The Sound - Jeopardy (1980)
The Sound『Jeopardy』(1980)について
The Soundのデビュー・アルバム『Jeopardy』は、1980年にUKのKorovaから出た作品だ。South London出身のポストパンク・バンドとして活動を始めたThe Soundにとって、これがアルバム初期の出発点になる。中心人物はアドリアン・ボーランドで、彼の作曲と歌唱を軸に、グラハム・ベイリー、マイケル・ダドリー、コルヴィン・メイヤーズらが加わる編成。後年の評価が先行するタイプの作品で、当時から批評面では強い支持を集めた一枚として知られている。
作品の位置づけ
『Jeopardy』は、The Soundの中でも特に「出発点」としての意味が大きいアルバムだ。前身EP『Physical World』への反応やジョン・ピールの後押しを背景に、Korovaがこのバンドに注目した流れがあり、かなり低予算の制作ながら、結果的にはバンドの輪郭をはっきり示す作品になっている。アドリアン・ボーランドの切迫した歌い口と、感情をそのまま刻み込むような曲作りが中心にある。後のThe Soundを知っていると、この時点で既に核はかなり揃っている印象を受ける。
当時の評価と文脈
同時代のUKポストパンク/ニューウェイヴの流れの中で、『Jeopardy』はEcho & the Bunnymen、Joy Division、Teardrop Explodesなどと並べて語られることがある。実際、主要音楽誌のNME、Sounds、Melody Makerが揃って高評価を与えたという記録もあり、批評面ではかなり早い段階で評価が固まっていたようだ。ただし、商業的な広がりはその評価に追いつかなかった。そこがこの作品の特徴でもある。
AllMusicでは、限られた予算が音の粗さとして残っている点に触れつつ、それでも緊張感のあるデビュー作として高く見ている。こうした受け止められ方を見ると、『Jeopardy』は完成度の高い大作というより、切迫した空気をそのまま封じ込めた初期作として捉えるほうが自然だろう。
収録曲と代表曲
収録曲では「I Can’t Escape Myself」「Heartland」「Missiles」「Winning」が特に重要な曲として挙げられることが多い。「I Can’t Escape Myself」はアルバム冒頭から緊張感を引っ張る代表曲で、The Soundの名前を語るうえで外しにくい一曲だ。「Heartland」は後年までバンドの代表曲として扱われることが多く、アルバム全体の印象を決める曲のひとつになっている。「Missiles」や「Winning」も含めて、メロディの明快さと内向きの圧力が同居しているのがこの作品の特徴だと感じる。
実際に聴くと、音の厚みで押すタイプではなく、各パートの隙間やボーランドの声の置き方で緊張を作る場面が目立つ。派手な展開よりも、一定のテンションを保ったまま進む曲が多く、そこにこのバンドらしさが出ている。録音の条件が厳しかったこともあって、整いすぎていない質感がむしろ曲の温度をそのまま残しているように聞こえる。
オリジナル盤の仕様
今回のUKオリジナル盤は、1980年のKorova盤らしい仕様になっている。スリーブはやや粗めのマット仕上げで厚手のカード・ストック、黒いインナー・スリーブが付属し、バンド写真とクレジットが収められている。ジャケットや付属物の作りからも、当時のレーベルがこの作品を単なる新人盤としてではなく、一定の存在感を持つリリースとして扱っていたことがうかがえる。表記は「© 1980 A Korova Recording distributed by WEA Records Ltd. A Warner Communications Company. Printed and Made in England.」となっている。
Korovaというレーベルについて
リリース元のKorovaは、1979年にRob Dickinsが設立したレーベルで、Warner Elektra Asylum系の流通を背景に活動していた。The Soundだけでなく、Echo & the BunnymenやThe ResidentsのUK盤なども手がけたことで知られる。レーベル名は『時計じかけのオレンジ』に登場するコロヴァ・ミルク・バーへの参照でもある。1980年代を通じて重要な役割を持った印象のあるレーベルで、この時期のUKロック/ポストパンクの空気を伝える存在のひとつだ。
まとめ
『Jeopardy』は、The Soundの最初期の輪郭を示すアルバムとして位置づけやすい作品だ。批評的には早くから評価され、後年は「埋もれた名盤」として語られることが増えた。アドリアン・ボーランドの書く曲と歌が中心にあり、当時のUKポストパンクの中でも、感情の圧力を前面に出したタイプの作品として記憶されている。代表曲「I Can’t Escape Myself」や「Heartland」を軸に聴くと、このアルバムがその後のThe Soundの土台になっていることが見えやすい。
トラックリスト
- A1 I Can't Escape Myself
- A2 Heartland
- A3 Hour Of Need
- A4 Words Fail Me
- A5 Missiles
- B1 Heyday
- B2 Jeopardy
- B3 Night Versus Day
- B4 Resistance
- B5 Unwritten Law
- B6 Desire