Donato - A Bad Donato (1970)
João Donato 1970

Donato - A Bad Donato (1970)

Jazz Funk / Soul Latin Fusion Jazz-Funk MPB

João Donato『A Bad Donato』

ボサノヴァ創世期からブラジル音楽の進化を牽引してきた孤高のピアニスト/作編曲家、ジョアン・ドナート(João Donato)が1970年に米Blue Thumb Recordsから発表したジャズ・ファンク/フュージョンの金字塔。1960年代初頭からアメリカに拠点を移していたドナートが、米西海岸の腕利きミュージシャンや同郷の盟友たちとともにロサンゼルスのA&M Studiosで吹き込んだ、キャリア屈指の歴史的転換点となる一枚である。

制作背景・エピソード

本作は、Blue Thumb Recordsの創設者であるボブ・クラスノウ(Bob Krasnow)とトミー・リピューマ(Tommy LiPuma)から全面的な創作の自由を与えられたドナートが、気鋭のパーカッション奏者エミール・リチャーズ(Emil Richards)をプロデューサーに迎えて制作した。アレンジには同郷ブラジルの盟友エウミール・デオダート(Eumir Deodato)が参加している。

参加メンバーには、名ドラマーのドン・ウン・ホマォン(Dom Um Romão)やギタリストのオスカー・カストロ=ネヴィスといったブラジル勢に加え、バド・シャンク、アーニー・ワッツ、チャック・ドマニコ、ピート&コンティ・カンドリ兄弟ら西海岸ジャズ界の精鋭が集結。録音エンジニアをハンク・シカロが務め、ゲイリー・ケルグレンがRecord Plantにてミックスを手掛けた贅沢極まりない布陣である。

時代の文脈

1970年という時代背景において、ドナートは60年代初頭の清涼なアコースティック・ボサノヴァから鮮やかに脱皮を図り、フェンダー・ローズ(Fender Rhodes)のエレクトリック・ピアノを全面的に導入した。マイルス・デイヴィスが『Bitches Brew』で切り拓いたエレクトリック・ジャズの衝動や、スライ&ザ・ファミリー・ストーンに代表されるファンク/サイケデリック・ロックの熱気、そして本国ブラジルのトロピカリア運動が交差する瞬間を見事に捉えている。

ブラジリアン・特有のシンコペーションとアメリカのヘヴィなファンク・ビートが融合した本作のエレクトリックなグルーヴは、ドナートが後にブラジルへ帰国して制作する1973年の不朽の名盤『Quem É Quem』(マルコス・ヴァーリ制作)へと直接結実することとなった。

後世への影響とサウンドの聴きどころ

ドナートのトレードマークである浮遊感に満ちたローズ・ピアノのフレーズ、デオダートによるスリリングなホーン・アレンジ、そしてうねるベースとパーカッションが一体となったグルーヴは全編で冴え渡る。セルジオ・メンデスらにも取り上げられた代表曲を骨太なジャズ・ファンクへと変貌させた「The Frog」をはじめ、サイケデリックな陶酔感を醸し出す「Lunar Tune」、疾走感あふれる「Straight Jacket」、エキゾチックな「Cadê Jodel?」や「Malandro」など、全曲がキラーチューンとして機能している。

1990年代以降のアシッド・ジャズ〜レアグルーヴ・ムーヴメントにおいて「ブラジリアン・サイケ・ジャズ・ファンクの最高峰」として神格化され、現在でもローリング・ストーン・ブラジル誌をはじめ国内外でブラジル音楽史上屈指の大傑作として讃えられている。

トラックリスト

  1. A1 The Frog 2:33
  2. A2 Celestial Showers 2:36
  3. A3 Bambu 2:24
  4. A4 Lunar Tune 4:58
  5. A5 Cadê Jodel? (The Beautiful One) 2:09
  6. B1 Debutante's Ball 3:02
  7. B2 Straight Jacket 3:30
  8. B3 Mosquito (Fly) 3:01
  9. B4 Almas-Irmas 2:54
  10. B5 Malandro 2:37

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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