き方に引っかかりがあり、耳が迷子になりにくい。インディー・ロック的な乾いた手触りが入る場面もあって、プログ・ロックの文法だけで固めた作品とは少し違う。

先行曲として紹介された「Lessons」は、このバンドの輪郭がわかりやすい1曲だ。プログ的な展開、即興性のあるフレーズ、ロックとしての押し出しがまとまっていて、WIZRDの代表曲として扱われるのも自然。アルバム全体でも、こうした“複雑だが歌える”感触が通底している。ジャズ・ロックの流れをくみながら、メロディを前に出す作りは、Yes、Mahavishnu Orchestra、Allman Brothers、White Denim、Motorpsychoといった名前を連想させるという指摘もある。

北欧プログの現在地

この作品が出た2022年の時点で、ノルウェーのプログ/ジャズ・ロック周辺はすでに厚みのあるシーンを持っていたが、『Seasons』はその中でもインディー寄りの感触を持ち込んだ一枚として受け止められている。派手なコンセプトで押すのではなく、演奏の精度と曲のまとまりで聴かせるタイプ。北欧らしい整理された音作りの中に、ところどころ鋭いフレーズが差し込まれる。

デビュー作という位置づけも重要だ。最初の一枚で、すでにバンドの方向性がかなり明確に出ている。複雑な構造を持ちながら、聴き手を置き去りにしないバランス感覚、そしてジャズ・ロックとインディー・ロックのあいだを行き来する柔軟さ。『Seasons』は、ノルウェー産プログの新しい顔として注目されたのも納得の内容だ。

作品の手触り

  • 収録は8曲、全体で約43分
  • 変拍子やジャズ的なうねりが多い構成
  • メロディとコーラスの聴きやすさを保った作り
  • 演奏の密度が高いが、音像は整理されている
  • プログ、ジャズ・ロック、インディー・ロックの交点にある作品

アナログ盤の仕様

今回の盤はKarisma RecordsのKAR239LPC。ジャケットの背ではKAR239LPC表記、LPのB面ラベルではKAR239LP表記になっている。シングルジャケットに、黒いポリライナー付きのインナーを組み合わせた仕様で、ランアウトはエッチング。ノルウェー盤らしい、必要な情報をきちんとまとめた実用的なパッケージだ。

『Seasons』は、演奏の確かさと曲のまとまりを同時に見せるデビュー作で、ノルウェーの現在のプログ/ジャズ・ロックの空気をそのまま閉じ込めたような一枚。派手に見せるより、細部の組み立てで引き込むタイプの作品である。

トラックリスト

  1. A1 Lessons
  2. A2 Free Will
  3. A3 Spitfire
  4. A4 All Is As It Should Be
  5. B1 Show Me What You Got
  6. B2 Fire & Water
  7. B3 Divine
  8. B4 When You Call

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Prog Rock"

toast