Microdisney - Crooked Mile (1987)
Microdisney『Crooked Mile』(1987)
Microdisneyの『Crooked Mile』は、1987年にUKのVirginから出たアルバムで、バンドの後期を代表する1枚として知られている。アイルランドのCorkで始まったこのバンドは、Cathal CoughlanとSean O’Haganを軸にしながら、インディー・ロックの文脈で独自の位置を築いていった。『Crooked Mile』は、その流れの中でもメジャー寄りの流通に乗った作品でありながら、バンド本来の皮肉っぽい視線や言葉の切れ味が前に出た、まとまりの強いアルバムとして扱われている。
Virgin移籍後の3作目、後期Microdisneyの輪郭
この作品は、MicrodisneyにとってVirgin移籍後の3作目にあたる。録音は1986年夏、Jamで行われ、Townhouse Studiosでミックスされた。プロデュースにはLenny Kayeが関わっている。クレジット上の編成も前期とは異なり、Steve Pregnant(ベース)やJames Compton(キーボード)が参加している。バンドの中心であるCathal CoughlanとSean O’Haganの持ち味に、より整ったバンド・サウンドが加わった形だ。
Sean O’Haganは後年、この録音の響きについて「1973年っぽく聞こえた」と振り返っている。本人にとっては好意的な印象ではなかったようだが、結果としては、当時のインディー・ロックの中でも少し時間感覚のずれた音像になっている。ギターは輪郭がはっきりしていて、演奏は乾いた手触りを保ちながら進む。そこにCoughlanの歌が乗ると、日常の風景がそのまま皮肉の対象に変わる。
『Town to Town』とアルバムの顔つき
代表曲としてまず挙がるのが「Town to Town」だ。シングルとしても切られ、UKシングル・チャートでは77位を記録している。大きなヒットではないが、Microdisneyとしては比較的目立った商業的成果だった。プロモーション映像ではトラックの荷台で演奏する場面が使われていて、バンドの少しひねくれたユーモアがそのまま表に出ている。
アルバム全体でも、この曲に通じる感触がある。メロディは耳に残りやすく、演奏は整っているのに、歌詞はそのまま受け取らせない。日常の言い回しや権力への視線を、Coughlanはかなり細かく切り分けて置いていく。単に辛辣というより、風景を見ながら言葉の角度を変えていくような書き方で、そこがMicrodisneyらしさとして強い。
当時の評価と位置づけ
発売当時の音楽誌では好意的に受け止められ、のちにはNMEの1987年ベスト・アルバム候補にも挙がっている。後年の回顧では、甘さのあるメロディと、そこに差し込まれる毒の両方が語られることが多い。Microdisneyの作品群の中でも、最も洗練されたポップ感覚を持ちながら、その中身はかなり刺々しい、という見方が定着している。
同時代のUKインディーの中では、The Smithsのような言葉の鋭さを持つバンドや、後のアメリカーナ寄りの感触を先取りしたようなギターの使い方と並べて語られることがある。ただし、Microdisneyはそのどちらにも収まりきらない。Cathal Coughlanの詞の運びとSean O’Haganの旋律感覚が、独特の距離感を作っているからだ。後のCoughlanの活動や、O’Haganのメロディ重視の作風にも、この時期の経験がつながっている。
UKオリジナル盤の仕様
今回のUK盤は1987年リリースで、Virginのグレー・ホワイト系ラベル期に入る時期のもの。ジャケット内には光沢のあるプリント・インナー・スリーブが付いている。レコードはUK製造で、ランアウトにはスタンピングが見られる。オリジナル盤ならではの物理的な仕様も、当時のVirgin盤らしいまとまりを感じさせる部分だ。
『Crooked Mile』は、Microdisneyが持っていた知性、皮肉、メロディの強さを、比較的はっきりした形で記録したアルバムだ。派手な成功作というより、バンドの輪郭がもっとも明瞭に出た作品として残っている。後期Microdisneyを語るとき、外せない1枚である。
トラックリスト
- A1 Town To Town
- A2 Angels
- A3 Our Children
- A4 Mrs. Simpson
- A5 Hey Hey Sam
- A6 Give Me All Of Your Clothes
- B1 Armadillo Man
- B2 Bullwhip Road
- B3 And He Descended Into Hell
- B4 Rack
- B5 Big Sleeping House
- B6 People Just Want To Dream