Arcade Fire - Funeral (2004)
Arcade Fire 2004

Arcade Fire - Funeral (2004)

Rock Indie Rock

Arcade Fire『Funeral』レビュー

Arcade Fireの『Funeral』は、カナダ・モントリオールを拠点に活動を始めたバンドが、2004年にMerge Recordsから発表したデビュー・アルバムである。盤として流通しているのは2005年リリースのUS盤で、厚みのあるエンボス加工のゲートフォールド・スリーブに収められている。手触りのあるパッケージと、そこに収められた音の密度が、最初から強く結びついている作品だ。

Arcade Fireは2001年結成のインディー・ロック・バンドで、Win ButlerとRégine Chassagneを中心に、複数のメンバーが出入りしながら形を作っていった。『Funeral』の時点で、すでに一般的なロック・バンドの編成に収まりきらない広がりを持っていて、弦楽器や鍵盤、打楽器を含む厚いアンサンブルが印象に残る。メンバーのクレジットに多くの名前が並ぶのも、この作品の輪郭をよく表している。

喪失体験を抱えたアルバム

このアルバムのタイトル『Funeral』は、制作期間中に身内の死が続いたことに由来する。Régine Chassagneの祖母が2003年6月に、WinとWilliam Butler兄弟の祖父であるスウィング・ミュージシャン、Alvino Reyが2004年2月に、Richard Reed Parryの叔母が同年4月に亡くなっている。2003年8月、モントリオールのHotel2Tangoで始まったセッションを起点に、ウィンとレジーヌのアパートでも追加録音が行われた。こうした背景が、曲の中で死、変化、子ども時代の終わりといったテーマとして表れている。

聴き進めると、単に重い題材を扱っているだけではなく、感情の振れ幅がかなり大きい。静かな導入から一気に音が膨らむ場面が多く、歌と合唱、リズムの押し引きがはっきりしている。録音もアナログらしい質感が前に出ていて、音の輪郭がくっきりしながら、少しざらついた空気も残っている。整いすぎないまま勢いを保つ、そのバランスがこの作品の印象を決めている。

代表曲と収録曲の存在感

収録曲では「Neighborhood #1 (Tunnels)」「Neighborhood #3 (Power Out)」「Rebellion (Lies)」あたりが特に知られている。中でも「Rebellion (Lies)」は、アルバム全体の中でも広く聴かれてきた曲で、反復するフレーズと合唱的な広がりが目立つ。曲単体で強いのに、アルバムの流れの中でも浮かない。そこが『Funeral』らしいところでもある。

また、曲名表記の揺れもこの盤の特徴として残っている。たとえば「Neighborhood #2 (Laïka)」は裏ジャケットやライナーではその表記だが、レーベル面では「Laika」となっている。「Une année sans lumiere」は裏ジャケットとレーベル面ではアクセントなし、ライナーでは「Une année sans lumière」と表記される。「Haiti」も裏ジャケットとレーベル面ではアクセントなしで、ライナーでは「Haïti」。細かな違いではあるが、初期盤らしい資料性を持つ部分として見ておきたい。

当時の評価と、その後の位置づけ

『Funeral』は発表直後から批評家の支持を集めた。Metacriticでは33件のレビューで平均90点、Pitchforkでは9.7点という高評価が付いている。一方で商業的な動きは当初そこまで大きくなく、Billboard 200では最高123位にとどまった。それでも評価の広がりは速く、バンドは一気に注目株へと押し上げられた。David BowieやU2のBonoが好意を公言したことも知られている。

2000年代前半のインディー・ロックには、個人の内面を小さく閉じた形で描く作品も多かったが、『Funeral』はそこから少し違う場所に立っている。室内楽的な編成感、合唱の使い方、パーカッションの推進力、そして感情の起伏をそのまま音にしていく作りが、同時代のロックの中でも独特だ。The Polyphonic Spreeのような大人数編成のグループや、当時のフォーク寄りインディーとも接点はあるが、Arcade Fireはより切迫した温度を持っていた。

まとめ

『Funeral』は、Arcade Fireの出発点でありながら、すでに完成度の高いデビュー作として受け止められてきたアルバムである。個人的な喪失を抱えた制作背景、モントリオールでの録音、複数のメンバーが重なり合う演奏、そして代表曲の強さまで含めて、作品の輪郭がはっきりしている。2004年のオリジナル盤と、2005年に流通したこのUS盤を並べて見ると、初期のArcade Fireがどの段階で世界に届いたのかも見えてくる。インディー・ロックの文脈で語られる機会が多いのも自然な一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Neighborhood #1 (Tunnels)
  2. A2 Neighborhood #2 (Laïka)
  3. A3 Une Année Sans Lumière
  4. A4 Neighborhood #3 (Power Out)
  5. A5 Neighborhood #4 (7 Kettles)
  6. B6 Crown Of Love
  7. B7 Wake Up
  8. B8 Haiti
  9. B9 Rebellion (Lies)
  10. B10 In The Backseat

動画プレイリスト

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