Andrew Gold - Whirlwind (1980)
Andrew Gold『Whirlwind』(1980) について
Andrew Goldの『Whirlwind』は、1980年にAsylum Recordsから発表された4作目のソロ・アルバムだ。『Lonely Boy』や『Thank You for Being a Friend』で知られる彼の作品群の中でも、このアルバムは少し位置がはっきりしている。前2作で見せていた軽快なポップの手触りから、ギター主体のロック色を前面に出した一枚で、本人プロデュースによる緻密な作りも印象に残る。
作品の輪郭
Andrew Goldは、シンガーソングライターであり、マルチ奏者、アレンジャー、プロデューサーとしても活動した人物だ。ソフトロックの文脈で語られることが多いが、『Whirlwind』ではその呼び名だけでは収まりきらない、やや硬質なバンド・サウンドに寄っている。ロサンゼルスのSound FactoryとRecord Oneで録音され、Bryan Garofalo、Mike Botts、Waddy Wachtelらが参加している点からも、当時のLAロックの空気が濃い作品として見えてくる。
レーベルはAsylum Records。1970年代のシンガーソングライター作品を数多く送り出したレーベルで、Joni Mitchell、Tom Waits、Warren Zevon、Jackson Browneといった名前と並ぶ場所にAndrew Goldがいたことは、この時代の感覚をつかむうえで分かりやすい。『Whirlwind』も、そのAsylumのカタログの中で、ポップ職人的な感覚とロック寄りの演奏感が交差する作品として置かれている。
聴感の印象
このアルバムの中心にあるのは、メロディの分かりやすさを残しながら、音の輪郭を少し太くしたロック感だ。前作までの親しみやすいポップ・ソングの流れを引き継ぎつつも、ここではギターの存在感がはっきりしていて、曲の推進力も前に出る。レコーディングやアレンジの精度は高く、音の重なり方にも神経が行き届いている。細部まで整えられた作りで、ラフな勢いで押すタイプではない。
一方で、同時代の評価では、この方向転換をどう受け取るかで見方が分かれた。Billboardでは、過去のヒット曲によってついた“軽いポップ歌手”という印象よりも、ロック表現に近づいた点が見られていた。逆にRolling Stoneでは、技巧はあるが模倣的なロックに聞こえるという辛口の反応もあった。つまり、『Whirlwind』は単純にポップの延長線上にある作品ではなく、Andrew Goldが自分の表現の置き場所を少し変えたアルバムとして受け止められていたわけだ。
代表曲とアルバムの位置づけ
Andrew Goldの代表曲としてよく挙がるのは、『Lonely Boy』や『Thank You for Being a Friend』だが、『Whirlwind』はそうした大きなヒットを生んだ作品ではない。商業的な存在感は前作までほど強くなく、後年の回顧でも、アルバム単位では大きな話題を残さなかったという扱いが目立つ。それでも、彼のキャリアの中では重要な一枚で、ポップ・ソングライターとしての顔だけでなく、演奏家・編曲家としての手腕を前に出した時期の記録になっている。
また、この時期のLAロックやソフトロック周辺の空気と比べると、『Whirlwind』は派手な個性で押すというより、整った構成と演奏の密度で聴かせるタイプだ。Waddy Wachtelのような西海岸ロックの常連が関わっていることも含め、当時のスタジオ・ミュージシャン文化とシンガーソングライター作品の接点が見えやすい。
まとめ
『Whirlwind』は、Andrew Goldのディスコグラフィーの中で、ポップな親しみやすさとロック寄りの演奏感がぶつかる地点にあるアルバムだ。ヒット曲中心のイメージだけでは見えにくい、彼の制作志向やアレンジ感覚がよく出ている。1980年という時代のLAロックの空気をまといながらも、作りの細かさはAndrew Goldらしい。大きく売れた作品ではないが、彼のキャリアを追うときには外しにくい一枚として残る。
トラックリスト
- A1 Kiss This One Goodbye 4:03
- A2 Whirlwind 4:16
- A3 Sooner Or Later 3:31
- A4 Leave Her Alone 3:30
- A5 Little Company 4:16
- B1 Brand New Face 4:43
- B2 Nine To Five 4:04
- B3 Stranded On The Edge 4:03
- B4 Make Up Your Mind 5:06