Rare Earth - Ma (1973)
Rare Earth『Ma』
モータウン初の白人ロック・バンドであり、同名のロック専門サブ・レーベルの看板を背負ったレア・アース(Rare Earth)が、1973年にリリースした通算6作目のスタジオ・アルバム『Ma』。モータウンの天才プロデューサー、ノーマン・ホイットフィールド(Norman Whitfield)が全面的に楽曲提供とプロデュースを手がけ、バンドの骨太なハード・ロックの肉体性と、極限まで高められたサイケデリック・ファンクの音響美学が激突したブラック・ロック/レア・グルーヴの金字塔である。
制作背景・エピソード
前作『Willie Remembers』(1972年)で完全セルフプロデュースを試みるも商業的に苦戦したレア・アースに対し、モータウン総帥ベリー・ゴーディJr.が下した決断は、当時テンプテーションズやアンディスピューテッド・トゥルースで「サイケデリック・ソウル」の革命を巻き起こしていたノーマン・ホイットフィールドへの全面委託であった。
ホイットフィールドは名盟友バレット・ストロングとともに、全5曲のソングライティングからアレンジ、プロデュースまでを一手に掌握。白人ロック・バンドならではのラウドで歪んだギターや強靭なドラミングを、自身の壮大なファンク・オペラを具現化するための最高のキャンバスとして活用し、モータウンのスタジオ・ワークの限界を押し広げるサウンドを構築した。
時代の文脈
1970年代初頭のモータウンは、デトロイトのヒッツヴィルUSAから西海岸ロサンゼルスへの移転を進め、ブラック・パワー・ムーブメントやベトナム戦争の混迷を背景に、従来のポップなモータウン・サウンドから、より重厚でシリアスなメッセージを持つ長尺ファンクへと劇的な変貌を遂げていた。
ホイットフィールドが主導したサイケデリック・ソウルは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンやジミ・ヘンドリックスへのモータウンからの強力な回答であった。本作『Ma』は、黒人主導のレーベルにおいて白人ロック・バンドがその先鋭的なファンク・コンセプトを体現したという点において、人種やジャンルの垣根を無効化する画期的な試みであった。
サウンドと聴きどころ
本作の最大の衝撃は、アナログ盤のA面全編(17分超)をたった1曲で使い切った表題曲「Ma」にある。歌うドラマーのピーター・リヴェラ(Peter Rivera)によるタフでヘヴィなファンク・ビート、レイ・モネットの咽び泣くようなワウワウ・ギター、そしてギル・ブリッジスのフルートやサックスが執拗なリフを刻み続ける。泥臭くうねるベースラインとともに長大なジャムを繰り広げ、サイケデリック・ロックの陶酔とストリート・ファンクの躍動が見事に一体化している。
B面も圧巻の展開が続く。「Big John Is My Name」のドライヴ感あふれる重量級ファンク・ロックに続き、アンディスピューテッド・トゥルースの全米大ヒット曲をハード・ロック編成で再構築した「Smiling Faces Sometimes」では、不穏なストリングスと歪んだギターが人間の欺瞞を鋭く告発する。さらにテンプテーションズやジャクソン5も歌った「Hum Along And Dance」を粘りつくようなヘヴィ・グルーヴで再解釈し、ラストの「Come With Me」では深いエコーとパーカッションが幽玄な世界を描き出す。アルバム全編にわたって緊張感と強烈なグルーヴが貫かれている。
後世への影響
リリース当時のセールスは全米65位と、過去の「Get Ready」や「I Just Want to Celebrate」のような大ヒットには届かなかったものの、後世の評価は極めて高い。1980年代後半以降のアシッド・ジャズやレア・グルーヴの台頭、そしてヒップホップにおけるブレイクビーツの探求によって、本作は「レア・アース史上最もファンキーで音楽的密度の高い最高傑作」として不動の評価を確立した。
ロックとファンクが最も刺激的に融合した1970年代のモータウンの冒険心を今に伝える名盤として、現在も世界中のDJやヴァイナル・コレクターから熱烈なリスペクトを集めている。
トラックリスト
- A Ma 17:21
- B1 Big John Is My Name 4:06
- B2 Smiling Faces Sometimes 6:20
- B3 Hum Along And Dance 5:15
- B4 Come With Me 4:30
動画プレイリスト
このアーティストについて
Rare Earth(レア・アース)は、アメリカ・ミシガン州デトロイトで結成されたロック/サイケデリック・ソウル/ファンク・バンド。名門モータウン・レ...
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