Arthur Verocai - Arthur Verocai (1972)
Arthur Verocai 1972

Arthur Verocai - Arthur Verocai (1972)

Jazz Funk / Soul Latin Jazz-Funk MPB

Arthur Verocai『Arthur Verocai』

アルトゥール・ヴェロカイが1972年にブラジルのContinentalから発表した初のソロ・アルバム。作曲、アレンジ、指揮、プロデュースまで本人が担い、ギターも弾いている。録音はリオデジャネイロのStudio Somilで行われ、12本のヴァイオリン、4本のヴィオラ、4本のチェロからなる20人編成の弦楽に、鍵盤を組み合わせた構成。演奏にはLuiz Alves、Robertinho Silva、Paulo Moura、Nivaldo Ornelas、Toninho Hortaらが参加している。

制作背景・エピソード

ヴェロカイは1945年リオデジャネイロ生まれ。土木工学を学んで1968年に卒業し、同じ年にRoberto Menescalのもとでアレンジの仕事を始めた。60年代末には技師の職を離れて音楽に専念し、イヴァン・リンスの『Agora』(1971年)やジョルジ・ベンの『Negro e Lindo』などの編曲を手がけている。Continentalではハウス・アレンジャーとして働き、Céliaのアルバムも制作した。

このアルバムでは、本人が後年のインタビューで、レコード会社は好きにやらせてくれた一方で、自分のアレンジを守ることにこだわったと語っている。収録曲の多くはVictor Martinsとの共作で、ヴェロカイによれば、作詞のパートナーは左派の政治的人物だったという。検閲をくぐり抜けるため、歌詞には比喩が必要だったとも述べている。「Presente Grego」は、軍事独裁政権がブラジルに与えた「ありがたくない贈り物」の比喩だという。

時代の文脈

軍事政権下で表現の自由が制限されていた時代の作品である。本人はこの作品を「ソウルを混ぜたサンバ」と表現している。影響源としては、マイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンス、ウェス・モンゴメリー、ドビュッシー、ヴィラ=ロボス、バッハ、シカゴ、ブラッド・スウェット&ティアーズ、フランク・ザッパ、ジミー・ウェッブなどが挙がっている。自らを「ボサノヴァの子」と呼び、「Velho Parente」にはボサノヴァの影響が色濃いとされる。

発売当時は批評家からほとんど相手にされず、本人は「誰も何も言わなかった」と振り返っている。売れ行きも振るわず、失望したヴェロカイはアーティストの編曲から手を引き、広告音楽の仕事へ移った。その後、約30年にわたって自作の発表から離れることになる。本人は、売れっ子だったのに「すべてを投げ出した」と語っている。

後世への影響

本作は長く埋もれたままだったが、レコード・コレクターやヒップホップのビートメイカーによって再発見された。ヴェロカイ自身は、ヨーロッパの人々から評価されていると聞いて初めてその動きを知ったという。2003年には米国のLuv N' Haightが再発し、関心が大きく高まった。

サンプリングでは、MF DOOMが「Na Boca Do Sol」を「Orris Root Powder」(2005年)に使い、Little Brotherは「Caboclo」を「We Got Now」(2005年、『The Minstrel Show』収録)に用いている。ほかにもLudacris、Action Bronson、Curren$yらがサンプリングしている。Madlibは「残りの人生、毎日このアルバムを聴いていられる」と語り、J Dillaや9th Wonderにも重要な作品として扱われてきた。

再評価を受けて、2007年にはFar Out Recordingsから新作『Encore』が発表され、2009年3月にはロサンゼルスのLuckman Theaterで約30人編成のオーケストラを率いて本作を再現する公演も行われた。本人はこの公演を「完全な成功」と振り返っている。この演奏はライブ盤『Timeless』として2010年に発表されている。2017年にはMr Bongoが公式再発を行い、オリジナル盤は高値で取引されるようになった。

聴きどころとして語られてきた点

AllMusicのJason Ankenyは4.5つ星を付け、「ブラジルのトロピカリアとアメリカのファンクの融合」と評している。弦楽を大きく使ったアレンジは、デヴィッド・アクセルロッドやチャールズ・ステップニーの仕事と比較されることが多い。ヴェロカイ自身は後年、トロピカリアとは距離を置いている。

トラックリスト

  1. A1 Caboclo 2:48
  2. A2 Pelas Sombras 2:13
  3. A3 Sylvia 2:59
  4. A4 Presente Grego 2:29
  5. A5 Dedicada A Ela 3:30
  6. B1 Seriado 1:40
  7. B2 Na Boca Do Sol 2:52
  8. B3 Velho Parente 2:17
  9. B4 O Mapa 2:38
  10. B5 Karina (Domingo No Grajaú) 5:14

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Arthur Verocai

Arthur Verocai

Arthur Verocai(アルトゥール・ヴェロカイ)は、1945年6月17日ブラジル・リオデジャネイロ生まれの作曲家、編曲家、指揮者、ギタリストだ。1960年代...

Arthur Verocai のプロフィール・作品一覧
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