Blancmange - Happy Families (1982)
Blancmange『Happy Families』――UKシンセポップの立ち上がりを記録したデビュー作
Blancmangeの『Happy Families』は、1982年にUKのLondon Recordsから出たデビュー・アルバムである。Neil ArthurとStephen Luscombeの2人組による初期作品で、80年代前半の英国シンセポップを代表する一枚としてよく語られる。バンドは1979年にロンドンで結成され、80年代初頭の電子音楽とポップの接点に乗りながら、独特のひねりを持った曲作りで存在感を示した。
このアルバムは、のちのヒット曲群へつながる出発点でもある。特に「Living On The Ceiling」は代表曲として知られ、アルバムの印象を決定づける存在になっている。UKアルバム・チャートでは1982年10月9日付で初登場し、最高30位、通算38週チャートインした。発売当時の評価は一様ではなかったが、商業的には一定の成果を残し、1983年3月時点で10万枚売れたと当時のNMEが報じている。
制作背景とサウンド
収録曲は、1982年2月から8月にかけてロンドンのCBS StudiosとBattery Studiosで録音された。エンジニアにはCBS側でWalter Samuel、Roberto Arendse、Mark Chamberlain、Battery側でNigel GreenとAndrew Warwickがクレジットされている。「Living On The Ceiling」とB7「Kind」はOdyssey Studiosでリミックスされており、アルバムの中でも輪郭のはっきりした仕上がりになっている。
サウンド面では、Roland TR-808、Roland Super Jupiter、LinnDrumといった当時の電子機材が骨格を作っている。打ち込みのリズム、シンセの音色、空間の取り方が1982年らしい質感を持ち、同時代のDepeche Mode、OMD、Ultravoxあたりと並べて語られることが多い。ただしBlancmangeは、機械的な整然さだけに寄らず、歌の運びやフレーズの置き方に少し癖がある。そこがこの作品の個性になっている。
収録曲の印象
「Living On The Ceiling」は、跳ねるリズムと反復の強さが前面に出た楽曲で、アルバムの中核。シングルとしても広く知られ、Blancmangeの名を押し上げた曲である。一方で、アルバム全体を見ると、単にヒット曲を並べた作りではなく、メロディの置き方や音の抜き差しに気を配った曲が多い。「Waves」のような曲では、軽いユーモアだけでなく、少し距離を置いた感情の出し方が見える。
当時の批評では、電子音楽としての作り込みとポップソングとしての分かりやすさの両面が見られていた。近年の回顧では、ひねりのあるユーモアと、要所で見せる素直な感情の両方が評価されている。派手に押し切るタイプではないが、曲ごとの表情がはっきりしていて、アルバム単位で聴いたときの流れが残る作品である。
Blancmangeにとっての位置づけ
『Happy Families』は、Blancmangeのキャリアの起点であり、後のヒット群の土台になった作品である。続く「Blind Vision」「Don’t Tell Me」「That’s Love, That It Is」などに比べると、まだバンドの輪郭が固まりきる前の段階もあるが、そのぶん実験性とポップ感覚が同居している。デビュー作らしい試行錯誤の気配と、すでに完成度の高い曲作りが同じ盤面にある。
また、London Recordsからのリリースという点も、この時代の英国ポップの流れを示している。Decca系のレーベルとしてのLondonは、UKポップやライセンスものを広く扱ってきたが、1980年代にはポップ・レーベルとしての性格がより強くなっていた。『Happy Families』は、そうしたレーベル環境の中で出てきた初期80年代英国シンセポップの一枚として見ておくと、位置づけがつかみやすい。
UK初回盤の情報
- アーティスト: Blancmange
- タイトル: Happy Families
- リリース年: 1982年
- リリース国: UK
- レーベル: London Records (SH 8552)
- 録音: CBS Studios / Battery Studios, London
- 代表曲: 「Living On The Ceiling」
1982年のUKシンセポップを追ううえで、『Happy Families』は外しにくい一枚である。音の作りは時代を強く映しつつ、曲の運びにはBlancmangeらしい少し変則的な感触が残る。ヒット曲だけでなく、アルバム全体の流れで聴くと、その個性がより見えやすい作品である。
トラックリスト
- A1 I Can't Explain
- A2 Feel Me
- A3 I've Seen The Word
- A4 Wasted
- A5 Living On The Ceiling
- B6 Waves
- B7 Kind
- B8 Sad Day
- B9 Cruel
- B10 God's Kitchen